TrySail、麻倉もも&雨宮天&夏川椎菜がそれぞれ磨いたオリジナリティと個性 ツアー『Re Bon Voyage』を観て

 麻倉もも・雨宮天・夏川椎菜の3人組声優ユニット・TrySailによるライブツアー『LAWSON presents TrySail Live Tour 2021 "Re Bon Voyage"』東京公演2日目が、11月13日に東京ガーデンシアターにて催された。

 TrySailにとっては2年ぶりとなった全国ツアーであり、この日のライブが6公演目。コロナ禍以降、有観客の開催自体が時勢を見つつ判断されているライブ興行のなかにあって、彼女らは観客が実際に来場している状況をこのツアーを通して多く経験してきたこともあり、高い完成度のパフォーマンスが披露された。

 2020年6月にオープンした東京ガーデンシアターは、ライブ中にもMCで「とても近い!」と3人が声を揃えるほどに、演者と観客席が近いのが特徴の新しいホールだ。TrySailはオープン直後となる2020年6月と8月にこの会場で5周年を祝うライブを開催するはずが、時勢を鑑みて全公演中止。この日含めた2公演は、その雪辱戦といっても過言ではなかった。

 船の出航前を思わせるケルト〜フォルクローレ調の音楽が開演前の会場を包み、そこから暗転、ステージが始まる。大小さまざまな三角形が幾何学模様にデザインされたバック幕と、ステージ左右の白い足場にはめこまれた複数枚のパネルが明滅する。ステージセンターに登場した3人は、白と青を基調にした衣装で登場した。

 1曲目「Re Bon Voyage」から「バン!バン!!バンザイ!!!」「adrenaline!!!」と続く3連打で、一気に盛り上げていく3人と呼応する観客。アグレッシブな3曲だが、応援はペンライトと拍手を送るのみ。にも関わらず、早くも白い霧が会場を流れるような熱気が生まれていた。

雨宮天

 「(観客が)ギッシリですね!」「この会場、ステージから皆さんのところまで近くないですか?」と3人も普段よりも観客席との距離感が近いことを口にし、会場の最上層フロアに目をあげると、会場の客電が一時的に点いて明るくなるという照明スタッフの機転も。「バンザイ!っていう時にお客さんがどういうフリをするかでやる気を測っているんだけど、今日はとても良くなる気がする」と雨宮が言うと、大きな拍手が巻き起こった。久しぶりにライブに来たファンもいる中で、よりライブに集中できるような心遣いや言葉の数々が投げかけられる。それも「ライブを心から楽しもう」という気概に満ちているからこそなのだ。

 ポップパンクな「Favorite Days」、ガールズポップの「sewing dream」と続き、「whiz」「オリジナル。」と人気曲へと続いていく。先ほどまでの曲の勢いを殺さないアップテンポなムードで披露され、彼女たちは常にダンスや振り付けをこなしながらパフォーマンスを続けていく。

 麻倉と夏川が曲に寄せるように声色を少しだけ変えてボーカルをとり、「whiz」でのボーカルがないパートではガッツリとダンス、「オリジナル。」のサビでは足踏みステップしつつ歌っていくお馴染みのダンス&シングを見せる。3人がこれまでに培ってきたボーカルを基盤にしているからこそのパフォーマンスといえよう。「オリジナル。」が終わるとともに、逆光によってステージ上が見えなくなる。ようやくステージの様子が見えたときには、真っ白なドレスに着替えた3人がステージの左右と真ん中に登場した。

 白いピンスポットとほんのりとした黄色いライト以外に照明が一切ないステージで、歌謡曲を思わせるバラード「モノラル」で麻倉のしっとりとした歌声を中心としたボーカルリレーを聞かせていく。続く「うつろい」「Lapis」は、3人が出演するアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』に関連した2曲ということもあり、暗いステージにピンスポットライトが差しこみ、緊迫感ある楽曲とシリアスな3人の表情に、黒と白のコントラストが映える演出とコンセプトが全面に活かされていた。サビの激しいダンスと性急感のある曲調をボーカルリレーしていく「うつろい」に、膝を落としたり体を九の字に曲げて歌う「Lapis」。特に最後のステージ中央にもたれ合うように座ってほとんど掠れ声となって3人が声を合わせていくパートは、もはや演劇的であり、迫真に迫るようであった。

 シリアスでシアトリカルなセクションを終えると、衣装をチェンジして3人が登場、そのまま「誰が為に愛は鳴る」「Free Turn」と連続で披露していった。「これまでの衣装は、基本的に同じ形で色を変えるだけというのが多かったけど、今回は完全に1人1人に合わせるように衣装担当に頼んだ」と語る雨宮。ここ数年で3人のソロ活動も盛んになり、ソロライブを完遂できるほどに個性と実力を持つようになった。3人それぞれが磨いた個性・オリジナリティを尊重するような流れは、いまのTrySailのモードを象徴する部分だろう。

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