PassCode、目標の舞台で見せたドラマチックな光景 メンバーそれぞれの思いが交差した日本武道館公演を観て
後半へ突入すると、今度は白い衣装にチェンジして登場。ゆったりとした「horoscope」では、無数の流れ星や星雲の映像をバックにきれいなメロディを歌い上げ、美しいダンスパフォーマンスを築き上げる。そして、伸びやかな歌とシャウトを織り交ぜ、エモーショナルな世界を膨らませる「STARRY SKY」で観客を圧倒する。
「去年はPassCodeとしての大きな分岐点というか、自分たちでも想像していなかった出来事がたくさんあって。それでも、こうして今日、日本武道館に足を運んでくれてPassCodeを好きだって言ってくれる人たちがいることで、PassCodeがPassCodeでいられる、みんなの前に立っているんだなって実感しています」(高嶋楓)
「初めて日本武道館公演をやると決まった時、嬉しさももちろんあったんですけど、それよりもファンの方をはじめ、スタッフさん、家族、友達からもおめでとうというメッセージをもらって。それが一番嬉しかった。今日という日は、今までPassCodeを支えてくださった方々への恩返しができる日かなって思ってやってきました。今日、この景色がホントに幸せだなって思っています」(大上陽奈子)
「あらためまして半年前に加入した有馬えみりです。もしかしたら新体制になって初めて見に来た人がいるかもしれないですけど、PassCodeの音楽がめちゃくちゃカッコいいことを証明していけたらいいなって思います。シャウトは絶対後悔させないので、これからもよろしくお願いします」(有馬えみり)
「2013年に結成した時には想像もしていなかったような景色を今日、見せていただいています。これからもPassCodeはずっと前に進んでいくけれど、過去を置いていくとかじゃなくて、すべてを背負って進んでいけたらいいなと思っています。こういう景色を見ちゃうと、どこまでも行けるような気がします。私にはその自信があります。どうぞPassCodeについてきてください」(南菜生)
ここに至るまでの感謝の言葉を述べ、ラストスパートの「Tonight」へと繋げる。キュートでまっすぐな歌声の高嶋に始まり、鋭く突き刺さる歌声の南、切ないメロディと絶妙に相性のいい大上、暴力的なシャウトと繊細な歌の両極を往復できる有馬、この4人の個性がさらに強烈に突出していく。その濃い空間をアッパーな「Same to you」がさらに深めていく。
そして、大きなサプライズだったのが、ここで10人編成のストリングスセクションが現れたことだ。メンバー同様、LED画面の中心が割れての登場。「Anything New」が厚みのあるストリングスサウンドで奏でられ、希望に満ちた歌詞との相乗効果でどこまでも高まっていく。硬質なバンドサウンドに加味された包み込まれるような感覚は、武道館という大きな会場だからこその醍醐味だった。
だからこそ、そのままストリングスを加えた「Ray」はいっそうのスケール感を持って迫ってきた。起伏のあるメロディと4人のボーカル&ダンスの持ち味がフルに発揮された最強のシーン。会場全体のハンドクラップとともに、これ以上ないほどの一体感で盛り上がり、メンバーもストリングスもクローズするLEDスクリーンの奥に戻っていくという劇的なエンディングで本編を終了した。
アンコールは「ATLAS」で再開。抜けのいい明るいメロディ、青空をバックにしたMVと実際のライブが混ざり合う映像もあって、爽快なステージングで魅了する。
コロナ禍でライブで声を発することができない現状を乗り越え、いつか全員で合唱できる日が訪れることを祈って「It’s you」をラストに。未来へ向けた視線、ポジティブな推進力を感じさせる歌詞。壮大なメロディを歌い上げて、胸を熱くさせるライブパフォーマンス全開でライブは終了した。
これまでの足跡を詰め込み、全21曲をやり切った4人。集大成でありながら、次へと踏み出す一歩となるライブだったのは間違いない。「ライブハウスでも武道館でもやることは変わらない」と何度も口にしていたが、この日、身につけた自信は、今後の大きなステージに向けた地盤となった。武道館を経た次の階段をどんなふうに彼女たちがのぼっていくのか、今から楽しみだ。