PEDRO、最初で最後のZepp Tokyoで放った眩しい光 アユニ・Dの素直な言葉に触れた『後日改めて伺います』再現ライブ
この日、筆者が思わず息を飲んだのは、本編ラストの「雪の街」だった。北海道出身のアユニが故郷への思いを書いた歌詞に、爆音のバンドサウンドが乗る。音源時点で驚愕だったが、ライブでは想像の域をさらに超えていく。その核にあるのは田渕ひさ子(Gt)によるアーミングを多用しながらかき鳴らす歪んだギター。My Bloody Valentineを彷彿とさせる、轟音のシューゲイザーだ。この日のライブはYouTubeで生中継されていたが、耳をつんざくような、数分でビリビリしてくるあの感覚は、きっと会場にいた者だけが共有できたリアルな体験。同時に、このギターノイズの洪水が鳴らされる大会場の横浜アリーナにも思いを馳せた。轟音の吹雪を、しんしんと舞う雪に和らげているのは、田渕と毛利匠太(Dr)のコーラスも大きく作用している。
「雪の街」で終わった本編から、アンコール1曲目は札幌から上京してきたアユニが東京で生活をする中で感じた思いを綴った「東京」。続く「NIGHT NIGHT」「自律神経出張中」といったナンバーでの会場の盛り上がりには、3年余りの月日の中でアユニとともに楽曲自体も一つひとつのライブを経て成長してきたのだということを感じさせた。この日の最後に披露されたのは「浪漫」。アユニが作詞作曲を手掛けた、2ndアルバムの表題曲だ。「特別な夜にしたい」ーーアユニはそう言って、田渕がアコースティックギターを弾く、特別編成で「浪漫」を歌唱した。
「今まで見てきた景色、吸ってきた空気、触れてきた優しさ。たまに自暴自棄になったりしたけど、そういうものを生々しいくらい、恥ずかしいくらい詰め込んだ」
アユニが『後日改めて伺います』にかける特別な思いは、そんなMCの一言からも痛いほどに伝わってきた。そして、アユニの「あなた方の心の中で生き続けられたら幸せだなと、祈りを込めて作りました」という言葉からは、横浜アリーナの先で、このアルバムの楽曲が一人ひとりの生活に交わる未来を見据えているのだと分かった。「PEDROを初めて観に来た人」という問いかけに、会場では何人かの手が挙がった。アユニが言っていたように、この日が最初で最後のPEDROというファンもきっといたはずだ。しかし、誰もに共通しているのはこれからもPEDROの音楽が生活の中で息づいていくということ。
活動休止という一つの終わりに向かっていくPEDROに感じたのは、いつまでも脳裏から消えない閃光のような眩しさだった。