2nd Digital EP『Daydream』インタビュー
まだ誰も知らないChilli Beans.の内面性 最新EP『Daydream』に刻まれたバンドの原点
「Chilli Beans.を結成してなかったら今ごろ音楽を辞めてた」(Maika)
ーー厳しい指摘だ。でもその甲斐あってというか、めちゃくちゃ洗練されたアレンジになってるなあと思うんですよ。これ、バンドをずっと続けてきてようやく辿り着くものなんじゃないかと思う、普通。だから最初にあった曲なんだって聞いてすごく意外でした。
Maika:いや、嬉しい(笑)。なんとなく、ブルーノ・マーズみたいなファンク感が出せればいいなと思っていたんですよね。現代風に洗練されてるけど、過去のリバイバルであるっていうか。そこは結構意識したかもしれない。
ーーもともとそういうものが好きだったんですか?
Lily:Maikaはめっちゃ好きです。
Maika:うん、ベースもファンクなプレイがやっぱり好きですね。
Lily:そんなMaikaの影響を受けて私も聴くようになって。その吸収したことをそのまま出そうっていうのはありましたね。
ーーじゃあレコーディングする中でも、Maikaさんがリードした感じですか? 「グルーヴ来てない!」みたいな(笑)。
Maika:……言ったね、めっちゃ(笑)。
Moto:永遠に言われてました。「(ノリが)タテじゃなくてヨコ!」みたいな(笑)。
ーーこのグルーヴ感はその指導の賜物なんですね。
Moto:本当それ。おかげさまでここまで来ました(笑)。
ーー(笑)。歌詞は失恋の曲みたいにも受け取れるし、そうじゃない解釈もできそうだし、いろいろな受け止め方があるけど、これはどういう思いでできていった歌詞なんですか?
Maika:これは元になる歌詞を私が書いたんですけど、過去の自分に向けて歌いたいなって思って書きました。過去の自分に届けたい歌ですね。ずっと書きたいと思っていたんですけど、この曲でやらせてもらっていました。
ーーじゃあ、ここに出てくる〈君〉っていうのはその「過去の私」っていうことなんだ。
Maika:そうですね。あの、私、全然自信がない人だったんですよ。自尊心とかも全然なくて、やることすべてが誰かに迷惑をかけてるような気がしてしまうみたいな人だったんです。それが結構しんどくて。考えてみたら別に生きてるだけで悪いことなんかないのに。今は全然違うんですけどね。だからそういう自分に向けて「元気出せよ、大丈夫だよ」って言ってあげたいなっていう。
ーーそういう歌詞を受け取って、Moto さんはどう感じましたか?
Moto:めちゃめちゃいいと思いました。私、ここの〈もう大丈夫かもね〉っていう歌詞がすごく好きで。なんか自分とも重なるんですよね。
ーー〈かもね〉ってのがいいんですよね。言い切ってはいないけど、少しずつ自信がついてきているという。そういう意味では、最初に作ったときと、Chilli Beans.として活動を続けてきた今とでは、Maikaさんの中でのこの曲に対する思いも変わってきたんじゃないですか?
Maika:はい。ときには昔の自分、この歌詞の「君」の思考回路に近いような自分になってしまう瞬間もあるんですよね。真正面からぶつかって活動しているからこそ、ちょっと自信がなくなっちゃったりとか、どうしようって思うときもあったりするので。そういうときにこの「Tremolo」が自分を助けてくれる曲にもなってる気がします。
ーーうん。先ほどMotoさんが「印象が変わった」というお話をされていましたけど、僕は聴いてすごく力強い歌詞だなあと思ったんですよね。それはチリビのここまでの活躍を知った上で今受け取るからなんだと思うんです。この「Tremolo」はチリビの物語の中で育ってきた曲なんじゃないかなって。
Lily:ああ、めちゃくちゃ嬉しい。
Maika:それは考えたことがなかったです。でも確かに、当時はChilli Beans.を結成できたことに対して〈ここまで来れたんだ〉って歌ってたんですよ。ここまで頑張ってきたよねっていう思いだったけど、確かに今見るとChilli Beans.を結成してからここまで来れたよねっていう意味になりますね。
Moto:〈想い手放して〉とかもね、今の日々の溜まっている思いのことを歌っているような気がするし。
ーーここで出てくる「君」っていうのも、元々は昔の自分だったのかもしれないけど、今はファンやリスナーを重ねることができるし。そういう意味では、このタイミングでこの曲を出すっていうことにはすごく大きな意味があるんじゃないかと思います。
Maika:うん、本当ですね。
ーーでも、Chilli Beans.を結成したことに対して〈ここまで来れたんだ〉っていう歌詞を書いたっていうことは、それがMaikaさんにとってはすごく大きな出来事だったんですね。
Maika:めちゃめちゃ大きかった。たぶんChilli Beans.を結成してなかったら今ごろ音楽を辞めてたと思うんです。それぐらい自分にとっては決定的なことでした。
Lily:うん、私もそう思う。チリビになれるまでがめちゃくちゃ長かったから。どうしようって思うときもあったからこそ、このバンドを組めたことで「やった!」みたいな感じはありました。
Moto:私も、音楽を辞めていたかはわからないですけど、すごく学ぶことが多いし、チリビを組んだのは本当によかったと思いますね。
ーーだから、そういう意味でもこの「Tremolo」というのは、3人自身にとってものすごくエモーショナルな曲なんですね。
Lily:うん、思いが詰まってるよね。
Maika:作ったときもそうだったし、今もそうですね。
ーーそういうエモい部分って、今までチリビはあまり出していなかった気がするんですよ。
Maika:そうですね。今まで出した楽曲って、お互いのことを知ろうと思って作った「lemonade」だったり、「Tremolo」を作った時期を超えて「こういう方向性でやってみよう」みたいな話になってきた段階の楽曲たちが多いので。それまでの間にあった曲たちの中では初めて出す曲っていう感じなんです。ある意味一番自由な感じの時期に作った曲なのかなと思う。
Maika:作りたい楽曲を、何も気にせずにその場のノリで構成していく、そういう時期だったから。
Moto:方向性とか、全然考えてなかった。
Lily:好きなものをとりあえずやろうっていう感じだったよね。
ーーなるほど、「まだ自由だった私たち」っていう。今どうなんだって話ですけど(笑)。
Maika:そう、それは語弊がある(笑)。今も十分自由にやってるんですけど……。
Lily:でも、ファンのみなさんに接している間に、多くの人に刺さる曲を作りたいみたいな気持ちも芽生えてきたから、それに対して自分が気張りすぎちゃって動けないみたいなこともあって。「みんなに届けたい!」とか。でもこのときは自分たちが「これかっこいい!」みたいな感じでどんどん作れていたから。