スカート、ミュージシャンとしての持ち味と魅力を爆発させたリキッドルームワンマン PUNPEEとのセッションも

 ぐっと冷え込んだこの日の恵比寿駅周辺は、日曜日ということもあって賑わっていた。クリスマスを待ち受けるきらびやかな街には祝祭への楽しみと刹那に過ぎ去ってしまうことへの寂しさが入り混じったような空気が漂っている。

 12月5日、恵比寿LIQUIDROOM。澤部渡のソロプロジェクト、スカートのワンマンライブ『The Coastline Revisited Show』が行われた。1曲目に演奏されたのは「沈黙」。〈冬はただただ深くなってくけれど〉という序盤の歌詞がここに来る道中の街並みを思わせ、〈道を逸れてみようか〉と誘い込む。赤いテレキャスターのカッティングが印象的な「おれたちはしないよ」、ポップなハイハットの上に乗る歌メロの切なさをキーボードがブーストする「駆ける」と続く。そしてすぐさま〈誰でもいいから君に会いたい〉と歌う「静かな夜がいい」へ。ハットが牽引するリズムにベースとシェイカーが乗り、エスニックなコンガが存在感を醸す。どの曲も一聴すると耳馴染みのいいポップスだが、各所にある切ないメロといい薄暗さも感じる歌詞といい、単純なポップスにとどまらない奥深さを提示していく。

澤部渡

 シンプルなビートにどことなく哀愁のある歌が乗る「CALL」ののちに演奏された「ともす灯 やどす灯」はキーボードが軽快で、口笛と鈴の音がどこか冬の街並みを連想させる。アプローチの異なる楽曲がテンポよく披露され、澤部のパワフルで伸びやかな歌声が会場を魅了していく。

 「みなさんの前で演奏できるのがとっても嬉しい」と挨拶した澤部は「コロナが憎いね」と語る。MVが撮れなかったことやライブができなかったことなど、コロナ禍の影響をあげるたびにドラムの佐久間裕太が「1にくだね」「2にくだ」と数えるのが微笑ましい。「その憎しみを今日はシュガーコーティングしてお送りします」というユーモアに富んだMCのあとに「ストーリー」「セブンスター」と続いた。スカートのサウンドには欠かせないパーカッション(シマダボーイ)とドラム(佐久間裕太)、ベース(岩崎なおみ)、キーボード(佐藤優介)という布陣が強力で、澤部のギターボーカルを中心にパワフルなノリを生みだしていく。「新しい曲を」と演奏された新曲ではサビで明るく展開しなめらかに歌い上げる。澤部の力強い歌唱は聴くものの心をつかみ、かと思えば力の抜き加減にはっとする。「さかさまとガラクタ」「さよなら!さよなら!」でリズムが大きく展開すると、コンガとドラムで大胆なノリを構築。リズミカルなバッキングの上でファルセットとベースが気持ちよく絡み、キーボードの間奏がポップに彩る。セッションのような熱さを感じる演奏だ。

 伸びやかなバラード「この夜に向け」から「千のない」「返信」と連続で演奏され、怒涛の後半戦へ。1曲が短いスカートの楽曲は繋げてもコンパクトさを失わず、ぐんぐんと勢いを加速させながら会場の熱気を高めていく。安定感のあるボーカルを支えるテレキャスの音色は主張しすぎず、強靭なリズム隊とメロディアスなキーボードが常に生き生きと輝いている。「わるふざけ」でのリズム隊のブレイクの迫力がこの日の意気込みを物語っているようだ。

 「遠い春」でしっとりと揺蕩うような歌声を届けると「海岸線再訪」を披露。会場を幸福感に包み込んだ。

関連記事