韓国のユーストレンド、“ニュートロ”最新事情を読み解く 様々な文化圏のレトロな感性が根底に
JYPアーティストに見る、脈々と受け継がれるレトロテイスト
このように、K-POPは欧米圏でのニュートロムードとは異なる源流を持っているため、独自のニュートロ楽曲が近年まで定期的に作られてきている。2020年にリリースされたTWICE「I CAN'T STOP ME」は一聴するとデュア・リパの影響を感じられるシンセウェイブ調の楽曲だが、彼女たちの所属するるJYPエンターテインメントといえば、昔から特に女性グループの楽曲にレトロテイストをうまく取り入れることに定評があり、これに対しては2015年にリリースされたWonder Girlsのアルバム『Reboot』の血脈を感じずにはいられないだろう。今年上半期に韓国のチャートを逆走し、大衆的に最もバズった楽曲「Rollin'」のBrave Girlsが2020年にリリースした「We Ride」はMVの画面比率や、摩天楼の横のハイウェイをオープンカーで走るビジュアルからして直球のシティポップだ。
一方、今年の9月にリリースされたばかりのSHINeeのメンバー KEYのソロ曲「BAD LOVE」は、楽曲やビジュアルイメージは欧米圏レトロポップスからのダイレクトな影響を感じさせつつも、それだけではない多彩かつ大胆な音や展開とそこはかとない韓国歌謡的な雰囲気で、まさに「K-POP」と言える仕上がりになっている。
現代の韓国の若者向けアパレルや雑貨などのデザイントレンドを見ると、日本で1990~00年代に流行したギャルファッションやサブカルチャーの影響が見て取れることは珍しくないが、いずれも現代の韓国的な感性で再解釈されている点では独特の魅力を持っている。K-POPでも同様に、様々な文化圏のレトロな感性が韓国独自のレトロ文脈に融合してフィルタリングされた、唯一無二の「ニュートロミュージック」を表現していると言えるだろう
※1:https://www.herenow.city/seoul/article/night-tempo/1