カッコつけないで、ありのままでいいーーXY GENEが語る、『NERD』と名付けたアルバム完成までの大きな変化

XY GENEが語る、大きな変化

 昨年2月にアルバム『Daydreaming』を発表し、間髪入れず6曲入りのEP『Room404』を7月にリリースしたXY GENEが、まとまった作品としては、およそ1年ぶりとなる2ndアルバム『NERD』を完成させた。前2作から音楽性が変化し、実験的なオルナタティブ志向を強めた本作は、2名の外部プロデューサーの起用が大きなポイント。ひとりは新進気鋭の多国籍バンド、ego apartmentで打ち込みとベースを担当するDyna。もうひとりは、NEO SOULとポップスをハイブリッドさせるシンガーソングライターのDinoJr.。特にDynaは大半の楽曲に携わっており、全体の作風を決定づけている。最近は眼鏡をかけるようになり、ルックスも以前とは変わったXY GENEに、この1年でどのような変化があったのか。今回のアルバムが生まれた経緯と、その背景にあったメンタル事情を明かしてもらった。(猪又孝)

“音楽オタク”な自分でいい

XY GENE(写真=西村満)

ーー前作『Daydreaming』から1年5カ月ぶりのアルバムとなりますが、制作はいつ頃からスタートしたんですか?

XY GENE:今年1月くらいからデモを作り始めていたんですけど、ほとんどを大詰めしたのは4月ですね。

ーー『Daydreaming』や、その後のEP『Room404』とは、サウンドが大きく変わりました。制作に向き合う姿勢や、めざす音楽性に変化があったんでしょうか?

XY GENE:音に対するこだわりは増えました。今回は特にトラックにこだわっていて。ego apartmentのDynaにトラックを作ってもらったんですけど、Dynaに1カ月、自分の自宅に泊まってもらって制作したんです。あと、『Daydreaming』のときはエモーショナルな感じが多かったんですけど、今回はそういう楽曲もありつつ、「Dip」のような攻撃的な曲もある。自分の中で、人間として変わった部分が自然と出たのかなと思います。

ーーもともとダンサブルな要素が持ち味ですが、今回はそれが減退し、全体的にアンビエントな雰囲気があります。

XY GENE:今回はオルタナティブなことがやりたくて。自分のことはラッパーともシンガーとも思っていなくて、表現者というふうに思ってるんです。ダンサブルな要素は「Dip」とか「Into The Galaxy」とかにあるんですけど、最近インディーズなサウンドをよく聴くようになって、他との違いを出していくためには音で変わったことをしようという気持ちが強くなってきた。それが大きな変化ですね。

ーー“音で変わったこと”というのは?

XY GENE:展開が変だったり、BPMが途中で変わったり。フックがあってヴァースがあってフックがあるという普通の構成じゃなく、アートとして音楽を作りたくて、それでDynaに力を貸してもらった感じです。

ーー最近、どんなアーティストをよく聴いているんですか?

XY GENE:53 Thievesというヨーロッパのエレクトロニカユニットのサウンドが好きです。ビリー・アイリッシュとかにも影響を受けるんですけど、彼女も変わったことをやってるじゃないですか。ああいう独創的なアートを今回目指したんです。枠にはまっていない音楽を作りたかったんですよね。

ーー音像も奥行きや立体感など、空間を意識したものになっていますね。

XY GENE:その辺は意識していて、ミキシングにもこだわりました。ミキシングエンジニアさんにもそれぞれ癖というか好みがあるんですけど、いつもお願いしている前田さん(Reinols Maeda)のミックスが今回のアルバムでは特にすごくマッチして。たとえば1曲目の「H.A.F.」には水の音を入れてるんですけど、そういう効果音もサウンドのひとつとしてしっかり聞かせることができた。今回は「音」として楽しめる作品にしたかったし、出したい音が出せて満足できました。

XY GENE(写真=西村満)

ーー歌唱法や発声法も前作から変わった印象を受けました。以前は声にキラキラした感じがあったけど、今回は喋ってるような低いトーンだったり、気怠い感じの歌い方も見せています。

XY GENE:歌い方を変えたいなと思って、最近、ボーカルトレーニングに行ってるんです。歌ってブレスの仕方や息の乗せ具合がすごく大事だと思っていて。バラードだと息が多めでスーッとした声で歌えば合うんだけど、トラックがガンガン鳴ってるのにそれで歌うと声が負けちゃう。それが悩みだったんです。トラックの音も出したいし、声も負けたくないっていう。

ーーそれって声のボリュームの問題じゃないんですよね。

XY GENE:そうなんです。芯のある声っていうんですかね。太めな声。

ーーもともと甘い声だと思いますが、今回は喋ってるような声も使っているからか色気も出てきたように思います。

XY GENE:嬉しいです。もともと甘い声を持っていて、それを活かして頑張ってたんですけど、もうひとつ超えたいと感じたときに自分の声の足りなさに気づいて。この2年でいろいろ成長して、リリックの言葉のチョイスも変わってきたし、歌い方も変わってきたし、常に自分が変わっていってることを実感するんです。このアルバム自体、20歳の今の記録として残しておきたくて。メモ帳に絵を描いたみたいな感覚で作ったところもありますね。

ーーそんな作品に『NERD』と名付けた理由を教えてください。

XY GENE:NERDというのはオタクという意味で。最近、日常的に眼鏡をかけるようになったんです。昔は、ブリンブリンにアクセサリーをつけて、カッコよくしてなきゃいけない……それがカッコイイと思ってたんです。クラブに行くときもコンタクトにして、ちょっとカッコつけて行かなきゃとか。でも、なんか無理して頑張ってたなと思って。今は、カッコつけないで、ありのままでいようと。自分は音楽がめっちゃ好きな音楽オタクなんですよ。でも、ただのオタクでいいんだって気づけたから、NERDというタイトルにしたんです。

ーーそれに気づいたのは、いつ頃の話?

XY GENE:去年7月に『Room404』を出したあと、今年1月の「U feel」まで、半年、曲を出してなかったんです。コロナで部屋にいることが増えて、考える時間が多くなっていって、「U feel」を出すまでの半年で考えが変わったところがありますね。

ーー今後は眼鏡キャラでいくんですか?

XY GENE:眼鏡を掛けてても別にカッコ悪くないんだよっていうことを示したいというか。今は自分の肯定感をアップするために掛けてるだけで、ライブになったら外す場合もあるかもしれないんですけど、眼鏡を掛けてることをカッコ悪いと思っていた自分がカッコ悪かったっていう自分への反逆心というか。だからあえて眼鏡を掛けてやろうっていう感じなんです。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる