mekakushe『光みたいにすすみたい』インタビュー

mekakushe、生きやすくなるために行き着いた答え 「私は光になりたいんだって」

「生きやすくなるための救済活動って意味でも歌詞と歌は大事なもの」

ーークラシックがルーツにありながら、mekakusheさんがポップスの畑で活動していきたいと思ったのには何か理由はあったんですか。

mekakushe:歌と歌詞があるからです。もしピアノだけで表現することを選んでいたら、きっとコテコテのクラシックになっていたと思うんですけど、私は自分の言葉で歌詞を書きたいし、それを自分の声で歌いたい。曲を作っている時が幸せですし、最初に話した自分を解放するってことを思ったら、私にとってそれが音楽なので。自分が生きやすくなるための救済活動って意味でも、歌詞と歌が私にとっては大事なものなんですよね。で、そうなったらポップスの方が伝えやすいと思います。

ーー「もしものはなし」のような、切実な歌詞が書かれたミッドテンポの曲も魅力だと思います。大切なものがあるからこそ臆病になってしまう人の歌なのかなと思いました。

mekakushe:終わりが怖いんですよね。みんなで一生懸命準備した合唱コンクールとか、アルバム作りとか、ライブとか、何かが終わる瞬間にすごく虚しくなりませんか? 私は終わりとか死に対する恐ろしさがあります。

ーーそういう実感が創作の元になっていくのはなんでだと思いますか。

mekakushe:「もしものはなし」は3.11を体験した後に書いた曲なんですけど、これは使命感があって書いたわけではなくて、自分がめちゃくちゃネガティブな性格なんです。不安なことしか考えられない病気なんじゃないかってくらい、脳みその9.5割くらいが悲しいことで埋まっていて。気づけば小学生くらいからそんなだった気がするんですけど、私はちょっと叱られるだけでも5時間くらいダメになってしまうような、悲しみを引きずりやすい性格なんですよね。これは直せないものだし、そうやって生きているのはめちゃくちゃ損だなって思うんですけど、そういう性格だからこういう曲が出来てくるんだだろうなって思います。

ーー2月にリリースされた「空中合唱」もメランコリックな楽曲で、本作の中でもとびきり素晴らしい曲だと思います。

mekakushe:やったー。でも、全然聴かれてないですこの曲(笑)。「空中合唱」は飛び降り自殺をテーマにした曲で、そういう重いテーマで曲を書きたいと思った時は、曲調もこんな感じになりますね。これは本当に伝えたいことだから、ポップにしている場合じゃないなって思います。

ーー「空中」ってmekakusheさんにとってどんな場所ですか?

mekakushe:地面と天国の間にあるものって空中じゃないですか。なので空中という空間が、一番死に近いと思ったんですよ。

ーーなるほど。

mekakushe:あと、飛び降り自殺だけをテーマにしているわけではなくて、この曲を書いてからはどうでもよくなったんですけど、友達といる時にめっちゃ客観的になる時ありません? 自分だけ違うところにいる感覚というか、そこにいるのに輪には入れない時がすごく怖くて。“なんでみんな笑っているんだろう?”って感じる瞬間も、私にとっては浮遊している感覚に近いと思ったんですよね。飛び降り自殺をした人は空中でいろんなことを思うかもしれないし、自分が客観的になっている時にも浮遊している感覚があると思うと、空中ってめっちゃ大事な場所だと感じて。「空中」が天国に一番近い場所だと思って、タイトルを「空中合唱」にしました。

ーー「屋上にて」という曲もありますが、屋上もまさに空と繋がるような場所ですね。

mekakushe:そうですね。この曲は屋上から世界を見て考えている曲なんですけど、「屋上にて」も「空中合唱」と似たようなテーマがあって、同じような時期に書いています。ただ、アレンジによって「屋上にて」と「空中合唱」は両極端な曲になっています。「屋上にて」も本来だったら「空中合唱」みたいな曲になったかもしれないけど、こういうメッセージ性のある曲も、ポップにすることができるようになったところに成長を感じます。

ーーアーティストとして表現の幅がグッと広がっていると。

mekakushe:どう考えても、私が得意なのはゆっくりとした曲なんですよ。映画の主題歌にしてくださいって感じの曲が自分で書いていても苦しくないし、これこれってなる。でも、今は速い曲も書ける訓練をして、自分が前向きになっていることを感じるんですよね。暗い曲を歌ってきた私が、「ばらの花」のように少し前向きな歌詞を書いたり、明るい曲調やメロディで歌うのもいいなって心から思えていて。今はこのアルバムに入っているような曲が私のスタンダードになったんだと思います。

ーーなるほど。

mekakushe:去年の4月からサブスクを始めて、やっとアルバムが完成した1年だったんですけど、この1年で何か掴めたような気がしていて。私はこのアルバムに春の兆しみたいなものを感じました。

ーーこの作品が「余映」という曲で終わるのも素敵で、言葉としてすごく綺麗な響きだと思います。

mekakushe:「余映」、良い言葉ですよね。

ーーしっとりとした曲と「余映」という言葉を見た時、アルバムのタイトルにある「光」ってこれのことなんだなって思いました。

mekakushe:そうです。余映って「日が沈んだり、灯火が消えたりしたあとに残った輝き」という意味なんですけど、本当にここで言う“光”ってそういうことなんですよね。パッて光ってなくていいんだけど、ふわってなって欲しい。聴き終わった時にそんな光を感じてもらえたらと思って、この曲を最後に持ってきました。

ーーこのアルバムをリリースした後、どんな活動をしていきたいと思いますか。

mekakushe:来年くらいまではたくさん曲をリリースすると決めていて、これまで以上にポップスを意識して活動していきたいと思います。

mekakushe『光みたいにすすみたい』

■リリース情報
『光みたいにすすみたい』
2021年4月21日 2,500円+税
<トラックリスト>
01.好日日和
02.ペーパークラフト
03.ばらの花
04.屋上にて
05.わたし、フィクション
06.空中合唱
07.箱庭宇宙
08.想うということ 
09.もしものはなし
10.余映

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