草なぎ剛、大きな実りとなった一年 吉沢亮、吉田羊ら共演者が明かした役者としての強み
草なぎ剛が、7月9日に47歳の誕生日を迎えた。その翌日となる7月10日には、『土曜スタジオパーク』(NHK総合)に生出演し、番組冒頭から「27歳になりました、どてーっ(コケる仕草)」と笑いを誘うなど、相変わらずな愛されっぷりを披露した。いつも朗らかで自然体。だが、いざとなったら確かな実力を発揮して、私たちを感動させてくれる。そんな草なぎの魅力を再確認できる1時間となった。
番組内では、幾度となく「リアクション」や「反応」という言葉が印象的に響いた。現在、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)で徳川慶喜役を熱演している草なぎ。そこで、平岡円四郎役として共演した堤真一は、ニカッと人懐っこい笑顔を見せたときに出る草なぎのほんわかと安心したような表情を絶賛する。
そのリアクションが楽しくて、堤はカメラに背中を向けて顔の見えないシーンでは、草なぎに変顔を見せるというちょっとした意地悪もしていたと明かす。草なぎは、そんな堤を「(自然体な笑顔を)計算で引き出してくれているのか、普通にふざけているのかわからなくて、ドキドキした」と笑うのだった。
また、バラエティ番組で20年以上の付き合いを誇るユースケ・サンタマリアも、草なぎの「ムチャ振りしても絶対に(何か)やるんですよ。どんなに思い浮かんでなくても」という姿勢が好きだと語る。もちろん、その話が出れば「いつものあのものまねやってよ」と流れでVTR越しにムチャ振り。
すると、草なぎは「ちゃんこ食べられないよ〜」と“ちゃんこをいっぱい食べる人”のものまねをしてみせる。MCを務めていた近藤春菜(ハリセンボン)からはすかさず「誰? 知らないよ!」とツッコみが。すると当の草なぎも「俺も知らないけどね」とまさかの答え。スタジオは笑いに包まれた。
さらに、かつて草なぎを「あいつは天才だから」と絶賛した演出家のつかこうへいも、そのリアクションに魅了された1人だという。舞台『蒲田行進曲』で共演し、草なぎから「戦友」と言われる小西真奈美から「フレッシュな反応が楽しかったみたいで」と、つかによって日々セリフや演出が変わるムチャ振りが行なわれていたことを証言。
草なぎには内緒で指示された変更点を、申し訳ないと思いながらも演じていた小西だが、草なぎは実に楽しんでいるように見えたという。「何を出してもフレッシュに受け止めてくださる懐の深さを感じていました」と続けた。
そんな反応の良さを、NHK宮城発地域ドラマ『ペペロンチーノ』(NHK BSプレミアム、NHK BS4K)で共演した吉田羊も、「役との境目がない」と分析。「役のために自分の体を差し出している感じがしました。だからセリフじゃなくて言葉だし、演技じゃなくて自然。この人どこかで生きているんだろうなと思わせる実存感がある」とも。
たしかに、草なぎの演技を見ていると「草なぎ剛がこの時代、この役として生きていたら……」という、if(=もしも)の人生を見ているような感覚になる。台本として、文字で描かれた人を作り上げるのではなく、草なぎがそこに生きた姿を見ているような。
だからこそ、『青天を衝け』を見ている私たちは、徳川慶喜がやがて最後に将軍になることを知っているにも関わらず、草なぎが生きる慶喜は“このまま将軍にはならないかもしれない”という気持ちが湧いてきたのかもしれない。
慶喜の父、徳川斉昭として共演した竹中直人は、斉昭の死後、慶喜が力強く「快なり!」と言い放った姿に「あれは驚きました。まさかあそこでくると思わなかった。いろんな思いが駆け巡ります。慶喜と言っていいのか、つよぽんって言っていいのか。とてもエネルギッシュで、今までに見たことのない慶喜だったな」と振り返ったのも、的確に言い得たコメントだった。
あの表情と声色で驚かせたのは、竹中の予想を超えた草なぎなのか、それとも斉昭の予想を超えた慶喜なのか。最後に竹中が「あなたの慶喜を見守っています」という言葉は、視聴者の予想を超える役者・草なぎ剛を見たいという気持ちの表れのようにも感じられる。
そして、『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一を演じる吉沢亮も、草なぎのオーラが「慶喜の厚みにリンクしている」と話す。撮影の合間にはほとんど話すことがないという2人だが、「役の上で会話をしているから、誠実さが感じられる」と話した草なぎの言葉もまた興味深い。草なぎ剛と吉沢亮ではなく、慶喜と栄一という人生で交わった2人ならではのやりとりが、今後も楽しみだ。