ENVii GABRIELLAが語り尽くす、『Metaphysica』完成までの経緯と深層に込められた思い
昨年10月に、3カ月連続リリースとなるデジタルシングルの第1弾「Moratorium」でメジャーデビューを果たしたENVii GABRIELLA。ゲイ・オネエであることを武器に誇り高くピンヒールを履きこなし、色香と迫力を併せ持つパフォーマンスで唯一無二の多角的エンターテインメントを作り上げている通称”エンガブ”が、3月9日、いよいよメジャー初となるミニアルバム『Metaphysica』をリリースした。目に見えるものやパブリックイメージだけにとらわれず、様々な角度からその本質を見つめ追求していくという考え方をタイトルとして掲げた今作には、西野カナやLittle Glee Monsterなどの楽曲も手掛けて来た音楽プロデューサー・Carlos K.とタッグを組み、三者三様の感性と才能を美しく暴走させながら作り上げた8曲を収録。「GAVii(エンガブファンの呼称)の熱望」、「“どんちー”の教祖様」、「重すぎる結婚式」などのワードも飛び出した、ミニアルバム完成までの経緯を聞いた。(山田邦子)
エンガブは旦那を手に入れた
ーー3カ月連続で楽曲が配信され、1stミニアルバム『Metaphysica』も完成。ENVii GABRIELLAが本格的にメジャーのフィールドで走り出したなという印象です。
HIDEKiSM:「Moratorium」、「Dystopia」、そして「CABARET」を昨年リリースさせていただいたんですが、その3曲も収録されたこのアルバムが完成した時は「いよいよだな」っていう感じでした。私とKamusちゃんは今回初めてマスタリングにも立ち合わせていただいたんですが、全曲通して聴かせていただいていた時に「あぁ、ついに出来たんだ」という感覚になりましたよね。
Kamus:私はこれまで音を収録する時も(スタジオに)いないことが多かったんですが、最近は歌を入れる時とかも一緒にいることが増えたんですね。マスタリングに立ち会うのは人生で初めてでしたが、こうやってCDが完成するんだっていう過程を目の当たりにし、こうやって作って、これが皆さんのもとに届くんだなと思うとすごくドキドキしました。今後もマスタリングの現場には行きたいなと思ったし、こういう場所にいたいなと思いました。
ーー制作はどんな感じで行われてきたんですか?
Takassy:3カ月連続リリースの企画が立ち上がった時から3月にミニアルバムを出すということまで決まっていたので、「Moratorium」の前から曲の精査というか選曲は始まっていました。そこに足りない曲を追加していく作業になるんですが、その中で新たに作ったのが「CABARET」と「Sorry Not Sorry」と「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」。それ以外の曲は、9月〜10月の時点で原型となるものはほぼありました。
それまでCarlos K.さんには曲のリアレンジをしていただいてたんですが、12月のリードをどうするかという時に、初めてゼロから一緒に作ったのがあの「CABARET」。ずっとロックっぽい曲はやりたかったし、我々の中のロック熱も上がっていたので、こっちでまず叩きを作って渡して、2番以降はもう全部アレンジを変えてくださいとお願いしてトラックを作ってもらい、メロを乗せていきました。今回、スケジュールがタイトな割に曲自体はスムーズにできたかなという感じでしたね。
ーーCarlos K.さんとの制作で、イメージがより膨らんだり、思いがけないアイデアの爆発があったりもしました?
Takassy:そうですね。Carlos K.さん自体ゴリ押しをするタイプではなく吸収型の方なので、私のイメージをどう具現化するかっていうところにすごく心血を注いでくれた感じです。アイデアがある時は出してもらって、それをアレンジに効かせてもらったりもしました。
HIDEKiSM:相性が良かったよね、Carlos K.さんとは。
Kamus:うん、うん。
Takassy:音楽に対しての熱意はすごくある方なんですが、人間的にはすごくおっとりというか、どちらかというと前へ前へというより職人気質なところがある方で。
ーー鍛冶屋さんみたいな存在だともおっしゃっていましたね。
HIDEKiSM:そうなんです。
Takassy:最初に「俺はTakassyさんの鍛冶屋のポジションになりたい」って言ってくださって。持ってきた武器をどうやってさらに強いものにするか。それで、エンガブが満足できるものができあがれば俺は嬉しいですって。
ーーもはやENVii GABRIELLAの楽曲作りに欠かせない、最高のパートナーですね。
HIDEKiSM:いやもう、鬼に金棒ですよ(笑)。
Takassy:鬼言うな(笑)。そういえば、これは以前からお話ししているんですが、ENVii GABRIELLAって"ガブリエル"っていう女性の名前から取ったんですね。
ーードラマ『デスパレートな妻たち』に出てくる主人公の1人ですね。
Takassy:はい。そのガブリエルの旦那さんの名前が、実は”カルロス"なんですよ(笑)。
Kamus:そう!
