NGT48 中井りか、元乃木坂46 大園桃子は第二の小嶋陽菜になるか? “アイドル×アパレル”成功の要因を考える

 コロナ禍を一つのきっかけにして、アパレル業界に進出したアイドルがいる。それがNGT48の中井りか、2021年9月に乃木坂46を卒業し、芸能界を引退した大園桃子だ。

 中井はプロデュースブランド「Recandy(リーキャンディ)」のECサイトを今年1月31日にオープン。ブランド名には「女の子の気分を上げる魔法を持ったアイテム”キャンディ”のように身に纏った女の子の可愛さを引き出す」といった思いが込められており、「女の子はだれでもお姫様になれる」という中井の理想を叶えたガーリーなワンピースやスカート、ロンTなどが販売されている。

【特別編】自腹でアパレルブランドを作ったアイドルの1年間の記録

 始まりは、2021年2月のYouTubeチャンネル開設だった。1本目の動画で中井は「新プロジェクト始動」として、「目を引くファッションをしたいと思う子達に向けて、お洋服を自分で作ってみたいなと思った」とアパレルブランド立ち上げを目標に掲げた。斬新かつユニークなのはこの1年の間で、自分の夢と向き合った経過をYouTuber的に公開してきたことだ。自腹の100万円を軍資金にプロジェクトはスタート。デザインの難しさ、PRの大切さ、そしてデザインを描くことの楽しさを学びながら、理想の生地選び、時にスタッフとの衝突、予算の大幅なオーバー、発売延期とトラブルも隠さずに動画に収めてきた。チャンネル登録者数は約1.3万人と決して多いとは言えない数字ではあるが、この1年間で彼女がプロデューサーとして向き合ってきた頑張り、つまりは物語性がブランドに新たな付加価値を与えている。

 大園は2021年10月にアパレルブランド「philme(フィルム)」を立ち上げた。その発表自体は、9月4日のグループ卒業/芸能界引退から9日後の9月13日。大園の22歳の誕生日当日ということが大きいが、間髪を入れず発表する姿勢に困惑するファンも少なからずいたのは事実だ。大園は乃木坂46所属時からのInstagramアカウントを通じて、アパレルブランドオープンの経緯を説明。「自分の好きな洋服をいちから作ってみたい」という夢を持ち挑戦したいと思えたことが、グループの卒業を前向きに考え始めた理由だと明かしている。

 コロナ禍におけるステイホーム期間が自分自身のことを考える時間となった点は中井と共通しているが、大園は表に出ずに経営に専念する立場ということは対照的である。考え方を変えればグループ卒業からの勢いをそのままブランド人気へと転換できているとも捉えられる。大園のInstagramのフォロワーは現在までで約55万人。今年1月末にスタートしたYouTubeチャンネル「背伸びな暮らし - momo -」も登録者数20万人を突破し、いまだ衰えぬ人気を証明している。また、大園の活動を後押ししているのが、乃木坂46の同期たち。実際に「philme」を着用したり、話題に出すことは、ファンにとっては購買意欲を掻き立てる何よりもの宣伝となる。大園が乃木坂46として築き上げてきたイメージがそのまま「philme」のブランディングに転換されていると言えるだろう。

 ただ、中井の「Recandy」も、大園の「philme」もまだオープンから半年にも満たないブランドだ。現在はどちらもソールドアウトが続いているが、これが1年後に成功しているかは分からない。2013年に始動した篠田麻里子のプロデュースブランド「ricori」は1年半で倒産したという例もある(実店舗をメインとした当時のブランドを比較対象にすることははばかられるが)。「アイドル×アパレル」という組み合わせで最も成功を収めているのは、2018年にプロデューサーとして「Her lip to(ハーリップトゥー)」を設立した小嶋陽菜だ。現在は洋服だけでなく、ボディバームや日焼け止めなどの小物アイテムの販売、期間限定のコンセプトカフェのオープンと新たな事業を展開。小嶋のInstagramのフォロワーは約318万人、ブランドInstagramにおいても約17万人と絶大な人気を誇っている。小嶋がプロデューサーの立場から話しているインタビューは金言の宝庫であるが、中でも「利他的に考えられる力」については最もブランディングにおいて重要なのではないかと考える。

「自分が幸せじゃないと、周りのみんなを幸せにすることはできない。だから普段から「利他的であるためには、利己的でいよう」と心掛けています。今は「Her lip to」=“小嶋陽菜”なので、自分が輝いていないとみんなもついてきてくれない。やっぱり自分を大切にしなきゃなと思います」(※1)

 自身も『MAQUIA』モデルとして雑誌の表紙を飾る小嶋は、同性からも憧れられる女性。小嶋の場合は容姿だけでなく、その考え方や揺るぎないマインドの強さもブランディングに直結しているように思える。

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