カッコつけないで、ありのままでいいーーXY GENEが語る、『NERD』と名付けたアルバム完成までの大きな変化

XY GENEが語る、大きな変化

ネガティブな時期も音楽に助けられている

XY GENE(写真=西村満)
ーー今回はDynaさんをメインプロデューサーに迎えていますが、Dynaさんとの出会いを教えてください。

XY GENE:Dynaに出会ったのは、彼がまだ世の中に音楽を出してない時期。『Room404』の「Callin’」にフィーチャリングで参加してもらったTioくんが、神戸にヤバい奴らがいるんだよってego apartmentのデモ音源を送ってくれたんです。それにすごい喰らっちゃって、会いたいと思って。それで今年の年明けに自分ん家に呼んだんです。

ーーXY GENEさんもトラックメイクができますが、二人の役割分担はどんな感じだったんですか?

XY GENE:メロディメイクは完全に自分です。それ以外は、ずっとお互い横に座ってる感じ。自分がトラックを作ってるときはDynaが隣に座っていて、Dynaが作ってるときは自分が横で見てるっていう。たとえば、Dynaが作ったコード進行やドラムの打ち込み、ベースラインに対して、「ここはこういうふうにしない?」って自分がアイデアを出したりとか。あと、Dynaはバンドをやってるけど、そこではできないサウンドをやりたいと言っていたので、そこも考えながら作っていきました。

ーーもうひとりの外部プロデューサー、DinoJr.さんとの出会いは?

XY GENE:もともとエンジニアの前田さんが携わっているアーティストで、前田さんが引き合わせてくれたんです。歳は10個離れてるんですけど、気軽に遊べるお兄ちゃんっていう感じ。Dinoくんは「U Feel」でギターを弾いていたり、作品に演奏で参加してもらっていたので、いつか一緒に曲を作りたいねと言っていて、それが実現したかたちです。

XY GENE(写真=西村満)

ーー今回、外部プロデューサーを多く迎えた理由は?

XY GENE:自分のアイデアが固まっちゃったときの誰かの意見ってすごく大切にしてるんです。もともと人と曲を作るのが好きだし、人とセッションしながら作るっていうところに音楽の楽しみを感じているので。今回、Dynaとの曲が多くなったのは、Dynaとの音を好きになったっていうのが一番の理由ですね。

ーー先行シングルの「Dip」は、どんなイメージで作ったんですか?

XY GENE:Dynaも自分のことをオタクとか引きこもりニートとか言っていて。自分たちは世間一般から見たらオタクに入るかもしれないけど、音楽をやっているときはイカしているぞっていうことを歌にしたかったんです。だから、ちょっと攻撃的な曲になってる。〈Imageとは裏腹 イカれてるんだ〉っていう歌詞もあって、こういう見た目だとヤンチャな感じには見られないだろうけど、音楽をかけた瞬間にスイッチが入るんだっていうテーマで書きました。

ーー「Dip」というタイトルは、どこから付けたんですか?

XY GENE:Dipって浸漬っていう意味があるんです。フックの前に〈上がる気の中でsweep sweep〉〈邪魔するネガ捨てて sweep sweep sweep〉っていう歌詞があるんですけど、邪念とかバッドマインドは掃き捨てて音楽に浸ろうみたいなことを表したくて「Dip」にしました。

XY GENE - Dip prod. Dyna(ego apartment) 【Official Music Video】

ーー収録曲の中で特に思い入れの強い曲は?

XY GENE:「I’m here」はDynaのために書きました。これはDynaから先にトラックだけもらっていたんですけど、そのあと彼が体調不良で入院しちゃって。自分は2020年はかなり落ちてた時期があって、そこでいろいろな気付きがあったから、Dynaにすごく共感できたし、Dynaを慰めたくて書いたんです。今、彼が感じている辛さは計り知れないものだけど、彼を助けたいという一心で作りました。僕はここにいるよって伝えたかったんです。

ーーご自身にはネガティブな時期があったんですね。

XY GENE:はい。音楽に対する意欲がなくなっちゃうというか。曲も書けないし、ボーッとしちゃうっていう。もともとメンタルに波があって、それがちょうど去年、重なっちゃって。

ーーその状況をどのように抜け出したんですか?

