鷲尾伶菜、ソロプロジェクト「伶」の甘いウィスパーボイス カバー動画&新曲での“凜とした響き”

伶「キミとならいいよ。」

 「キミとならいいよ。」は、SIRUPや向井太一などの楽曲を手掛けるプロデューサーChocoholicと、NEWS ZEROのBGMなど数々の楽曲提供やプロデュースを手掛けるサウンドプロデューサー・イケガミキヨシのタッグによる書き下ろし。生楽器の温かみや甘さを強調したチルでメロウなR&Bサウンドに伶の歌声が溶け合う中で、“落ちていく”とも“昇りつめていく”ともとれるような深い愛が歌われる。詞はどこまでも鮮烈で官能的な恋愛関係を描写しているが、メロディを繊細になぞる伶の甘く儚い歌声はやはり凛とした響きがあり、それによって全体に気品のようなものが感じられるのが印象的だ。

 また同曲においては、イラストレーター・Rest.による示唆的なジャケットイラストにも言及しておきたい。というのも、そこに描かれた指先を重ねる二人の後ろ姿は絶妙に“男女”には見えない容姿になっているのだ。見た目だけで性別を判断しようとする感覚自体、時代錯誤と言えなくもないが、初めに筆者がこのジャケットと楽曲を合わせて鑑賞したときに連想したのは、女性同士の恋愛を描いた小説『生のみ生のままで』(綿矢りさ著)であった。この小説ではそれぞれ恋人のいる女性2人が出会い、それまでに味わったことのない強烈な感情によって惹かれ合っていく様子が官能的に描写されているのだが、伶の「キミとならいいよ。」が描こうとしているのもこのような、生身だけで強く惹かれ合う関係である。この類似性に答えはないが、少なくともこのジャケットイラストは“関係”の解釈を大きく広げる効果を生んでいる。等身大の恋愛について歌い共感を呼んできたシンガーである伶の作品として、粋な計らいと言えよう。

 なお、伶は7月にBillboard Live OSAKAとBillboard Live YOKOHAMA『rei "the first" Billboard LIVE 2021』を開催することが決定している。公式YouTubeでのカバーや、この新曲「キミとならいいよ。」を聴く限り、ソロシンガーとなって初のライブステージが“人の温もり”を感じられるような、極上の時間となることは想像に難くないだろう。

 とはいえ、誰しもが気軽にライブ会場へ足を運べるようになるには現状まだまだ程遠い今の世の中だが、まずは心を休めたいと思ったひとときに、この伶の歌声と心地良いチルサウンドに耳を傾けてみるのもいいのではないだろうか。

※1:https://realsound.jp/2021/03/post-728429.html

■日高 愛
1989年生まれの会社員。

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