休憩を挟み、後半はガーシュウィンの曲を中心に演奏。シャツの裾を出し、その上にジャケットを羽織ったラフな格好で登場した角野がおもむろに「I Got Rhythm」を弾き始める。時おり片方の手で指を鳴らし、拍子を取りながらスウィングビートをもう片方の手で刻むと会場は一転して華やかな雰囲気になった。

　「ついつい、プログラムにない曲を演奏しちゃいました」と、茶目っ気たっぷりに言う角野。続いて「少年の冒険」をテーマにしたというオリジナル曲「ティーン・ファンタジア」へ。どこかゲームミュージックのサウンドトラックのようなキャッチーな主旋律は、ゲーマーとしても知られる角野ならではだ。

　そしてこの日のハイライトとなる、東京フィルハーモニー交響楽団を迎えてのガーシュウィン「ピアノ協奏曲ヘ調」に。指揮者を務めるのは、角野が敬意と親しみを込めて「サッチー」と呼ぶ藤岡幸夫。コンサートマスターは、フューチャー・オーケストラ・クラシックス、バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラでもコンサートマスターを務める近藤薫という座組みだ。

　勇ましいティンパニの連打から始まり、スウィングしながら徐々に盛り上がっていく鉄壁のストリングス＆ホーンセクションと、その隙間を岩水のように滑らかに滑り込んでいく流麗なピアノが絶妙なコントラストを描き出していく。曲が進むにつれ、まるで雷鳴のようにパーカッションが鳴り響いたかと思いきや、ファゴットやオーボエが異国情緒あふれる幻想的なサウンドスケープを構築する。角野はピアニカを巧みに操り、まるでゴスペルシンガーのようにソウルフルに、ブルースを“歌って”いたり、トムとジェリーが鍵盤の上で追いかけっこでもしているかのような、目にも止まらぬスピードで両手を右へ左へと交差させたりしている。

　張り詰めたような静寂から、鼓膜をつんざくような爆音まで、およそ40分にわたる「音楽の旅」は終盤にまた最初のモチーフが現れて、えも言われぬカタルシスへ。永遠に続くかと思うほど長い長いクレッシェンドののちにエンディングを迎えると、会場からは破れんばかりの拍手が巻き起こった。

　アンコールでは、再び角野一人でショパンの「子犬のワルツ」と「英雄ポロネーズ」を披露し、鳴りやまぬ拍手のなかでこの日の公演は終了した。

「一周まわって今は、『音楽は楽しい』という一言に尽きると思っています。2022年もたくさんのことを吸収し、皆さんに還元できるように頑張ります。これからも応援をよろしくお願いします」

　最後にそう挨拶してステージを後にした角野。ショパンとガーシュウィンの楽曲に自身のオリジナル曲をミックスし、時にアドリブを加えながらクラシックとジャズの垣根を自由に行き来する角野のクリエイティブは、クラシックに軸足を置きながらもジャズやロック、ポップスなど様々なフィールドに単身飛び込み、そこで掴み取ったものを自身の演奏にフィードバックし続けてきた彼だからからこそ養われてきたものだろう。今年もすでに、クラシックの枠を超えた活動を積極的に行っている角野が、さらに進化したパフォーマンスを自身のフィールドで再び見せてくれることは間違いない。

■コンサート情報
2022年2月20日（日）
開演：18:00～ （開場 17:00～）
東京国際フォーラム ホールA （東京都）

＜出演者＞
ピアノ：角野隼斗
指揮者：藤岡幸夫
管弦楽：東京フィルハーモニー交響楽団

＜演奏予定曲目＞
Some Chopin Pieces
Some Hayato Sumino Original Pieces
Gershwin：Piano Concerto in F 　etc…
※曲目・曲順は変更になる可能性あり

＜Streaming+ 配信＞
配信日時：2022年2月20日（日）18:00～
視聴チケット：￥3,000(税込)
一般発売：2021年12月31日（日）昼12:00～2022年3月5日（土）21:00
＊アーカイブ期間：2022年3月5日（土）23:59まで

・視聴チケットのご購入はこちら
https://eplus.jp/suminohayato-2022tour/st/
・海外にお住まいの方はこちら
https://ib.eplus.jp/hayatosumino
※料金は地域により異なる

＜角野隼斗 全国ツアー2022“Chopin, Gershwin and…“ 公演詳細＞
https://eplus.jp/suminohayato-2022tour/

■関連リンク
https://www.youtube.com/user/chopin8810
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