ASIAN KUNG-FU GENERATION、未来のビジョンを確かめ合った25周年ツアー 4人が届け続ける新たなロックの体験
今回のライブの最後に披露されたのは、最新曲「エンパシー」だった。様々なシーンで否応もなく分断が起きつつある2021年において、他者への想像力をもって連帯していくことの意義を歌うこの曲は、ロックバンドが鳴らす希望のメッセージとしてとても深く響く。歓声を封じられた2021年のシーンにおいても、こうした新しいロックアンセムが生まれ、そして観客に大きな歓びと興奮をもって受け入れられていく光景に、筆者は強く心を動かされた。また、映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の主題歌となった同曲をきっかけにアジカンのロックと出会い、今回のツアーに足を運んだ(もしくは、YouTubeの無料生配信を視聴した)若い世代のリスナーも多くいたと思う。25年という歩みの先に、また新たなリスナーとの出会いが生まれる。そして、アジカンのロックは世代を超えて響き続けていく。改めて振り返って思うのは、今回の25周年記念ツアーは決して懐古的なものではなく、そうした未だ見ぬ未来を射程に据えた、とてもポジティブなエネルギーに満ちたツアーだったということだ。途中のMCで、後藤正文(Vo/Gt)は「どうすれば未来の世代へ音楽のバトンを手渡していけるか、そういうところに自分の命を燃やしていきたい」と語ったが、その想いの強さは、4人が鳴らす鮮烈なロックサウンドが何よりも雄弁に物語っていたように思う。
25年間、4人が歩んできた旅路は、そのまま後進のロックバンドたちの道標となり、何より、彼ら4人の物語は、ロックの可能性を信じるリスナーの希望であり続けている。そして4人はこれからも、その歩みを止めることなく、僕たちに新しいロックの体験を届け続けてくれるはずだ。完成が近いとされる新作アルバムのリリースを含め、2022年以降の彼らのアクションを期待して待ちたいと思う。