彼にとって「孤独」とは本来、人生に寄り添う伴侶のような存在である。幸せな家庭を築いても、立派なスタジオを手に入れても、26年というキャリアを祝ってくれる仲間がいても、時折そいつは彼の目の前にふと現れ、「お前は本当の自分を忘れたのか？」と問いかけてくる。誰かを愛すれば愛するほど、それを失うことの恐怖。そこから逃れたくて、周りに壁を作り、自分を守ることを優先したこともあれば、その寂しさを埋めるために酒に溺れてしまうこともある。そんな自分自身とコロナ禍に喘ぐ世間を重ねた曲が「Flame Sign」であり、アルバム収録曲「温かい手」「Hello ヘヴン」「霧雨」は、その後を追うようにして生まれたメッセージソングである。既知の仲である森川氏に共同作業をオファーしたのも、そういった曲を書く上で厳格な自己相対化が必要だったからであろう。

　とはいえ本作には彼の私生活や私情がそのまま綴られた曲もある。DIYへの愛をなりふりかまわず歌った「斉藤さん」や、25年の音楽人生を振り返った「サイドストーリー」、そして冒頭に触れた「泣き顔100％」など、ユーモアとペーソスが絶妙に絡み合う歌が心を和ませる。それでいて全体のトーンがビターでブルージーなのは、常に〈ひとりぼっち〉の自分を強く自覚しているから。コロナが浮き彫りにした「誰もが抱える孤独感」をテーマに据えたアルバムは、音楽と孤独を両脇に携えて生きてきた山崎の真骨頂ーーありのままの姿なのだ。

■作品概要
山崎まさよし『STEREO 3』
2021年9月22日（水）リリース
CD
主要配信サイト

・完全生産限定盤【CD＋GOODS】¥7,700（税込）
※プラモデル全長約100mm、スペシャルBOX【縦244ｍｍ 横190.5mm高さ48.5mm】
・通常盤 【CD】¥3,300（税込）

＜収録曲＞
1.「Prelude」
2.「Hello ヘヴン」
3.「Flame Sign」
4.「霧雨」
5.「虹のつづき」
6.「サイドストーリー」
7.「斉藤さん」
8.「泣き顔100%」
9.「温かい手」
10.「Updraft」

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