女性アイドルたちは卒業後なぜ起業する? 運や才能に頼らなかった成功者たちの共通点
起業で成功した元アイドルたちの共通点
彼女たちはいずれもアイドル時代の経験と考え方を発展させて、事業化している。アイドル活動で得たものを自分の人生の弾みにするのは、セカンドキャリアとして理想的ではないだろうか。特に島田晴香、内田眞由美、伊藤祐奈の事業は、アイドルとしての現実を知っているからこそ、その立場と気持ちに寄り添える内容だ。
また、起業した元アイドルたちの関連記事や番組を見ると、多くの者が学校へ通い直したり、会社に一度就職したりしている。芸能活動の経歴と人脈だけで渡り歩こうとせず、知識や社会経験を上積みしているのだ。時間、金銭、努力、根気をかけている。
姫乃たまの著書『職業としての地下アイドル』(2017年/朝日新聞出版)では、一般の若者と地下アイドルには「成功するために重要なもの」の考え方に違いがあると提議し、興味深く掘り下げている。同著は、さまざまなアンケートの回答と数値をもとに「地下アイドルは『個人の努力』があまり通用しない世界で、自分の努力ではどうすることもできない『自分の才能』に思いを馳せながら、巡ってくるかわからない『運やチャンス』を求めて活動を続けている女の子である」と、ひとつの結論を導き出している。なかでも筆者が着目したのは、「成功するには個人の努力が重要」と答えた地下アイドルが一般の若者に比べて少ないという結果だ。
地下アイドルと、AKBグループや坂道シリーズなどのいわゆる地上アイドルには違いがあるかもしれない。しかし「アイドルたちは才能や運を重視している」という傾向は、業界全体のリアルな反応であるように感じた。そういった世界から卒業して社会に出たとき、いったいどんなことができるのか。間違いなく言えるのは、運や才能以外のものが大きく求められるということ。起業で成功を収めた元アイドルたちの経歴を見ると、その点と向き合った上で自分自身を磨き上げて、今のポジションにたどり着いたように思える。
アイドル特有の承認欲求も起業に結びつく?
起業の際、自分を支持してくれる人=ファンの存在も大きかったのではないか。私たちは普段の生活のなかで、ファンがつくなんてことはほとんどあり得ない。しかしアイドルである彼女たちには、その言葉、その仕草を愛してくれるファンが大勢いる。誰かを楽しませ、幸せにできる喜びも知っている。またアイドルを志す人の多くには「人気者になりたい」「認められたい」という承認欲求があり、卒業後もその気持ちは根底にあり続けるのかもしれない。それらを踏まえると、元アイドルが「起業」という形であらためて人々の前に立つ理由もどこか頷ける。
地上、地下を含めると全国には数えきれないほどのアイドルが存在する。彼女たちがアイドル経験を生かして、その後の人生でどんな仕事を展開するのか、楽しみでならない。