ABBAが辿り着いた壮大な物語の終着点 グループ誕生から新作『ヴォヤージ』までの偉大なる歩み

ABBA、『ヴォヤージ』までの偉大なる歩み

 そんなABBAはミュージシャンにもファンが多い。マドンナが「ギミー!ギミー!ギミー!」を大胆にサンプリングした楽曲「Hung-Up」を2005年に大ヒットさせたのはあまりにも有名だが、レディー・ガガやあのジョン・ライドン(Sex Pistols/Public Image Ltd)もファンを公言。2017年にはカナダの至宝Arcade FireがABBAへのオマージュを感じさせるアルバム『Everything Now』をリリースしたのも記憶に新しい。そう、当の本人たちが“不在”のまま、これまでずっとABBAの熱狂は続いていたのだ。

 冒頭で述べたように、そんな彼らにとってラストアルバムとされていた『ザ・ヴィジターズ』がリリースされた1981年からちょうど40年後、ついに復活を遂げるのである。アルバムに先だってリリースされた2枚のシングル「アイ・スティル・ハヴ・フェイス・イン・ユー」「ドント・シャット・ミー・ダウン」では、バンドサウンドとオーケストラが融合したドラマティックなアンサンブルをバックに、4人の美しいメロディ&ハーモニーが響き合う“王道のABBAサウンド”を展開していた彼らだが、ニューアルバム『ヴォヤージ』も、そんな“王道のABBAサウンド”を全編にわたって堪能することができる。

ABBA - I Still Have Faith In You

 例えば「ホエン・ユー・ダンスト・ウィズ・ミー」は、北欧民謡を彷彿とさせるケルティックなメロディが印象的な楽曲。グロッケンシュピールの響きが可愛らしい「リトル・シングス」は、中期The Beatlesを彷彿とさせるバロックポップ。ブギーのリズムに美しい多重コーラスが乗ったアップテンポなオールディーズ風のナンバー「ジャスト・ア・ノーション」は、マジカルなコード展開が満載でABBAらしいポップネスに満ち、シンセを導入した「キープ・アン・アイ・オン・ダン」は、1975年の大ヒット曲「ギミー!ギミー!ギミー!」を想起させるケレン味あふれるナンバーだ。

 アルバム後半は、ラヴェルの「ボレロ」を彷彿とさせるリズムがこの上ない高揚感を誘う「バンブルビー」、展開が目まぐるしく変わっていく組曲的なロックナンバー「ノー・ダウト・アバウト・イット」と続き、有終の美を飾るようなシンフォニックナンバー「オード・トゥ・フリーダム」で幕を閉じる。この壮大なオーケストラポップが、ライブでは一体どのように再現されるのか、デジタルABBAが果たしてどのようなパフォーマンスを披露するのか、今から楽しみでならない。

ABBA - Ode To Freedom (Lyric Video)

 英ガーディアン紙のインタビュー(※1)によれば、今回の再結成は“ABBA第二章”の始まりではなく、このプロジェクトをもってABBAとしての活動はすべて終了となるそうだ。「1982年の時点では『はい、これで終わり』とは言ってなかったんだ」と語るのはベニー。「『もう二度とABBAはやらない』なんて、僕自身が明言したことは一度もない。でも、今ならはっきり言えるよ『はい、これで終わり!(this is it)』ってね」。

 1983年から続いてきた沈黙により、ずっと時が止まったままになっていた世界中のファンのために、ABBAの4人は時空を超え、デジタルの世界からケリをつけに来たということなのかもしれない。

※1:https://www.theguardian.com/music/2021/oct/27/abba-reunion-interview-voyage-younger-selves

『ヴォヤージ』

■リリース情報
ABBA
『ヴォヤージ』
2021年11月5日(金)発売
日本盤CDは下記4形態(SHM-CD仕様)
試聴・購入はこちら

①ヴォヤージ -  スタンダード・エディション
②ヴォヤージ with 『アバ・ゴールド』(CD)
③ヴォヤージ with 『アバ・イン・ジャパン』(2DVD)
④ヴォヤージwith 『エッセンシャル・コレクション』(DVD)

■関連リンク
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