藤井風の“与える力” 新曲「燃えよ」も披露、歌とピアノのみで日産スタジアムから発信した世界への癒し

 その後は1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』の収録曲を立て続けに歌っていった。日本のヒップホップから影響を受けたという「もうええわ」や、Nujabesの「Reflection Eternal」から着想を得たという「特にない」、Lizzoの「Truth Hurts」にインスピレーションされた「死ぬのがいいわ」など、参照する作品の幅広さとそれを自身の世界観に落とし込む手腕は、すでにずば抜けたものがある。そして、それに手拍子を挟んだり、ピアノから離れて雨の中を彷徨うようにしてアカペラで歌唱するなど、自在に楽曲を操るようにして弾き語るライブパフォーマンスのテクニックは、正直言葉が見つからないほど素晴らしい。

 一音一音表情を変える魔法のようなメロディ、それを即興でアレンジする柔軟な発想力、歌いながら変顔を織り交ぜる遊び心……藤井風の持つ非凡な才能と人懐っこいキャラクターが、歌とピアノだけのシンプルなステージングによって純度高く味わえたこの日。しかし、最後に披露された「何なんw」で、この公演に唯一もたらされた“雨”という天然の演出が生きてくるとは夢にも思わなかった。

〈雨の中一人行くあんた 心の中でささやくのよ そっちに行ってはダメと〉

 デビュー2年目にも関わらず、彼に教えられることは多い。このライブ映像に収められた悲しみの雨が、人々にとっての“恵みの雨”になることを願っている。

Fujii Kaze "Free" Live 2021 at NISSAN stadium
『燃えよ』Fujii Kaze "Free" Live 2021 Documentary

関連記事