Stray Kidsが纏う“次世代K-POP代表グループ”としての風格 グループ構成などから紐解く、唯一無二の独自性とは?
絶えず新たなグループが生まれ続け、ひしめき合うK-POPボーイズグループ。その中で、人気の勢い、急上昇ぶりではまさにトップというに値するグループがStray Kidsではないだろうか。
2021年4月には、JAPAN 1st Single『TOP -Japanese ver.-』が日本レコード協会発表の2021年3月度「ゴールドディスク認定作品」にてゴールド認定を獲得。また、オリコン週間ランキングによれば、昨年6月にリリースされた際には海外男性アーティストによる1stシングルの初登場1位として3年8カ月ぶり、史上4組目という快挙も成し遂げている。累計出荷枚数は10万枚以上を記録しており、ゴールド認定を得るとともにその人気度の高さを証明した。
また、現在放送中の番組『KINGDOM』でもStray Kidsのとどまることのない勢いを知ることができる。数値としては、グローバルファン投票で3連続1位を獲得し続けた、というのがわかりやすい実力と人気の表れではないだろうか。Stray Kidsは動画のアクセス数でも1位に選ばれており、国内外のファンからの応援も感じることができる。これらの実績から、Stray Kidsは「次世代K-POP代表グループ」としての風格をすでに着実なものにし始めている。ここまで人々を魅了するStray Kidsの独自性、そしてその中毒性の理由にいま一度迫ってみたい。
まずは、Stray Kidsの独特なグループ構成。所属事務所の意向でメンバーが決定されるグループがほとんどの中、Stray Kidsはリーダーのバンチャンが中心となってメンバーを選出。グループ名も自ら命名しグループを立ち上げるなど、成り立ちから普遍的なものではない。
Stray Kidsは3RACHA、DANCE RACHA、VOCAL RACHAと呼ばれる3つのグループに分けられている。“スリーラチャ”と読むこのグループ構成は、タイのチリソースであるスリラチャソースが由来とされているそうだが、もう一つ“RACHA”にはスペイン語で突風という意味もある。それにならうようにダンス、ボーカルチームもそれぞれこうした名前がつけられたという。
そんな名前のとおり、突風のような人の目を引く楽曲を作り、セルフプロデュースを行っているのが3RACHA。リーダーであるバンチャン、そしてチャンビン、ハンの3人が制作を担っており、彼らはStray Kids結成前からミックステープをリリースするなど、その相性の良さと独創性を光らせていた。長年の相性、そして互いへの理解とチームワークでStray Kidsによる“スキズらしい”音楽は作られているのだ。
このように、メンバー自らが制作に携わる編成を取ったグループは他にも見られるが、それぞれで目立つのは、やはりそのグループの強みを活かした楽曲ではないだろうか。自分たちの状況、心情、パフォーマンス性に合わせて曲を作り出していく。そうすることで、曲を通して自分たち自身のことを表現でき、何より受け取る側も、曲のテイストは違えど共通性を感じ取れる。“グループの強み”とは、その積み重ねによって出来上がってくるものなのだろう。
さらに、彼らのクリエイティブ性は「Two Kids Song」でも知ることができる。Stray KidsのオフィシャルYouTubeで公開されているこのコンテンツ。リーダーのバンチャンが準備したトラックに、2人ずつペアでメロディを付け楽曲を完成させるというもので、そのビハインドとともに映像が公開されている。このビハインドではメンバーたちが制作を楽しむ姿が印象的だが、出来上がった楽曲の完成度はとにかく高い。こうしたコンテンツを上手くものにできるのも、メンバー個々の能力の高さゆえである。
そんな3RACHAの1人であるハンがグループのオリジナル企画『SKZ-RECORD』で発表した新曲「Wish You Back」は、新海誠監督作品『君の名は。』から着想を得たというナンバーだ。
「Wish You Back」、日本語にすれば「あなたが戻ってきますように」と訳せばいいだろうか。そんなタイトルがつけられた同楽曲は、聞いてみると想像よりも軽いタッチに仕上がっている。耳に入ってくる爽やかなイメージのギターサウンドは、『君の名は。』の劇中で見られる青空を思い出させる。曲の序盤、エフェクトがかかったギターサウンドは、全ての音が少し後ろに尾を引き、ぽつぽつと呟くようなハンの少し低めな声と対比することで、ギターとボーカルが互いに引き立てあっている。
そこに続くパートでは、空を軽やかに進んでいくような滑らかなギターの音が鳴る中で、軽快なリズムパーカションの音とハンのラップが入ってくる。ここでもゆったりとしたギターの音と素早いラップの対比が楽しめる。「Wish You Back」は、歌詞で描かれる世界観や言葉選びの美しさももちろんだが、音楽的なテクニックも十分に感じられる曲だと言えるだろう。
メンバーも認めたその最高傑作には、なんと新海誠監督本人も「beautiful!」とコメント。ファンによって監督本人に情報が伝達されたこともあり、ファンの応援とハンの愛される魅力までが露になる出来事であった。