milet、ちゃんみな、AK-69らプロデュース Dr.Ryoに聞く、海外での挫折や成功で培った音楽制作メソッド
音楽活動の根底にある“日本文化へのリスペクト”
ーーでは、今回Sakaiさんがソロ名義でリリースした「Late Night Flex」についてもお聞かせください。
Sakai:それこそこの曲は、AKくんとLAへ行った時にセッションで作った曲なんですよ。その時はAKくんと僕と、今回フィーチャリングしているマンチェスター出身のバイポーラ・サンシャインと3人でコライトしていて。それをマネージャーのニックに聴かせたら、「これめちゃくちゃいいじゃん!」となって。「Ryosukeのプロジェクトに使うべきだ」とずっと言ってくれていたんです。それでAKくんに相談したところ、快諾してくれたのでリリースすることになりました。
ーーどんなイメージで作った曲ですか?
Sakai:まずは「日本的な強さ」を出したいと思いました。「Late Night Flex」って、日本語に訳すのがちょっと難しいんです。flexには「見せびらかす」とか「カッコつける」みたいなニュアンスなんですけど、アメリカの「カッコつけ」だと、金とか車とか、すごく分かりやすい態度なんですけど、もうちょっとサムライ的というか。humble(謙虚)だけど、内に秘めた強さを静かに見せる感じがテーマになっています。
ーーオリエンタルな音色が入っているのも印象的です。
Sakai:僕もアメリカで音楽をやり出して7年とか経つんですけど、やっぱり日本ってものすごくカッコいい独自のカルチャーが多いと思っていて。ただ、和太鼓を入れるとかこれ見よがしにやるのは違うのかなと思っているんですよ。テイストとして日本やアジアの要素をトラックに馴染ませるのが、すごく楽しい。例えば向こうの和食屋さんとか見ていると「あ、こういうところを向こうの人はいいと思っているのだな」みたいに気付くことが多くて。それを音楽に応用していく感じですかね。
ーーラッパーのバディーはどういう経緯で参加することになったのですか?
Sakai:ニックの元同僚が、現在<RCAレコード>にいて「いいラッパーいない?」と聞いてもらったところ、バディーを紹介してくれて。しかも「Late Night Flex」を聴いて参加したいと言ってくれたんです。僕も彼の音源を聴いたところ、ラップのスタイルもカッコいいしスタイリッシュだし。僕らが提示したかった日本流のflexを、彼なら表現してくれるだろうと思ってお願いしました。
ーーそういう「日本らしさ」「サムライ感」みたいなものは、今後ソロを出す上でやはり大事にしていきたいところですか?
Sakai:僕の中にある「日本らしさ」は拭えるものではないし、意識しなくても出てくるものだなと思っていて。音源を出すにあたって自分のレーベルを作ろうということになり、レーベルの名前も「MNNF(モノノフ)」にしたわけです。僕、実は20代の時に会社を作ったんですけど、その時は「サムライ・エンタテインメント」という名前だったんですよね(笑)。15年以上前から、考えていることはそんなに変わっていないんです。「三つ子の魂百まで」じゃないですけど、日本文化へのリスペクトはもともと持っていたのだと思います。
ーー生き方としても「日本らしさ」は大切にしたいですか?
Sakai:誰に対してもhumbleでありたいという気持ちはあります。謙虚さって海外の人にもすごく伝わるし、日本人だからこそ培われてきた、意識せずとも立ち現れる振る舞いや気遣いに、自分自身もめちゃくちゃ助けられていて。世界中のクリエーターと一緒に仲良くさせてもらっているのは、そうやって自然と育まれた文化のおかげだと強く思っています。
ーーちなみにMVはどんなイメージで撮影したのでしょう。
Sakai:僕でもバイポーラでもない、全く違う人物がリップシンクすると面白いんじゃないか、という話を映像監督のKoh Yamadaと話をしていて。他にも、ジャケットに使われている模様を顔にペイントするとか、全体的に「Neo Tokyo」感を出そうとかいろんなアイデアを出して最終的にああいう作品に仕上がりました。リリックの中に〈late night cruising〉というフレーズが出てくるので、深夜に東京の街をオープンカーで走りながら、自問自答をしつつも静かに自信を滾らせているような雰囲気を、DJ エレナ・ミドリに演じてもらっています。
ーーところでコロナ禍になって、Sakaiさんの活動にはどんな影響がありましたか?
Sakai:海外に全く行けなくなったのは結構大きいですね。これまで1年の4分の1は海外にいたので、ちょっと体の一部を失ってしまったような喪失感がありました。でも、いつまでも落ち込んでいても仕方ないので、とにかくどんどんクリエイティブにやっていこうと今は思っています。ステイホームになって、みなさんが音楽を聴く機会も増えてきているだろうし、もちろんエンタメ業界に逆風はありますが、その一方で音楽がこれまで以上に求められている気もするので、より一層クリエイティブな方向に意識が向かっていますね。
ーーしばらくは、予断の許さない状況が続くのでしょうね。
Sakai:おそらく今年も海外へ行くのは厳しいかも知れない。これまで自分は海外で刺激をもらっていた部分が大きかったのですが、これからは日本でどうやって自分に刺激を与えられるかが課題ですね。プロデュースの仕事もそうですし、モノノフのレーベル運営もそう。今回は第一弾として自分の音源を出したのですが、実はこのあと3組ほどアーティストの音源リリースが決まっていて。すでに名が知られている、びっくりするような人もいます。音楽だけでなく、今後はアートなどにも絡めた音楽なども展開できたらと思っていますのでぜひ期待していて欲しいです。
■リリース情報
Dr.Ryo「Late Night Flex feat. Bipolar Sunshine」
配信はこちら
Dr.Ryo「Late Night Flex (REMIX) feat. Bipolar Sunshine, Buddy」
配信はこちら
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