HIDEKiSM:この前ふと気付いたんだよね。そういえば、って。
Takassy:だから、エンガブは旦那を手に入れたんですよ(笑)。
Kamus:すごいと思って。偶然なのか、なんなのか(笑)。
HIDEKiSM:不思議なご縁でね。
ーー運命だったんじゃないですか。
Takassy:そうですね。向こうはたまったもんじゃないと思いますけど(笑)。次々好き放題言ってくるオカマが来たみたいな(笑)。
Kamus:(笑)。
HIDEKiSM:ドラマのガブリエルも、言いたい放題わがままな嫁なんでね(笑)。
ーー(笑)。でもそれほどの関係性だからこそ、あの3部作もそうだし、今回のアルバムの楽曲も、こんなに幅広い振り幅になったんだろうなと思います。
Takassy:そうですね。このミニアルバムを出すことが決まった段階で、メインになる曲は以前の「豪華ネェサン」とか「オダマリナサイ」みたいな、ハッピーでザ・キャッチーという感じの曲を持ってくることまでは決まっていたんですね。だからそこで驚かせるために、どういう風に最初の3曲を持ってくるかっていう感じの施策でした。
ーー今冷静に話を聞くと「なるほど」と思いますが、リスナーとしての順番は、まずあの全く方向性の違う3曲を聴いて、ミニアルバムが出るという情報を受け取り、リード曲として「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」を聴いたわけで。YouTubeではHIDEKiSMさんの口癖として毎回耳にする「どんちー」が曲になるなんて、驚いたどころの騒ぎじゃなかったです(笑)。
HIDEKiSM:私も驚きましたよ(笑)。
Takassy:「豪華ネェサン」は、Kamusの口からポロッと出たワードだったんですよ。Kamusの知人で「豪華ネェサン」という言葉を使っている方がいて、Kamusも頻繁に使うようになって、3人で「超ウケる」みたいな話をしていたんですね。そこから、そのワードを曲にしたら面白いんじゃないかなと思ってあの曲を作ったので、次の表題というか、そこに付随する感じの曲はHIDEKiSMから出てくるワードを絶対に使おうと思っていたんです。だから、HIDEKiSMが何かくだらないことを言うのをずっと待っていた状態で(笑)、やっと口から出てきたのが「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」だったっていう。
ーー"魔法の言葉"ですね(笑)。
HIDEKiSM:くだらないワードですけど(笑)。
Takassy:本当そうよ(笑)。
Kamus:あははは!
ーーMVの弾けっぷりもすごいことになっていましたね。
Takassy:ヤバイですよね(笑)。
HIDEKiSM:歌ったり踊ったりし終わって、私たちこれで本当に大丈夫かなって思いましたよね。あまりに振り切り過ぎてるから(笑)。私、こんなことをするために歌手になりたかったんだっけ!?って思うくらいだったけど(笑)、それくらいバカになれるというか、元気になれる楽曲だっていうのが伝わればいいなという思いで撮影しました。
ーー個人的には、Kamusさんがすごいキメ顔でキャンディを舐めている口元を隠す仕草がツボだったのですが、あそこはどなたかのアイデアだったんですか?
Takassy:全部そうだけど、みんな感情の赴くままに動いただけなんですよ。
HIDEKiSM:確か最初、2人(TakassyとKamus)が超ハジけてたんですよ。だからその後にあえて、サビの部分で超”無"だったら面白いよねみたいな話になって。
Kamus:そうそう。遊びながら撮っていった感じなんですけど、あそこはたぶん1テイクだったかな。口元を隠したのは、飴を取られたくないっていうだけのイメージ。ほんと、全部を通してたぶん意味はないです(笑)。
HIDEKiSM:ないのよ(笑)。
Takassy:インタビューしがいがない(笑)。
HIDEKiSM:現場の様子はメイキングでも見られますので、そちらもぜひお願いします。