kiki vivi lily、鈴木真海子、みきなつみ……フィメールメロウラップの活況から昨今のトレンドを紐解く

 ギターを捨ててラップを始めた女性たちーー。

 そんな音楽シーンの移り変わりを感じていたら、そのものずばり〈ギターもなしに歌えというのか〉と歌ったのがasmiだった。

 昨年、自身がボーカルを務めたMAISONdes「ヨワネハキ」がTikTokでビッグバズを巻き起こし、一躍時の人となったasmi。彼女はギターを使って曲作りをするタイプのシンガーソングライターだが、昨年リリースしたEP『humming』ではヒップホップを咀嚼した現代的な感性のソングライティングを見せていた。トラックは非常にメロウで柔らかく、ボーカルは聴き手に寄り添うように優しく歌い掛けている。特徴的な声質もこうしたスムースなサウンドによく合っている。ポップ色強めの最新曲「Call me」では、個性的なリリックがリズムに絶妙にマッチしていた。

Call me - asmi (Official Music Video)

 あるいは、見方を少し変えてみれば、adieuの新曲「灯台より」も広義のメロウラップに属していると言えるかもしれない。柴田聡子特有の難解なメロディと詩的な歌詞表現が、adieuのクリーミーな歌声によって程よく中和され、Yaffleのアレンジも相まってある意味でメロウラップ的な浮遊感を得ている。やくしまるえつこを彷彿とさせる独特のアニメーションMVもこの楽曲の世界観をうまく引き立てているだろう。

adieu [ 灯台より ]

 こうした作品たちが、ゆるやかに繋がりながら時代の空気を作り上げている現在のシーン。

 フィメールラップと言えば、かつて2010年代にDAOKOを輩出した<LOW HIGH WHO? PRODUCTION>や、泉まくらが在籍する<術ノ穴>といったインディーレーベルがシーンを牽引していたように思う一方で、インディー/メジャー関わらず近年増えてきたこうしたメロウな作品は、それらが持っていた“病み”的な要素をどことなく“甘味”で包み込んだような、なめらかなライミングと丸みを帯びたサウンドが特徴だ。

 柔らかい音色、ゆるさを持った歌詞、とろけるような甘い歌声……。外出を控えて部屋でのんびりと過ごすことが増えた今、彼女たちが奏でるそうした作品がなんとなく気分にも合うのかもしれない。

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