Måneskin「Beggin’」カバーがロングヒット継続 “大会強豪バンド”快進撃の軌跡
参照:https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest
Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第4回となる今回は、10月14日公開(10月8日~10月13日集計)のチャートを見つつ、「Beggin’」がロングヒット中のMåneskin(マネスキン)を紹介していく。
1位と2位は先週から同じくザ・キッド・ラロイとリル・ナズ・X。Glass Animalsの「Heat Waves」が3位から4位にランクダウン。今週大幅に順位が変わったのは、BLACKPINKのメンバーであるLISAの「Money」。先週は16位であったが、9位にランクアップし、トップ10入り。また、先週は89位であったTainy、バッド・バニー、フリエッタ・ベネガスの「Los Siento BB:/」が12位にまであがり、トップ20入りを果たした。この楽曲はしばらくトップ20入りすることが期待されている。
The Four Seasons「Beggin’」のカバーがロングヒット中であり、「I Wanna Be Your Slave」が37位、そして新曲「MAMMAMIA」が初登場48位にランクインしたMåneskinを紹介したい。
「大会強豪バンド」Måneskinの快進撃
Måneskinはローマで結成されたイタリアのロックバンド。2017年にリリースされたThe Four Seasonsのカバーである「Beggin’」が、リリースから4年経った2021年に大ヒットしており、まさに「現代」の売れ方をしているをしているバンドとも言えるだろう。ヒップホップ/R&Bなどのジャンルが席巻する世の中で、80年代のグラムロックを彷彿とさせるルックスと、ラップ調のボーカルを含んだハードロックな楽曲で一躍大人気バンドになったMåneskinの軌跡を追う。
Måneskinは、2015年にローマの高校生によって結成。「Måneskin」というバンド名は、2016年にローカルバンドの大会『Pulse』に出場した際につけられたものであった。ベーシストのヴィクトリア・デ・アンジェリスの発案により、デンマーク語で「月明かり」を意味する「Måneskin」と命名され、その後大会で優勝をする。「大会強豪バンド」とも言えるMåneskinの快進撃の始まりであった。
2016年のローカルバンドの大会に出場後、Måneskinはローマの路上で演奏をするという活動をしていた。彼らにとって大きな転機となったのが2017年にイタリア版『Xファクター』に出演したことであった。彼らは、後の大ヒットとなるThe Four Seasonsの「Beggin’」、Franz Ferdinandの「Take Me Out」、The Killersの「Somebody Told Me」などのカバーを披露し、見事準優勝を果たした。これがきっかけで、ソニー・ミュージックからこれらのカバーを収録したEP『Chosen』を2017年末にリリースする。
このように2つの大会を経て、イタリアの人気バンドになったMåneskinであるが、2018年にはデビューアルバム『Il ballo della vita』をリリースし、さらに2019年には70カ所を回ったツアーで通算14万枚のチケットを売り上げている。
結成初期から大会によって名をあげたバンドであるが、その後もMåneskinは大会で次のステップに進んでいる。2021年の3月にはイタリアが熱狂する『サンレモ音楽祭』で、優勝を果たしている。ロックバンドが優勝したことに驚いた人も多かったようだが、これを機にヨーロッパ最大の音楽コンテスト番組と呼ばれる『ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021』への出場権を得る。同コンテストは、「最長寿年度テレビ音楽コンペティション」として2015年にギネス世界記録に認定されており、数億人の視聴者がいるという見積もりもある。そんな『ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021』にて、Måneskinは楽曲「Zitti e buoni」で優勝を果たし、イタリアだけではなく全世界にその名を広めた。2006年にLordiが「Hard Rock Hallelujah」で優勝して以来のロック曲の優勝となり、受賞した際にボーカリストであるダミアーノ・ダヴィドは「ヨーロッパへ、そして世界へ、ロックンロールは死なない!」と叫んでいる(※1)。
その後リリースしたアルバム『Teatro d'ira Vol. I』に収録された「Zitti e buoni」と「I Wanna Be Your Slave」はビルボードのグローバルチャートにもチャートインしており、「Zitti e buoni」に関してはUKチャートにてトップ10入りした初のイタリア語の楽曲となった。これらの2曲もヒットとなったが、彼らにとって一番のヒットとなったのは2017年の「Beggin’」のカバーであった。
『ユーロビジョン・ソング・コンテスト』には、シングル「Zitti e buoni」で出場したのだが、なぜ「Beggin’」がリリースから4年経った2021年に大ヒットしているかは、多くの海外メディアも疑問を感じているようだ。このコンテストで優勝したことが彼らのグローバルな成功に繋がったのは確かだが、特に特別なプロモーションがされていない「Beggin’」がバイラルヒットとなったのは、現代の「楽曲売上ブースター」とも言えるTikTokが大きな役割をかっている。