宇多田ヒカルの歌声と似ているeillとは? 月9ドラマ『ナイト・ドクター』の楽曲から考察してみた

 しかし、eillにしかない魅力や個性があることは間違いない。だからこそ「似ている」と感じた人でもeillの歌声を気に入っているのだ。そもそも宇多田はハスキーで色気のある声質、eillは透き通っていて爽やかな声質という違いがある。また自身の楽曲「踊らせないで」のBメロでは語尾を力強く歌い、K-POPに頻繁に見られる歌唱をしている。これは宇多田ヒカルには見られない特徴である。おそらく自身が影響を受けた音楽を自分のものとして昇華し取り入れているのだろう。「片っぽ」のサビでの感情を吐き出すような、エモーショナルな歌唱も印象的である。eillは感情をぶつけて心を震わせる表現も得意としている。一部の歌唱法に似ている部分があるとしても、両者が持っている本質は違うものだ。それぞれに違った魅力と個性がある。

eill | 踊らせないで (Official Music Video)
eill | 片っぽ (Official Music Video)

 これまでeillが発表してきた楽曲を聴いていくと、実に様々な音楽性の楽曲に出会うことができる。R&Bやソウルミュージックを軸にしつつ、そこにポップスを組み合わせているような音楽。メロディには口ずさみたくなるようなキャッチーさがある。例えば「ここで息をして」はホーンの演奏が印象的で、演奏の終盤では歪んだエレキギターの音がクールに楽曲を締めてくれるソウルナンバー。「片っぽ」や「2025」のような胸に沁みるバラードもあるし、「FAKE LOVE/」のようなアップテンポのダンスナンバーもある。聴いているうちに、気づけばeillの音楽の深い魅力にハマってしまう。「宇多田ヒカルと歌声が似ている」ということがeillを知るきっかけになったとしても、聴いているうちに「似ている」のではなく「共通点がある」だけで別物であると気づくはずだ。

eill | ここで息をして 【TVアニメ『東京リベンジャーズ』 エンディング主題歌】
eill | FAKE LOVE/ (Official Music Video)

 eillが実力と才能を兼ね備えているアーティストであることが『ナイト・ドクター』をきっかけにより広いリスナーへと伝わっていく予感がする。その才能を開花させ、多くの人を感動させる素晴らしいアーティストへと成長するのが今から楽しみだ。

関連記事