MISIA、宮本浩次、Mr.Children……Bank Bandとゲストによる映画のように強いメッセージ 『ap bank fes ’21』レポート
お楽しみは、まだまだ終わらない。ここからは、またBank Bandに戻り、小林が「ついにこの方を」と迎え入れたのは宮本浩次。Bank Bandのメンバーにおじぎをして歌い出したのは、久保田早紀の「異邦人」で、早くも最高潮のボルテージに持っていく。続く「風に吹かれて」でも、土を触り石を持ち、やりたい放題。「ハレルヤ」では、ステージを降り、走りまくり、「エビバデに幸多かれ!」と叫ぶ。そう、その想いがゆえに、彼は全力なのだ。すっかり惹きこまれてしまい、「悲しみの果て」では、画面の前で熱唱してしまった(のは、私だけではないはず)。そして、いきなりピークからはじまる「P.S. I love you」で、「ユー! ユー! ユー! ユー!」と、四方八方を指し、届け切ってステージを降りた。
すっかり暗くなった会場。小林の「圧倒的な歌唱力を聴いていると、透明になる、浮遊する感覚になる」という印象的な紹介から登場したのは、MISIA。「アイノカタチ」は、その言葉が頷けるような感覚を、画面越しでも味わえた。画面越しでも、声量そのものが伝わってくるのだ。また、これだけ実力を持ったシンガーなのに、演奏を食わずに調和しているところにも、彼女のスタンスが表れている気がした。最後は、届け! と言わんばかりに手を振り投げて、エンディングを迎えた。
いよいよフェスもクライマックス。Bank Bandに戻り、まずは櫻井がフジファブリックの「若者のすべて」を歌い上げる。そして「みんなの前で歌える。この上ない充実をいただけて感謝しています」と、真摯な言葉。そして「自分以外の誰かのためを想って演奏したい」と、『ap bank fes』のコンセプトを再確認させてくれる「奏逢 ~Bank Bandのテーマ~」へ。さらに、Salyuと共に、まさに楽曲に込められたメッセージに心が震える「MESSAGE -メッセージ-」と、畳みかけていく。
そして、ここでお待ちかねの宮本浩次 × 櫻井和寿 organized by ap bankの新曲「東京協奏曲」。稀代のフロントマン同士が、お互いすうっと立ちながら、ぶつかり合い、生かし合うハーモニーに、真のパワーを感じた。ふたりで肩を組んで手を掲げたラストは、『ap bank fes』の歴史に刻まれる名場面になると思う。その壮大さの後で、とことんパーソナルを突き詰めるSyrup16gの「Reborn」を奏でる流れもよかった。
そして、Bank Band feat.MISIAの「forgive」で、また壮大な世界観へ。〈えんやこら〉というフレーズと、燃え盛る炎に、魂を奮い立たせられる。北海道の「北海盆唄」、山形の「最上川舟歌」、そして宮城の「大漁唄い込み」などの民謡と、J-POPが見事に融合したような、究極の邦楽。これぞ『ap bank fes』ならではの演奏だった。
ついに訪れたラストは、小林の「この曲が寄り添って、いろんな想いと共に旅を続けていくことを願って」という言葉から、「to U」。櫻井とSalyuの歌、そしてBank Bandの演奏が、祈りのように響き渡る。リリースされた2006年から、驚くほどにこの楽曲は、小林の言葉の通りに、時代に寄り添い、私たちを支えてきた。〈悲しい昨日が 涙の向こうで/いつか微笑みに変わったら/人を好きに もっと好きになれるから/頑張らなくてもいいよ〉――配信を観終わっても、この楽曲は余韻のように耳の奥で鳴り続けている。
今、自分が欲していたもの、社会にとって必要なもの、あらゆるものが、『ap bank fes ’21 online in KURKKU FIELDS』にはあった。『ap bank fes』の特別な意義、そして音楽やフェスが私たちに与える作用を、強く感じることができた配信だったと思う。