和ぬか、TikTokでのヒットはなぜ生まれた? 数十秒で心掴む“未知なる才能”を紐解く

 TikTokに突如現れ、瞬く間に人気を博した和ぬか「寄り酔い」がチャートを席巻し、着実に頭角を現している。2月15日に配信が開始された「寄り酔い」は3月11日付のSpotifyのバイラル・ウィークリーチャートで1位を獲得。YouTubeに投稿されたミュージックビデオの再生数も2カ月で600万回再生を突破している。現役大学生シンガーソングライターということ以外、詳しいことは謎に包まれている和ぬかの魅力とヒットの理由はどこにあるのだろうか。

 「寄り酔い」の音楽的な特徴は、ゆったりとしたシャッフルビートとヨナ抜き音階。米津玄師の「パプリカ」などでも使われているヨナ抜き音階は日本の民謡などによく用いられるもので、この曲からどことなく「和」が香ってくるのはこれが一因と考えられる。また、エロティックな歌詞も印象的だ。〈家まで送ってもらいたいの〉というグッとくるフレーズから始まり、〈今夜満たされてたいの/できれば君にちょっと/濡らして欲しいの〉など、流し目で誘うようなしっとりとした雰囲気が曲全体から立ちのぼる。それでも下品な印象にならないのは、和ぬかの柔らかく抑揚の控えめな歌声と、〈君といたいよ〉や〈言えるわけないじゃん〉など、こなれたような裏にいじらしい可愛さが見え隠れしているせいだろう。

寄り酔い/和ぬか【Music Video】

 「寄り酔い」のヒットのもう一つの大きな理由として、TikTokとの親和性の高さが挙げられる。YouTubeなどと違い、TikTokに投稿できる動画の長さは、サービス開始当初は15秒、現在も最大で60秒。手軽にテンポよく見られることが求められるこのプラットフォームで、投稿側は限られた尺の中でいかに視聴者の心を掴むかが肝となる。

 そんな中、和ぬかがTikTokに投稿した「寄り酔い」は、フルバージョンの冒頭部分に当たる20数秒。その中でまず〈家まで送ってもらいたいの〉というキラーワードで心を掴み「酔った帰り道、君とまだ一緒にいたいというひそかな想い」のストーリーを構築してみせた。

 また、派生動画が多数投稿されたことも、人気にブーストがかかった要因だろう。オリジナル楽曲にインスパイアされた視聴者が、楽曲を使用して動画を制作し投稿する、という流れは投稿型動画サイトならではのもので、この派生動画を生み出しやすい作品はそれだけ多くの人の耳に届くことになる。多くの人が共通の情景を想起しやすい「寄り酔い」の世界はそのフックが大きいのか、「寄り酔い」を使用した動画だけでも2万6千以上投稿されている。この二次的な盛り上がりが曲のヒットを後押ししたのは間違いないだろう。