3rdアルバム『ハレンチ』インタビュー
ちゃんみな、スランプ乗り越え辿り着いた新境地 今だからこそ追求できた理想のJ-POP
ちゃんみなが、前作から約2年ぶりの3rdアルバム『ハレンチ』を10月6日にリリースする。同作は、国内外から注目を集める「美人」をはじめ、ちゃんみな節が炸裂する「ボイスメモ No. 5」や「Angel」といった既存曲、J-POPへの接近を強く感じさせる「太陽」やリード曲「ハレンチ」など、ちゃんみなのこれまでとこれからが詰まった作品となった。
10月15日には念願の日本武道館公演を控えるなど一見順風満帆に見える彼女だが、『ハレンチ』制作期間はスランプに陥ってしまったという。そのスランプを乗り越え辿り着いた、ちゃんみな流J-POPの新境地とは。本作への手応えと、創作活動におけるスタンスを聞いた。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】
「美人」制作から陥ったスランプ期間
ーー最近のちゃんみなさんの活動として、ジェニーハイ(「華奢なリップ」)やSKY-HIさん(「Holy Moly Holy Night」)など、他アーティストとのコラボにも積極的ですね。
ちゃんみな:これまでコラボは全然してこなかったのですごく新鮮でした。SKY-HIはノリでやったみたいな感覚が強いですけど(笑)、ジェニーハイは呼んでいただけて嬉しかったです。(川谷)絵音さんの作品に参加させていただいて、学べるところがたくさんありました。ジェニーハイは私の思うJ-POPのフィールドのど真ん中にいるバンドだと思うんですけど、そこでの制作を通してJ-POPの楽しさを再確認したし、J-POPをやりたいという気持ちが一層強くなったことを覚えています。
ーー最新アルバム『ハレンチ』は、従来のちゃんみなさんらしさがありつつ、よりJ-POP的なアプローチを強く感じられる作品になっていると感じます。まずは完成した率直な心境を教えてください。
ちゃんみな:完成まで長い道のりでした。普段は曲がすぐ書けるタイプなんですけど、長い期間スランプに陥ってしまって。「美人」を作るまで半年くらいかかってしまって……それから半年くらいは思うように曲が作れませんでした。ツアーの制作と並行して楽曲作りも行っていたので本当に大変だったんですけど、その分満足がいく作品に仕上がってよかったです。
ーー「美人」は海外からの反響もすごくありました。タイトルの通り、“美しさ”という難しいテーマを扱った曲だと思います。
ちゃんみな:予想以上の反響でしたね。「ダリア」(『美人』収録)とかも含めて、私が言いたいのは「好きなことをやりたい」ということで。好きなことを正直に言いたいし、それを表現したい。それは私だけでなく、周りの人にもそうであって欲しいんです。そこに関わりたいかを自分で判断して、嫌なら関わらなければいいし、関わりたいのであればそうなれるように努力をするだけであって。そういうスタンスは“美”にも重なる部分があると考えていて、その選択権を他人に委ねるのは良くないと思うんです。
ーーたとえば、“美”について語るのはやめておこう、という風潮もあります。ただ、ちゃんみなさんはどんどん表現しますよね。「言いたいことは責任を持って発信していくべき」という姿勢が、『ハレンチ』でも貫かれているように思いました。
ちゃんみな:やっぱり、そこから逃げるのは良くないなと。私の根っこにある部分は一貫していて、人様の考え方に意見はしない、ただそこに関わるか、関わらないかを選択するだけです。
ーーそんな「美人」は、ちゃんみなさんが求めていた自由な環境下で作られた曲とのことですが、その制作前後でスランプに陥ってしまったと。
ちゃんみな:好きなものを自由に作れる環境を整えた結果、そこでやれることが多すぎるがゆえに、どうしていいか分からないみたいな状態になってしまって。自由を求めていたはずなのに、逆に自由が自分の首を絞めるみたいな。そんな苦しさがありました。
「美人」を作った後の余韻がありつつ、アルバム『ハレンチ』の制作中にスランプになってしまったのですが、リードトラックの「ハレンチ」を書き終えてようやく(スランプが)終わったんです。コロナ禍の影響で2週間くらいレコーディングができない期間があったんですけど、その時点で出来上がっていた曲に全然納得していなかったし、とにかく曲を作らないとと思って、『未成年』ぶりに家で曲を作ってみたんです。そこで「あ、これだ」みたいな手応えを感じた曲が出来上がって、すぐにJ-POP好きなトラックメイカーの友達に連絡して作り上げたのが「ハレンチ」で。その友達とは元々は仕事をする予定は全然なかったんですけど、結果的にすごくハマったんですよ。
ーー作曲に共同でクレジットされているBENAさんという方ですね。J-POPのエッセンスは、意図的に取り入れているんですね。
ちゃんみな:今回の作品は、J-POPに寄り添ったものにしたかったんです。私自身J-POPが好きですし、挑戦したい気持ちはずっとあったんですけど、1stや2ndでやるのは少し違うと思っていたんで。自分の中のスタイルを確立してから挑戦したいと思っていたんです。だから、私的にはようやくタイミングが来たという感覚があって。それに、私ならではのJ-POPみたいなものをずっと模索していたんですけど、なかなか理想的な曲ができなかった。「ハレンチ」もJ-POPが好きな友達と、いろいろ話をしながら作れたことがよかったんだと思います。
ーー「ハレンチ」の歌詞については、いかがでしょうか? 一聴すると恋愛ソングに聴こえますが。
ちゃんみな:恋愛的なモチーフもありつつ、私としてはスランプ真っ只中の感情を書いた曲ですね。歌詞に出てくる〈君〉も音楽や作曲というイメージで。その時(スランプ時)は、音楽が私の元からいなくなってしまう感覚がありました。私はやりたいことが処理できないと次に進めない性格で。「ハレンチ」で一歩進めた感覚があって、その次に作った「太陽」でさらに視界がひらけましたね。「太陽」のサウンドは洋楽ライクな感じではあるんですけど、〈太陽だ〉というフレーズみたいに日本語でしかできない表現も入れています。〈だから二度と私を離れないで〉も音楽に対する素直な気持ちというか、私の音楽がようやく戻ってきたという心境が表れていますね。
ーー「太陽」や「ハレンチ」は音楽に対するラブソングとも言えますね。
ちゃんみな:そうですね、コロナ禍は音楽と向き合う時間がいつも以上に多かったので。いかに自分が音楽を大切にしているのか、そこに対する好きという感情がどれだけ大事なのかを再認識できました。