声優 平川大輔、『鬼滅の刃』などで見せる演技という名の表現術 経験によって培われた確かな実力を紐解く

平川大輔『ヒカリノトビラ』(DVD付)

 声優が活躍するフィールドはアニメ作品だけに留まらない。洋画の吹き替え、ボイスドラマやシチュエーションCDでの演技、ゲーム作品、テレビやCMでのナレーション、公共機関のアナウンス、ラジオのパーソナリティ、さらに音楽を含めたアーティスト活動も含まれてくるだろう。

 今回スポットライトを当てるのは、アニメ作品だけでなく、洋画吹き替えやナレーション役(ボイスオーバー)も数々こなしてきた声優の平川大輔だ。平川が演じてきたアニメキャラクターは数あれど、その実力はアニメ作品にだけ縛られることのない、キャリアと経験によって培われてきたものである。

 平川が演じてきた役でもっとも著名な役といえば何が挙がるだろうか。『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』(TOKYO MXほか)の花京院典明、『Free!』(TOKYO MXほか)の竜ヶ崎怜を挙げる方が多くいるだろうか。では、彼のキャリアを作り上げた重要な役・俳優といえば? と問いかけると、一人の人物が浮かび上がってくる。

 それがイギリス出身の俳優、オーランド・ブルームだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで知られる彼の出演作品を、平川はほぼ専属的に担当してきた。特にこの2作品は、00年代初頭から現在にかけ、外伝的作品を含めて大ヒットを飛ばし続けたこともあり、吹き替えを通して平川のファンになった方も多いだろう。

 だが、オーランド・ブルームが両作品で演じた役どころはかなり違う。『ロード・オブ・ザ・リング』で演じたレゴラスは、闇の森のエルフ王の王子であり、劇中のバトルシーンで何度となく登場しては敵を葬り去っていく。冷静な性格ながらも仲間を案じる優しさも見せる、眉目秀麗、金髪碧眼、若さ溢れるオーランド・ブルームの演技と容姿も相まって大きな注目を集めたのだ。2010年代には外伝となる『ホビット』にも出演している。

 さらに平川が演じた『パイレーツ・オブ・カリビアン』のウィル・ターナーは、エリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)との身分違いの恋や自身の生い立ちなどに苦しみながら、ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)の乱暴な生き方からいくつもの学びを得て、彼なりの答えを見出していく準主人公的な存在だ。好青年な一面を見せていたウィルが、ジャックからの影響もあってかどんどんワイルドな風貌と口ぶりになっていく変化は、まさに成長として捉えることもできる。

 演者一人ひとり、異なる呼吸やタイミングを見計らいながら吹き替えをこなすのが洋画での演技、それはアニメ作品の演技とは一味違った難しさがある。長期シリーズによって変化していくキャラクターのパーソナリティを捉えながら、俳優本人の呼吸と演技、それらの変化をも繊細かつ敏感に見極めることも重要になってくる。オーランドだけに留まらず、平川が20年近くに渡って多くの洋画吹き替えに参加してきたことは、見過ごしてはいけない経験とキャリアではないかと思う。

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