『Filmography』&『THE COLLECTORS 35th Anniversary “This is Mods”』インタビュー

THE COLLECTORS 加藤ひさしが語る、二度目の武道館に懸ける思い 「バンドも永遠に続くものではない」

ライブができないというのは最後の砦がなくなったということ

ーー最近、50代のバンドにインタビューしていると、「いつまでやれるかわからないんだから、やれるうちにやらないと」という声をよく聞くようになって。コロナ禍によって、より強くそう思うようになったんだなと。

加藤:そうなんですよ。コロナ前だったら、どんなトラブルがあっても、バンドがちゃんとしていれば……たとえばバイトのようにライブを入れて、チャージバックの良さそうなライブハウスでライブをやればどうにでも食っていけるさ、最後はそれでいいよ、そういう気持ちでいられたんですよ。バンドさえやれれば俺たちは幸せ、みたいな。でも、ライブができないっていうのは、その最後の砦がなくなったわけなので。表現者として、音源を作るしかないんだけど、この時代CDも売れない、配信も儲からない、そこでライブをやれないって、ミュージシャンとしての生命が脅かされるわけですよね。まずそこがなくなったからね。本当に、最低限のことができなくなる世界になるんだ、と思った瞬間に、やたら焦るっていうか。実際に、やれない時間が増えてくるわけじゃないですか。THE COLLECTORSだってツアー何本キャンセルしたかわからないし。そうすると、そこでやりたかったことをどこでやるの? っていった時に、「やらなきゃ」っていうのがどんどん宿題みたいに積み上がってくるから。時間がない、っていう。

ーー今回こういう映像ボックスを出そうというアイデアは?

加藤:周年の時にボックスアイテムを作っていこうよ、っていうのは、レコード会社ともずっと考えていたんです。で、35周年の時に、アナログの7インチのボックスセットを出したんですけど、映像の方は20周年の時に出したっきりで。そのボックスはDVDだったんですけど、それ以降のMVとかは、ちゃんとまとめてDVD化してないよね、という話もあって。

 それから、コロナ期間中に配信した『LIVING ROOM LIVE SHOW』もある。あれ、編集とか音のミックスとか、DVDクオリティでスタジオで作っているんですよ。なので、配信で4日間みんなに見せて終わり、っていうのは寂しいよね、これも入れよう、と。それで、大阪城の35周年ライブもドキュメンタリー風に再編集して入れよう、っていう風に決まったんです。

ーーDISC5の、新曲2曲をレコーディングしていくドキュメンタリーを入れたのは?

加藤:あれは実は、30周年ボックスセットの時に、1枚DVDが付いていて。それは、やめたメンバーとかにも全員にインタビューして、30周年を振り返る内容にしたんですね。だから、35周年は今のメンバーになって今年で5年だから、武道館を発表してすぐドラマーをチェンジした激動の5年間を、新曲を作っている過程の中で、メンバーみんながどう振り返ってどうしゃべるかを撮った方が、おもしろいだろうと思ったんですよ。

これはもうロックンロールしかない

ーーで、新曲が2曲入っているじゃないですか。「裸のランチ」をどういうふうに作ったかが、ドキュメンタリーの中で明かされていますけども。歌詞が2パターンあったとか。

加藤:この曲は、すごく苦労したんですよね。去年(2020年)『別世界旅行』っていうアルバムを出して、「お願いマーシー」がすごく評判が良くて。で、シングルボックスの時は、「ヒマラヤ」って曲を作って。それは、1967年のブリティッシュ・サイケ・ポップを、自分が箱庭感覚で作ったような曲を作りたいと思ったんです。じゃあ次は何を作ろう? って思った時に、すごく悩んだんですよ。「お願いマーシー」もインパクトが強い、「ヒマラヤ」も強い、もう一発すごいインパクトの曲を作らなきゃな、って思った時に……これはもう、めちゃロックンロールしかないな、と思って。シンプルなロックンロールは実はあんまり書いてないし。イントロなしで歌うとか、LED ZEPPELINの「Black Dog」とか、THE WHOの「Young Man Blues」みたいな、あんなのを歌おう、でもそういうのって全然ポップじゃないのかな、とか葛藤しながら。でもとにかく、前作の2作と違ったものを作りたい、という思いでした。

歌詞の内容よりも何が耳に残るかで決めた

ーー歌詞に関しては?

加藤:まず「裸のランチ」の方が先に浮かんでいて。これはもう、コロナの世の中で、イライラしているこの気持ちを一瞬発火させたような、そんな歌詞にしたい。マスクも取って裸になりたい、もうとにかく自由にさせてくれ、っていう歌を歌いたいと思って作ったんですよ。だけど作ってみて「おもしろいけど、なんか大人げないな」と思ったんです。還暦過ぎてるオヤジが、こんな歌を歌ってていいのかな、みたいな。もうちょっと大人目線の歌詞を書くか、と思って。嘘まみれ、カネまみれの世の中で……今までの歌だったら、「そういう世界を変えていこう」みたいなメッセージが普通でしょ。じゃなくて、ずっと昔から嘘まみれでカネまみれなんだったら、自分の好きな嘘だけ選んで信じていけばいいよ、っていう歌の方が新しいな、と思ったんですよ。

