ソニー XperiaやTikTok CMソングで話題、idomとは? 新曲「Moment」で迎える本格的な注目の時

 ようやく長かったコロナ禍の出口が見えてきた感もある昨今。音楽シーンはここにきて、激動の様相を見せ始めている。目を引くのは、さらなるニュージェネレーション、新たな才能の台頭だ。このおよそ1年半、表舞台ではエンターテインメントを取り巻く諸々が一度ストップしていたことで、J-POPの枠組みやシーンのトレンドといったものをすっ飛ばしたところ、まさにベッドルームで、自由奔放に才能を磨いてきた者たちが登場してきている。

 そのひとりがidom(イドム)。兵庫県生まれ・岡山県在住の23歳だ。イタリアのデザイン事務所に就職するはずだった彼は、コロナ禍によりその機会を失う。失意の中で彼が新たに始めたのが「音楽をつくること」。そうして、曲制作を始めた直後の2020年4月には、最初の作品となった「neoki」を発表。その後もオリジナル曲、カバーを次々にリリース、早耳の音楽ファンの間で徐々に注目を集めると、2021年7月にはソニー Xperia 1 IIIのCMソングに「Awake」が起用される。続けて、TikTokのCMソングとなった「Freedom」が話題を呼ぶ中、二度目となるソニー Xperia 5IIIのCMソングとしてリリースされた「Moment」で、いま本格的に注目の時を迎えようとしている。

idom - Awake [MV]
idom - Freedom [MV]

 idomは、ソングライト、トラックメイク、歌・ラップから、映像やビジュアル制作も自ら行えるマルチクリエイター。彼が類稀なアーティストなのは、音楽制作を始めるまでは工業デザイナー志望で、大学でテクノロジー、デザインを学んでいたことも大きく関係している。音楽制作においてDTM(デスクトップミュージック)こそが主流となったいま。つくり手はPCを用いて、画面を見ながら音を組み立てていく。上手かったり、正確であることはいまやあたりまえ。なによりも重視されるようになったのは、サウンドの姿形、「音像」だ。「いまの音楽制作は、デザインに限りなく近い」というのは、細野晴臣を始め多くの人が口にするところ。音像の時代であるいま、デザイナー的観点での音楽づくりはもはや必須でさえある。idomが音楽制作を始めたのはわずか1年前のことだが、彼がもともとはデザインのスペシャリストーーしかもワールドクラスのーーであることを思うと、わずかな期間での躍進もさほど不思議とは思えない。彼の音像へのこだわりにより、idomの楽曲は圧倒的な3D音響も魅力となる。ヘッドフォン、イヤファンで、大きな音で、2021年のいまならではの音楽を楽しみたい。

 idomを特別な存在にしている理由はまた、日本語にまったく縛られない詞世界の自由さにもある。日本語メインの「Freedom」も、言葉遊び、フロウがまず耳に残るワールドスタンダードな歌詞のつくりだったが、「Moment」のそれは「Awake」と同じく、ほとんどが英語だ。その英語詞を「Moment」では、ところどころで効果的なファルセットも交えつつ、情感たっぷりに歌い聴かせる。一聴して言葉の意味はわからなくとも、リスナーは「Moment」におけるidomの歌から言葉以上の何か、つまり音楽にしかないボーカルのおもしろさを感じとることだろう。

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