AKB48、原点に立ち返ることで見えた“楽曲”の重要性 いまグループに必要な曲とは?

 今年1月よりスタートした、AKB48の新番組『AKB48、最近聞いた?~一緒になんかやってみませんか?~』(テレビ東京系)。同番組は、AKB48の楽曲に着目し、一般企業、地方自治体、学生らとのコラボレーションを通してその魅力を伝えていくというもの。

 第1回、第2回では群馬県をパートナーに、観光地や名産品を交えながら「始まりの雪」「High school days」のミュージックビデオを制作。第3回は謎の離島専門誌と手を組み江ノ島へ。メンバーが雑誌へのエッセイ寄稿に挑戦するために島を取材し、そのなかで「長い光」のミュージックビデオも作りあげた。

【AKB48、最近聞いた?】『長い光』〜江の島・4人の青春編〜【完全新作MVシリーズ】

 楽曲にクローズアップしているとあって、AKB48の歌にはどんな意味や描写があるのかなど、あらためて実感できる番組だ。ミュージックビデオの制作過程も映し出すことで、歌の背景がより分かりやすく伝わってくる。その点では、番組の狙いのひとつは達成できているのではないだろうか。

 第3回では興味深い話があった。同回ではジャーナリストの田原総一朗が出演。田原は2015年、AKB48の特別公演『ド〜なる?!ド〜する?!AKB48』をプロデュース。プロデューサーの秋元康との対談本『AKB48の戦略!秋元康の仕事術』(2013年/アスコム)でも、「齢78にしてAKB48にハマり続けている」と記していたほど。そんな田原が、番組のなかで「最近はあまりAKB48の曲を聴いていない」と口にしていた。ただ彼のその言葉は、2010年代前半にAKB48に熱中していたファンのリアルな意見でもあるのだ。

楽曲はAKB48にとってドキュメンタリーの劇伴

 さて、この番組を機としてあらためてAKB48の楽曲を聴いてみた。やはり、ヒット曲を聴くとその当時の出来事が頭をよぎる。2006年のインディーズ1枚目のシングル曲「桜の花びらたち」は、AKB48という“青春ドラマ”の幕開けを印象付け、同時にメンバーの誰しもに卒業が訪れる“AKB48の宿命”をこの時点で暗示させていた。

 AKB48は卒業ソングがいずれも秀逸で、特に「夢の河」(2012年)を聴くと、絶対的なエースだった前田敦子の卒業を思い起こす。一足先に“夢の河”を渡る船に乗って、先へ進んでいく前田。〈夢が叶ったら迎えに来るよ〉の最後の一節に涙した前田ファンも多かったのではないだろうか。

【MV full】 夢の河 / AKB48 [公式]

 秋元康は常々、AKB48はドキュメンタリーであり、楽曲は劇伴のような役割と述べていた。もっともドキュメンタリー性があらわれていたのが、4thアルバム『1830m』(2012年)。同アルバムは、グループ初の東京ドームでのコンサート開催、そして前田の卒業公演に合わせて作られたもの。前田、高橋みなみが歌唱した収録曲「思い出のほとんど」は、わずか7人しか客がいなかった2005年12月の劇場公演初日から始まり、その後AKB48に青春を捧げ続けた彼女たちの姿をシンクロさせた内容だった。

AKB48にとってのブレイク曲とは

 それにしても、AKB48がブレイクスルーした楽曲はいったい何なのか。これは当然、意見が分かれるところである。初期からのファンであれば、2006年のインディーズ2ndシングル『スカート、ひらり』を引っさげてTeam Aが『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演した背景などから、ここを人気沸騰の起点と考えるかもしれない。もしくは同年のメジャーデビュー曲「会いたかった」は、AKB48がメディアで紹介される際、自己紹介的な楽曲として流れており、お茶の間への浸透度も高かったことから、この曲こそがブレイクのきっかけと考える人もいるのではないだろうか。

【MV full】 ヘビーローテーション / AKB48 [公式]

 ただ、アイドルに詳しくない人も巻き込んだという点であれば、「ヘビーローテーション」(2010年)だろう。同曲の選抜メンバーを決める2010年6月開催の『AKB48第2回選抜総選挙』がメディアでも大きく取り上げられ、全国規模のニュースとなったからだ。それまでも「大声ダイヤモンド」(2008年)、「言い訳Maybe」(2009年)、「桜の栞」(2010年)などチャートで上位にランクインした曲もあったが、「ヘビーローテーション」はアイドルの枠を超え、ポップソングとして広く話題を集めた印象だ。

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