ーードキュメンタリーを観ると、そのバージョンも、いいんですよね。

加藤:そう、それはそれでめっちゃ良くて。ただ、歌ってみた時に、「裸のランチ」の方の、サビの最後の決めゼリフの〈はみ出し 飛び出し むき出しでいたい〉とか、まんなかの節に入ってくる「裸のランチ」っていう、(ウィリアム・)バロウズの小説のあの一節が、やたら耳に残るんですよね。だから、歌詞の内容よりも、何が耳に残るかで決めたんです。歌詞を、プロデューサーの吉田仁さんとか、みんなに渡した時は、みんな〈自分の好きな嘘だけ 信じていけばいい〉と歌った方がいい、って言ってたんですよ。「じゃあ実際に歌ってみるよ」って歌ったら、その瞬間、全員が「裸のランチ」の方がいい、と。「もう『マルゲリータ』が頭から離れない」って言われて。そのフレーズが重要だよな、歌ってそういうもんだよな、と思って。

ーー「ウィンターソング」の方は?

加藤:「ヒマラヤ」の時、この曲を入れようと思ってたんですよ。というのは、13枚のシングルが入っている中で、最新シングルは、たまにはアコースティックな感じの新曲があってもいいんじゃないか、という意見がメンバーからあって。それで、あの曲を歌詞なしで歌っていて、「いいんじゃない? これでいこうよ」って進んでたんですけれど、吉田仁さんに「やっぱり35周年も、コレクターズはコレクターズ節でいこうよ。もっとパワーポップみたいな方がいいよ」って言われて。それから「ヒマラヤ」を書いたんですよ。なので、あの曲は浮いちゃったんだけどすごく気に入ってたから、いつか歌おうと思っていた。で、その間に、THE COLLECTORSの前身バンド、The Bikeのギタリストが、8月25日に急死したんですよ。僕の高校の同級生で、それこそロックを彼といちばん聴いて、いちばん長く彼と音楽の時間を過ごしてきた、戦友みたいなもんなんですけど、心不全で突然逝ってしまって。それで俺にやれることって、歌を書くことぐらいだな、彼のことを歌いたい、と思ったんですよね。だから彼との思い出を歌った感じですかね。

ーー最後に、二回目の武道館、こういうものにしたいというビジョンはもうあります?

加藤:一回目の武道館はデビューから30周年っていう、キリのいいライブだったので。30年のTHE COLLECTORSの代表曲を、きれいに並べて、「THE COLLECTORSってこういうバンドなんだよ」っていう、カタログみたいなライブだったと思うんですよ。で、今度の武道館は、今のメンバーになったこの5年のTHE COLLECTORSをしっかり見せたい。だから、過去にあんまり囚われないコンサートにしたいなと思ってます。今の4人で作ったアルバムからしかやらない、とかね。それは極端だけど、それくらいのイメージでいますね。

■ツアー情報
『THE COLLECTORS 35th Anniversary “It’s Mod Mod World Tour”』
2021年12月4日(土)神戸・VARIT. 開場 16:30/開演 17:00
2021年12月5日(日)岡山・IMAGE 開場 16:30/開演 17:00
2021年12月12日(日)熊谷・HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1 開場 16:30/開演 17:00
2021年12月19日(日)浜松・窓枠  開場 16:30/開演 17:00
2022年1月15日(土)広島・セカンド・クラッチ 開場 16:30/開演 17:00
2022年1月16日(日)福岡・CB   開場 16:30/開演 17:00
2022年1月22日(土)盛岡・CLUB CHANGE WAVE 開場 16:30/開演 17:00
2022年1月23日(日)仙台・darwin 開場 16:30/開演 17:00
2022年2月19日(土)大阪・BIGCAT 開場 16:15/開演 17:00
2022年2月20日(日)名古屋・CLUB QUATTRO 開場 16:15/開演 17:00

チケット料金:前売 5,500円(税込/D代別/各会場によって、席・スタンディングいずれか)
*通常の公演時間となります。

一般チケット発売日:
札幌〜浜松会場→2021年11月6日(土)
広島〜名古屋会場→2021年12月5日(日)

■ライブ情報
『THE COLLECTORS 35th Anniversary “This is Mods”』
2022年3月13日(日)日本武道館
開場16:00/開演17:00

■リリース情報

結成35周年記念DVDBOX
『Filmography』
2021年11月24日(水)
6DVD+1CD
¥17,600(税込)

・DISC1「THE COLLECTORS 35th Anniversary LIVE SHOW “MOD GO ROUND”」
・DISC2「LIVING ROOM LIVE SHOW〜THE COLLECTORS Live at QUATTRO 2018〜 Vol.1&2」
・DISC3「LIVING ROOM LIVE SHOW〜THE COLLECTORS Live at QUATTRO 2018〜 Vol.3&4」
・DISC4「LIVING ROOM LIVE SHOW〜THE COLLECTORS Live at QUATTRO 2018〜 Vol.5&6」
・DISC5「THE COLLECTORS Documentary Film 2021 “Singing Playing and Talking”」
・DISC6「NEW CLIPS 3」
・CD 1.裸のランチ 2.ウィンターソング

<特典>
・メーカー特典:日本武道館公演告知ポスター(B2サイズ)
・Amazon.co.jp:L判ビジュアルシート10枚セット
・ディスクユニオン:アクリルスタンド(メンバー絵柄)
・ぐるぐる王国:マウスパッド
・セブンネットショッピング:アクリルスマホスタンド

THE COLLECTORS WEB:https://thecollectors.jp/
NIPPON COLUMBIA WEB:https://columbia.jp/collectors/

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