宮本浩次、新たな絶頂期に放つエネルギッシュな躍動感 『sha・la・la・la』に詰まった“歌い手としての夢と生き様”
2021年5月5日、『JAPAN JAM 2021』の最終日、メインステージのヘッドライナーとして出演した宮本浩次を観た。「おじさん、嬉しくて気が狂いそうです、ようこそ!」という一言でライブを始めた宮本、控えめに言って絶好調だった。久しぶりにステージで歌える喜び、お客さんの前に立ったという興奮、そしてバンドメンバーとの阿吽の呼吸。
ソロアルバムの楽曲はもちろん、『ROMANCE』からのカバー曲にエレファントカシマシ「悲しみの果て」や「今宵の月のように」までも含めた文字通り総括的なセットリスト。「お尻出してプー!」と言いながらステージを歩き回って髪をかきむしり、マイクに向かって叫ぶ彼の姿は、観ているこっちがなんだか嬉しくなるような感じだった。アーティストとして新たな絶頂期を迎えている宮本浩次、そのパワーとテンションとなんでもありの自由さが、久々に野外フェスの空気を味わえたという高揚と相まってとても肯定的に響いていた。
そうなのである。宮本浩次、絶好調なのだ。ソロプロジェクトのスタート以来ずっとそうじゃないかと言われればその通りなのだが、絶好調に拍車がかかっている。なぜか。その理由を考えるヒントとなるのが、カバーアルバム『ROMANCE』以来のCDリリースとなる6月16日発売のニューシングル『sha・la・la・la』だ。ちなみに今作の初回限定盤には上述の『JAPAN JAM 2021』でのライブ音源が収録されたDISC2が付くので、ぜひ聴いて彼の絶好調ぶりを感じてほしいのだが、それを差し置いても、素晴らしいシングルである。
収録されているのはドラマ『桜の塔』(テレビ朝日系)主題歌となっている表題曲「sha・la・la・la」に加え、NHK『みんなのうた』でオンエアされている「passion」、そして十三代目市川團十郎白猿の襲名記念特別企画として3月に放送されたドラマ『桶狭間~織田信長 覇王の誕生~』主題歌として同月に配信リリースされた「shining」の全3曲。そのタイアップのバリエーションの広さが物語る通り、まったく違うタイプの3曲だ。
しかし、この3曲からは、どうしようもなく共通するたったひとつのムードを感じる。それは一言でいえば「とてつもなく生命的」であるということだ。生活とか音楽とかそういうレベルを遥かに通り越して、生きてきたということ、これからも生きるということ、何も諦めていないし腐ってもいないし何ならここから始まるんだぜということ、そこに対する絶対的な肯定と情熱が、このシングルを支配している。もちろん宮本浩次は常に燃えてきたわけだが、瞳の中にメラメラと炎を燃やすのとも、拳を握ってファイティングポーズを取るというのとも違う、もっとあっけらかんとしたポジティビティが溢れている。そこから放たれる光は、まるで世界を明るく照らし出す太陽のようだ。
「sha・la・la・la」はザクザクとしたギターとピアノのリフから始まるロックンロールナンバー。フォーキーな宮本節のメロディと、徐々にホーンも加わってスケール大きく展開していくアレンジが開放的な気分を盛り上げる。その歌い出しはこうだ。〈遠い星空に誓った幼き日/俺は絶対勝つってよ〉。その無邪気な自分自身への信頼感、息をするように当たり前に夢を見る肯定感が、この楽曲を一層でっかくて強いものにしている。〈夢は/sha・la・la・la sha・la・la・la sha・la・la・la you〉というサビの、もはや言葉の意味を必要としない開けぶりが、この曲のなんたるかを象徴している。宮本にとって“夢”は語るものですらないというか、〈sha・la・la・la〉と歌うことそれ自体が彼にとっての夢そのものなのだ。ライブで観客が声を出すことが許されるようになった暁には、シンガロング必至となるだろうこのフレーズは、これまで宮本が書いてきた歌詞の中でも最高に普遍的なものだと思う。