マキシマム ザ ホルモン、HYDE、THE YELLOW MONKEY、あんさんぶるスターズ!……歓声NGを逆手にとった“ライブ現場の今”

 HYDEはソロ活動20周年の幕開けとなるツアー『HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE』で、ボイスレコーダーの持ち込みを可能にした。あらかじめ歓声や楽器の音、伝えたいメッセージなどを録音し、ライブ中にボイスレコーダーから流すことができるのだ。声を出せない代わりにファンも自ら自由な形で熱気や想いを表現できる。MUCCと同様にコロナ禍で声を出せないことを逆手に取って、ステージと客席がより深いコミュニケーションが取れる仕掛けを作った。

 あんさんぶるスターズ!の行った携帯電話を活用した歓声システム「Ensemble Shaker」も新しいアイデアだ。これは携帯電話から専用URLにアクセスし、記載された指示にしたがってライブ中に携帯電話を左右に振ると、それが歓声となって会場のスピーカーから音声が流れるという仕組みだ。携帯電話を振った回数や人数が集計されて歓声になるので、ゲーム要素も取り入れている。新しい観客参加型ライブを作り上げた画期的な発明だ。

 THE YELLOW MONKEYも、ファンの歓声や歌声を会場のスピーカーから流す演出を行っていた。カラオケDAM「DAM★とも」や音楽コラボSNS「nana」もしくは公式ファンクラブの電話投稿で事前にファンの歓声や歌声を集め、それを曲によってスピーカーから流すという演出だ。「バラ色の日々」「JAM」など、今までならファンも会場で歌っていた楽曲で歌声が集められ、ライブ当日はスピーカーからその歌声が流れた。それによってコロナ禍以前のライブと同じ空気を作り出していた。特に『THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL-』東京ドーム公演で演奏された「JAM」でスピーカーから流れるファンの歌声と、それに合わせて腕を上げたりタオルを掲げるファンの姿は感動的だった。

 配信ライブでもファンが参加する仕組みを作り、有観客ライブと同じような気持ちで観れる仕掛けを作っているパターンもある。乃木坂46や日向坂46など坂道グループの配信ライブでは、事前にファンから声援やコールを録音したデータを集め、パフォーマンス中に流していた。それによって有観客ライブに参加しているような擬似体験ができるのだ。

 運営は徹底的な感染症対策を行い、参加者もルールに従うことで、リスクを減らしてライブを開催できている状況である。様々な制限がある中でも新しい楽しみ方を工夫して提供してくれるアーティストがたくさんいる。ライブエンタメ業界にとって今は厳しい状況ではあるが、新しい楽しみ方が生まれたという部分では前進していると言える。コロナ禍が収まった時、楽しみ方の幅が広がった素晴らしいライブが、今以上に観れる予感がする。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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