「Tokyo 7th シスターズ」メモリアルベストに濃縮されたアイドルたちの軌跡 多彩なユニット曲で味わう集大成&新章への期待

 「Tokyo 7th シスターズ」(通称、「ナナシス」)のこれまでの音楽のすべてをつめこんだメモリアルベストアルバム『Summer of t7s』が9月15日に発売された。今回は作品を振り返りながらこのアルバムを紹介していきたい。

 「ナナシス」は、2014年にDONUTS社が提供するスマホアプリゲームとして登場した。当時は「アイドルマスター」「ラブライブ!」といったアイドルコンテンツがすでに輝きを放っており、続く新興タイトルたちが天下を取ってやるという熱が界隈に渦巻いていた頃だ。2015年に1stライブを開催してからは日本武道館、幕張メッセといった大会場でのライブを重ねており、楽曲派からの評価も高い。「ナナシス」の音楽とライブがすごいらしい、と一度は聞いたことがある人も多いのではないだろうか。

 同作の作品としての新規性は、まずはメインの舞台となる西暦2034年・アイドル冬の時代という設定にある。“立体投影型ホログラムハンドデバイスコンピュータ”=“ホロコン”といった小道具が登場し、ライブにも投影技術を活用する様子はまさに近未来的。ゲームで主人公は“劇場型スタジオ777”(ナナスタ)の二代目支配人として、アイドルたちを育てていくことになる。

 メモリアルベストアルバム『Summer of t7s』には、2015年4月リリースの1stミニアルバム『t7s Re:Longing for summer』から2021年3月リリースの4thアルバム『IT’S A PERFECT BLUE』までの珠玉の楽曲を収録。収録曲の選考にあたっては、約100万票の投票が参考にされた。まさに支配人=ファンと一緒に作り上げたメモリアルベストと言えるだろう。

 DISC 1のチャプター1は本作を象徴するアイドルのひとり、春日部ハルが一枚の“CD”という古めかしいディスクメディアを見つけるミニドラマ「コレマデノナツ」から始まる。“支配人さん”がかつて手作りで制作したとおぼしきCDには、ナナスタと、彼女たちを取り巻くライバルたちの宝物のような音楽が詰まっていた。

【Tokyo 7th シスターズ】Memorial Best Album『Summer of t7s』Trailer

「Tokyo 7th シスターズ」における2つのレイヤー
【2034年〜「777☆SISTERS」】と【〜2032年「セブンスシスターズ」】

 「ナナシス」の音楽と『Summer of t7s』を紹介する上で最初に説明すべきなのは、本作には「777☆SISTERS」を中心とした“現在”と、「セブンスシスターズ」を中心とした“過去の時代”という2つのレイヤーが大きなベースとして存在することだろう。

 本作では支配人(プレイヤー)がアイドルたちを育てている2034年が基軸となる“現在”である。そして2034年を基点に過去と未来を縦横に行き来しながら、重層的にアイドルたちの物語と関係性を描いていく。公式サイトにあるイントロダクションには、“アイドルは終わった”“もう時代遅れ”といったネガティブなワードが並ぶが、その前提にはかつてシーンを席巻した伝説の国民的アイドル・セブンスシスターズの存在がある。セブンスシスターズは2032年に突如として引退したとされており、その巨大すぎる存在の喪失とともにアイドルブームは終焉したーーその結果としての今、2034年があるというわけだ。

 『Summer of t7s』のDISC 1に主に収録されているのは、プレイヤーが二代目支配人として手がける現世代(2034年)のアイドルたちを中心としたユニット群の楽曲だ。「ナナシス」の楽曲リリースは、一部の例外を除いてユニット単位で行われている。

 リリース当時はEDMのイメージを前面に出していた「ナナシス」だったが、新曲をリリースするたびに新たなジャンル、新たな音楽性を切り拓いていく。これを可能にしたのがユニット制で、各ユニットのイメージと紐づいた多彩な音楽がそれぞれに与えられている。DISC 1では各ユニットから厳選した楽曲たちが収録されており、そこからユニットイメージをつかむことができるだろう。

 なお、初期ユニットのWITCH NUMBER 4、SiSH、NI+CORA、サンボンリボンの4つのユニットが集まったのが777☆SISTERSで、作品全体のテーマソングになるような楽曲は777☆SISTERSが担当することが多い。ナナスタに所属するアイドル全員の総称は“ナナスタシスターズ”で、かつてのレジェンドアイドルユニットは“セブンスシスターズ”である。ちょっとわかりにくいかもしれないが、これはもうそういうものだと思って覚えてしまおう。

 DISC 1は、777☆SISTERSが歌うアニメ『Tokyo 7th シスターズ -僕らは青空になる-』主題歌である「Departures -あしたの歌-」と、ゲーム「Tokyo 7th シスターズ」のエピソード上の大きな区切りとなる『EPISODE 6.0 FINAL』主題歌の「Across the Rainbow」で締めくくられる。まだ何者でもなかったアイドルたちが個性豊かなユニットとして走り出し、それぞれがひとつの到達点にたどり着くまでを瑞々しく切り取った一枚だ。

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