XY GENE:毎回、音楽に助けられてます。今回もそう。落ちて、落ちて、落ちきったときに「やっぱり音楽っていい」っていう気付きがあるんです。これまであまり、自分の曲を聴いてくれる人がいることを感じたことがなかったんですけど、「聴いてくれてる人がいるんだ」と気づいて。その人たちのために曲を作りたいし、自分を慰めるためにも曲を作らなきゃいけない。「I’m here」は自分のために歌ってるところもあるんです。

ーーふと光に気づく感じなんですか?

XY GENE:そう。急になんですよね。「あ、作れる」となったらDAWに向かってワーッと出てくる。

ーー溜まってるんでしょうね、アイデアが。

XY GENE:だから、落ちるのも大事なのかなと思っていて。その「落ちてる」っていう感情がなかったら、気付きすらないじゃないですか。それを経験したからこそ、今回のアルバムは作れたっていうところがあって。2020年は心境の変化がすごかったので、逆に言いたいことも溜まってたんだと思います。

ーーしかも、それを経たからDynaさんと音楽以外のところでも深く繋がれた。

XY GENE:そうなんです。「I’m here」を書いたあと、Dynaにこっちに来てもらったんですけど、お互いの生い立ちとか境遇とか、いろいろ深く話したら、さらに心が繋がって。今ってデータのやりとりで簡単に曲を完成させることができるけど、心のシンクロがないと良い音楽って作れないなと思ってるんです。Dynaをこっちに呼んでみるまでわからなかったことだけど、話したらガチッと繋がれた。そういうマッチングがあったから、今回のアルバムで、ここまで良い曲ができたんだろうなと思ってます。

ーー「Into The Galaxy」には韓国のラッパー、J.B.POEが参加していますが、今回のアルバムでは韓国語の歌詞が増えましたね。

XY GENE:単純に韓国語の響きが好きで。1stアルバムではそんなに入れようと思ってなかったんですけど、韓国語は喋れるので使っていきたいと思っていて。今、自分が使ってる言語は英語と日本語と韓国語なんです。だったら、全部の言語を使えば良いし、言語は違っても歌詞としてのストーリーは崩していない。ちゃんと繋がるリリックになってるんです。あと、韓国語だと自分が言いたいことを表現しやすいっていうのもありますね。

ーーどういう意味ですか?

XY GENE:たとえば「君を愛してる」って日本語でリリックにするとクサイけど、韓国語で言うとそれを感じなくて。「I’m here」でも、〈아직도 모른 살아있는 이유〉っていう、生きてる理由がわからないっていう意味の韓国語を入れてるんですけど、これを日本語で言うと直接的すぎる。でも、韓国の曲だとあり得る歌詞だから、韓国語で歌うと自然なんですよね。だから言いたいことがあるけど日本語だとクサくなっちゃう、じゃあ韓国語にしようって感じで、日本語で書いていても、あとから韓国語に変えることもあるんです。

ーー今年5月1日で、二十歳になりましたが、何か心境の変化はありますか?

XY GENE:特に何も変わらないです。年齢関係なしに良い音楽が作れたらいいなと常に思ってます。

ーー今年の5月1日はどう過ごしてたんですか?

XY GENE:普通に誕生日ケーキを食べてました(笑)。大人になったんだなっていう実感はちょっとはあるんですけど、Dinoくんだって30歳でめちゃめちゃカッコイイ音楽を作れているし、実際、自分のアルバムに携わってくれてる人は年齢なんて関係なくて。音楽はそういうものを超えて繋がれるから楽しいと思っているから。

ーーでは、どんな20代にしていきたいですか?

XY GENE:逆に変わらずにこのままいきたいです。大人になっても子供の心を持ち続けていたい。ダンスの師匠で仲宗根梨乃さんっていう方がいるんですけど、梨乃さんが自分のことをよく見てくれていて、「一生、子供でいろ」っていつも言われるんです。子供っぽさというか、子供の心はクリエイティビティにすごく大事だって。なぜかと言ったら、表現者は子供にも夢を与えることが大事だからって。それをするためには自分が若い心を持っていないとダメだって。なので、これから年齢を重ねていっても、自分はこのままでいたい。一生、子供でいようと思ってます(笑)。

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