コロナ禍で爆誕したZoomgals 令和ギャルサーが打ち出す“生きづらさ”と“自己愛”の共存

ディーヴァ性とギャルの組み合わせは最強?

 Zoomgalsがエンパワメントすると同時に“一緒に横に並びたい”と思われる理由として、“ディーヴァ性を感じる”ことも大きいと私は考える。ギャルのカリスマといえば、安室奈美恵・浜崎あゆみ・倖田來未・加藤ミリヤ・西野カナが代表として挙げられる。ほんの一例に過ぎないが、安室奈美恵が「Break It」で〈I wanna break 旧体制〉と、加藤ミリヤが「ディア ロンリーガール」で〈押し付けないで古い考え ここからうちらの時代〉と歌っていたように、Zoomgalsは〈We making new 時代〉と宣言する。また、倖田來未は「POP DIVA」で〈Most beautiful, powerful, and talented girl on the planet〉と語っており、これは先述したセルフボースティングのマインドと言える。さらに浜崎あゆみが「Trauma」「evolution」「Sparkle」「Walk」と90~10年代にかけて使用している“ものさし”という単語は、Zoomgalsの「生きてるだけで状態異常」においても〈てか他人の物差し興味ねぇし〉とフックとして繰り返される。最後に西野カナ「Best Friend」の〈ママにも言えないことも全部誰よりも分かってくれる〉は、リスナーがZoomgalsに抱く感情に近いように感じる。

安室奈美恵 / 「Break It」Music Video
倖田來未 / POP DIVA
浜崎あゆみ / evolution
西野カナ 『Best Friend(short ver.)』

 海外に目を向けると、マライア・キャリーはイギリスの『ザ・ガーディアン』紙で、「今後はインタビュアーに(自身の自伝本『ザ・ミーニング・オブ・マライア・キャリー』の)『29ページを参照して』とかって言いたい気分」と発言。Zoomgalsの歌詞にも〈食らえるかヒントの山マイリリック〉〈リリック・インタ答え載ってんで〉というフレーズがあり、Zoomgalsには国内外問わずディーヴァと通ずるマインドがあるな、と感じた。

 ファンをエンパワメントするディーヴァ性やガールクラッシュな魅力を兼ね備えながら〈やめらんねえ止まらねえコロナの愚痴 でも終わったらウチらは絶対になろねRich〉(「Zoom」)とまるで隣にいるかのように投げかけてくれる。そんな一粒で何度も美味しいZoomgalsだからこそ「何回みても楽しい」というコメントがつくのであろう。

各々が選ぶ表現で描いていく、新時代の聖書

 最後に、ギャルサーを自称するZoomgalsが全員ギャルであることは言うまでもないが、私は最近よく目にする「ギャル=誰でも分け隔てなく接して本質を突く存在」という方程式が苦手だ。かつてテレビや映画で「ゲイ=主人公の悩みを毒舌で解決してくれる脇役」という図が幾度となく繰り返されるのを観て、憤っていた。なので、Zoomgalsがその方程式に当てはめられるのは御免だと思った。Zoomgalsはあくまで自らギャルを名乗って〈作りましょうbrand new bible 型にはまっては息苦しい〉と主張しているのであって、それを台無しにはされたくなかったからだ。

 しかし、「GALS feat. 大門弥生」において客演している“強めギャル代表”こと大門弥生の歌詞〈は?ギャルの鉄則?なんてあるようで無いし好きにやりや〉が、その心配を払拭してくれた。この曲はギャルの鉄則をメンバーが順番にラップしていく構成だが、最後に大門弥生が〈好きにやりや〉とラップすることでZoomgalsに「ギャルの型にはまる必要はない」と言ってくれたようで、なんとも頼もしかった。

 以前、なみちえがインタビューで「私は平和のシンボルでもなければ、何かをエンパワメントするつもりもない。誰かにキャラクターを強いられる筋合いもない。今、私のやってる事はアーティストとして自分が選んだ表現を行っているだけなんです」と話していた。実際、リスナーが捉えているだけで、Zoomgalsはこれからも各々が選んだ表現を続けていくであろう。だからこそ、Zoomgalsが描いていくbrand new bibleにどんなことが記されていくのかが楽しみでならない。完成しても未完のままでも、薄くても厚くても、その内容は“約束されたブチアゲ”になりそうだ。

■ゆずひめ/QUEEN DIVA。
QUEEN DIVA。好きな音楽ならなんでも聴く耳ビッチ。UKI EYEとして音楽活動も行うが、現在は休止中。冬至と紅白歌合戦、自身のブログ『#BitchVogue JAPAN』でTL DIVAs(Twitter相互の意)の年間ベストを集計することに命懸け。故に年末年始は繁忙期。
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