成田昭次、様々なピースが揃い完成した新たなパズル 男闘呼組時代の楽曲から13年ぶり新曲まで披露したビルボードライブ公演
4月8日にソロとして13年ぶりの新曲「どんでん返しのラストシーン」「パズル」を配信リリースした元・男闘呼組の成田昭次が、4月1日、Billboard Live YOKOHAMAでライブ『犬も歩けば棒に当たる』を開催。「不良」など男闘呼組の楽曲、What’sというバンド時代の楽曲、さらに6月15日に発売予定のアルバム『犬も歩けば棒に当たる』に収録予定の楽曲などアンコールを含めて全13曲を披露。様々な人生の機微を味わって来たからこそ表現できる今がある。変わらないハスキーボイスと、年齢を重ねた分だけ渋さを増したロックサウンドと共に、永遠の不良少年が帰って来た。
前半戦はこれまでのキャリアを振り返るように、男闘呼組やソロになってから組んだバンド・What’sの楽曲を繰り出した。
1993年にリリースされた男闘呼組のラストアルバム『ロクデナシ』収録曲、成田が作曲「IN THE RAIN」で幕を開けたライブ。男闘呼組の1stアルバム『男闘呼組』(1988年)に収録された成田のソロ曲「不良」は、ノスタルジックで哀愁漂うバラード。美しいピアノで始まり、〈大人に背を向けて〉や〈若さは言い訳の繰り返し〉といった歌詞が、遠い記憶を呼び覚まして胸を締め付けた。フォーキーなカッティングの弾き語り調で始まった「Midnight Train」は、デビューシングル『DAYBREAK』カップリング曲のうちの1つ。ゆったりとしながら骨太感のある楽曲で、〈こんな夜が来るなんて〉という歌詞は、この日を待ち望んでいたファンの心の声だ。
What’sの楽曲からは、Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」を彷彿とさせる、乾いた響きのギターカッティングとドラムのフィルインで始まる「Going My Way」。我が道を行く。それはまるで成田のテーマ曲のような楽曲。また、ソリッドなロックチューン、「Bad Generation」ではワイルドなボーカルで観客を魅了する。
そして再び男闘呼組の「やってるね」をプレイ。5thアルバム『5-1…非現実…』(1992年)に収録された成田の作詞・作曲による楽曲で、ホンキートンクブルースといった感じのオールドスタイルのロックンロールに、会場には手拍子が響いた。同曲の最後にはバンドメンバーが紹介され、門馬由哉(Gt)、Devin Kinoshita(Key)、青山英樹(Dr)、そして「スペシャルサンクス、オン・ベース、ミスター寺岡呼人。今日はこの最高のメンバーで最高のサウンドをお届けします」。その後寺岡によって成田の名前がアナウンスされると、会場に大きな拍手が響き、成田は渋さのあるギターソロでそれに応えた。
MCでは、男闘呼組の曲を演奏するにあたって、男闘呼組のメンバーに選曲してもらったことを告白。「“なるほど、この曲か!”っていう感じでしたけど、久しぶりにプレイしてすごく気持ちよかったです」と、少し照れくさそうに笑顔をのぞかせた。
後半戦は、6月15日にリリースされるアルバム『犬も歩けば棒に当たる』収録の新曲が披露された。「これは兄貴を思った歌です」と紹介されたミディアムバラードの「After Rain」。成田には1歳上の兄がいて、成田より先に事務所に所属するなどで成田がこの世界に入るきっかけを作ったが、若くしてこの世を去ったと聞く。兄への愛情、憧れ、後悔、成田の兄に対する様々な思いがない交ぜになった歌詞。決して晴れることのない悔いを心に残したまま、それでも前を向かなくてはならない。ギターソロはまるで一緒に歌おうぜと語りかけるかのようで、切なくも温かい思いが胸に広がり、止まったままだった時計の針が今動き出したように感じた。
このライブのタイトルであり、アルバムのタイトルにも付けられた『犬も歩けば棒に当たる』は、災難を指す意味と幸運を意味するものの両方が存在する。「まさに今の自分じゃないかと思って、すごくいいタイトルだなと思って付けました」と成田。今の彼にとっては寺岡呼人との出会いは幸運だったと言えるだろう。
4月8日に先行配信された1曲「パズル」は、寺岡呼人が作詞・作曲を手がけた。一緒に食事をしながら話をし、その日のうちに楽曲が上がってきて驚いたというエピソードも明かした成田。寺岡も同曲について、「成田くんが青春を過ごしたすてきな仲間と、もう一回パズルが組み合わさるように集まって1枚の絵ができたら、そんなにピカピカしていないかもしれないけど、世界に1枚だけのすてきな絵になると思った。しかしそのパズルは、ファンの皆さんというピースがないと完成しない。今日初めて皆さんの前でお披露目することを楽しみにしていました」と、楽曲に込めた思いを話す。