TWICE サナ×コブクロによる「卒業」も話題 メンバー9人の歌声を改めて分析
際立った個性をもつ歌声により、強い情感をはらむモモのボーカルは、TWICE楽曲における感情表現面に大きな影響を与えている。特に「What is love?」2番で、切なく響く彼女の歌声が印象的だ。また初期曲に導入されることの多かった彼女のラップは、最新曲「I CAN'T STOP ME」などで再びフィーチャーされるようになり、ファンから喜びの声が上がっている。
オーディション中からラッパーとしての頭角を表していたチェヨンによる攻めのフロウは、リスナーの心に強く残るインパクトを与え、各曲におけるパンチラインとなることが多い。また彼女の持ち味はボーカル面でも発揮されるもので、「CRY FOR ME」では〈I want you to die for me〉という衝撃的な一節を、絶妙なニュアンスで歌い上げることにより同曲のクライマックスをドラマティックに締め括っている。
普段の話し声にも表れる、柔らかで耳心地良いボーカルにより、落ちサビを担当することの多いミナ。控えめで落ち着いた歌声というのはともすれば平坦に聴こえてしまいがちなのだが、ソフトな歌声をアクセントの強弱によってリズミカルに表す彼女の歌唱法は大きな存在感を放っている。先日配信された、自身の誕生日記念Vlive内ではaikoの「Kiss Hug」をアカペラ歌唱し、その美声に大きな反響が集まった。
沫雪をイメージさせる透明感と繊細さが持ち味のダヒョンの歌声は、その名も「Ice Cream」(韓国語題「녹아요」、“溶ける”を意味する)などのスローバラードによく映えるのみならず、「Feel Special」ラップパートにおいてバックに響く重厚なビートと重なることでコントラストを作り出すといった化学反応を生み、楽曲のもつ世界観にさらなる厚みをもたらす。
そして、最後に紹介するのはグループの末っ子ツウィ。そのあたたかく優しい歌声の中心に、素朴でありながら確固たる意志を感じさせる芯が貫かれているあたりが魅力だ。特に「Like a Fool」で、ほろ苦く切ない感情を全面に表すボーカルは必聴。また「I CAN'T STOP ME」サビ明けでは、美しいファルセットを聴くことができる。
昨年リリースされた2ndフルアルバム『Eyes wide open』で大きな音楽的転換点を迎え、また5月にリリースを控える日本版シングル曲「Kura Kura」は“TWICEの日本の作品として今までにない「愛」の形を歌い、ますます成長しているリアルな彼女たちの姿が魅せられる楽曲”とアナウンスされているように、デビュー7年目にしてさらなる表現域を拡げ続けているTWICE。彼女たちが持つボーカリストとしての新たな魅力は、今後よりいっそう拓かれていくことだろう。
※1:https://realsound.jp/2020/05/post-554504.html
■菅原 史稀
編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。Twitter:@podima_hattaya3