山下智久の揺るぎない存在感 「Beautiful World」が飾ったアーティスト活動本格化の幕開け
2021年秋、アーティスト・山下智久がいよいよ本格的に始動した。
9月5日には自身初となるオンラインライブを開催、待望のYouTubeチャンネルを開設した。9月15日には「Beautiful World」を配信リリース。Apple Musicをはじめ主要プラットホームにて配信され、15日付のSpotifyバイラルチャートでは10位にランクインしている。なお同曲は、山下が出演する炭酸コスメブランド『HADA NATURE(肌ナチュール)』ヘアケアシリーズのCMタイアップ曲に決定。世間が、再び山下の歌声を耳にする。
“2つの世界”を描いたという「Beautiful World」
「美しい世界」とその対極にある「そうでは無い世界」、この2つの世界があるから、美しいと感じることが出来る。どちらの世界にも意味があって、それぞれに支え合いながら共存している、というテーマを表現したという「Beautiful World」(※1)。
“2つの世界”を知りつつも、タイトルを「Beautiful World」としていることに山下のメッセージを感じる。ぜひ、タイトルから想像する“自分なりの楽曲イメージ”を胸に、実際の音を聴いてみてほしい。多くの人が、想像していたものとは異なるサウンドに出会うのではないだろうか。けれど聴き終えたときには、同曲のタイトルが「Beautiful World」である意味を、それぞれが見出すだろう。そうした深みを持つ楽曲である。
「Beautiful World」の魅力は、ひとことで言えば中毒性。トラックは変則的だが、イントロから続く美しいリフがフックとなっており、耳なじみが良い。山下自身の声を幾重にも重ねたコーラスも、厚みを持ちつつ清涼。単純明快な“キャッチー”とは異なるが、聴き込むうちに知らず知らず口ずさんでしまうポップさを持つ。
ボーカル面で印象的だったのは、〈Beautiful〉〈Wonderful〉を繰り返すフレーズ。ファルセットでありながら力強く、それでいて軽やかな表現に、ボーカルの成長を感じる。「まだ言えないけれど」としてきた期間、音楽活動を表立って行ってこなかった期間にも、山下は進み続けてきたのだと分かる。
山下自らが手がけた歌詞にも注目したい。葛藤、希望、決意と、ワンコーラスのなかにストーリーが描かれている。〈混雑する電車〉〈雑踏〉と、現実的で身近な世界を綴っているのも山下らしく、リスナーの共感を呼ぶことだろう。英語混じりの歌詞のなか、〈好きなように〉というフレーズが明瞭だ。あるときはハッとさせられ、あるときは癒され、あるときは背中を押される。強く優しいメッセージを感じた。
公式YouTubeチャンネルには『TOMOHISA YAMASHITA First Online Live “Beautiful World”』収録のバックステージ映像が配信されている。山下自身も積極的に意見を出し、収録だからこそできる演出にこだわった。
世界に発信されるオンラインライブのステージとして、山下が選んだのは美しい日本庭園を持つ古い洋館。あいにくの雨に「どうしましょ」と、困ったような笑顔をカメラに見せつつも、「俺は濡れてもいいんだけど」と、天候のゆくえを真剣な眼差しで見つめながら呟く。結果、雨がやむことはなかったが、雨粒ひとつひとつが映える圧巻の映像美に「これが正解だったのだ」と思わされた。悪天候さえ演出に変えてしまう揺るぎない存在感と、アーティストとしての柔軟さ、芯の強さを改めて示した今回。軽く身体を揺らし音を感じる仕草、衣装を羽織る大きな背中には、変わらぬ頼もしさを感じた。