Aimer、サブスク解禁を機に聴きたい10曲 「残響散歌」「蝶々結び」などオリジナリティあふれる楽曲と歌の魅力を振り返る

「トリル」

 軽やかなアコースティックギターのバッキングと、名越由貴夫(コーパス・グラインダーズ、YEN TOWN BAND)のエレキギターが跳ねたリズムの上で静かに絡み合う、アルバム『Walpurgis』の中でもとりわけ美しい楽曲。「コロナ禍で亡くなってしまった人たちのことを考えながら作った」というこの曲は、あまりヘヴィになり過ぎないよう歌詞で韻を踏んだり、アレンジやメロディ、歌い方にポップな響きを加えたりするなど、彼女いわく「アルバムの中でも一、二を争うくらい難易度の高い曲」である(※2)。

Aimer「トリル」MUSIC VIDEO ( 短編アニメ「夜の国」第1夜 主題歌 / new album『Walpurgis』 now on sale)

「蝶々結び」

 アルバム『daydream』収録曲で、作詞作曲とプロデュースを野田洋次郎(RADWIMPS)が務め、ハナレグミ 永積タカシがギターとコーラスで参加している。促音で韻を踏みつつ、人と人との関わり合いを蝶々結びの手順に喩える可愛らしい歌詞や、サビで唐突にマイナー調へと移行する曲構成は野田の真骨頂といったところ。長いブレイクを経て曲の後半から野田とデュエットしているが、これはレコーディング当日にAimer本人が提案し実現したという。エンディングの幻想的なスキャットは、もちろんハナレグミによるもの。

Aimer 『蝶々結び』 ※野田洋次郎(RADWIMPS)楽曲提供・プロデュース

「RE:I AM」

 OVA『機動戦士ガンダムUC』episode 6「宇宙と地球と」主題歌に抜擢された5枚目のシングル表題曲。作詞・作曲・編曲は、デビューから現在までAimerを支え続けている澤野弘之。この曲で初めてアニメ主題歌のオファーを受けた澤野は、彼女への感謝の思いを込めて曲名を「Aimer」のアナグラムにした。ヘヴィに刻むエレキギターとシンガロングから始まるこの曲も、「Ref:rain」同様シンプルだが抑揚たっぷりに動き回るヨナ抜き音階のメロディラインが特徴的だ。後にAimerは、「力強い曲を初めて歌ったことで、ボーカリストとして1回生まれ変われたような気がしていて」と振り返っている(※3)。

「LAST STARDUST」

 テレビアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』挿入歌にも起用された、通算3枚目のオリジナルアルバム『DAWN』収録曲。改めて聴くと当時のAimerの声は、今よりも鋭い響きがあって興味深い。ハチロクのリズムを基調とする壮大かつドラマティックなナンバーだが、中盤でラジオボイスになるサイケデリックな展開など実験的なアレンジも聴きどころの一つ。〈愛しさ 優しさすべて投げ出してもいい 失くしたもの見つけたなら〉と歌われる「LAST STARDUST」は、「夜明け前」を意味するタイトルが冠せられたアルバムの中で、「Brave Shine」に続く最も深い夜を描写した楽曲でもある。

「ポラリス」

 1stミニアルバム『After Dark』収録曲。ポラリスとは北極星の意味。旅人が昔、道に迷わないよう北極星を目印に進んでいたという言い伝えにインスパイアされたAimerは、独りぼっちで不安に苛まれている人に対し〈そうやって生きてきた君のためだけのポラリスになりたい〉と歌う。デビューして間もないAimerによる「決意表明」のような楽曲だが、COVID-19の蔓延が世界を震撼させてている今、そのメッセージ性の高さが我々に新たな感動を呼び起こす。Aimerが好きな、アイスランド音楽を彷彿とさせる壮大かつ幻想的なトラックも魅力の一つだ。

Aimer 『ポラリス』MUSIC VIDEO

 以上、今聴くべきAimerの10曲を駆け足で紹介した。様々な音楽スタイルを取り込み、他アーティストと積極的にコラボレートをしながら自身の音楽性を進化させ続けてきたAimer。それでもなお、デビュー時より一貫して変わらぬ強い意志が彼女の持つ唯一無二のオリジナリティを守り続けてきたのである。

※1:https://natalie.mu/music/pp/aimer21
※2:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/35747/3/1/1
※3:https://natalie.mu/music/pp/aimer06

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