ビッケブランカの音楽はなぜミュージシャンに響く? 周囲の反応、多彩な楽曲などから考察
世の中にアーティストと呼ばれる人は数多いるが、その中でもアーティストから支持されるタイプのアーティストが存在する。ビッケブランカもその一人だ。多彩なメロディ、ファルセットボーカル、そしてピアノスタイルを武器にするビッケブランカ。2018年には「まっしろ」がドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌として話題となり、翌年には「Ca Va?」がSpotifyのテレビCMに起用。その後も、2020年3月にリリースされた3rdアルバム『Devil』がiTunes J-POPチャートで1位を記録するなど躍進を続けている。
そんな彼を特に気に入っているのが、DREAMS COME TRUEの中村正人だ。「『Ca Va?』を聴いたときはブッ飛びましたし、「Shekebon!」はもう最高で。ビッケさんは歌はもちろんカッコいいんだけど、ベースもめちゃめちゃうまい!」(※1)と、滅多に人を褒めないという中村が、ラジオなどで頻繁にビッケブランカの曲を引き合いに出しては絶賛する。
また、スピッツの草野マサムネも自身のラジオで「同じ人が作った曲とは思えないくらい色んなタイプの曲を生み出す、引き出しの多い方」と紹介した。さらに「どの曲もビッケブランカさん…"ビッケブランカ"って芯が通ってる感じがする。今後が非常に楽しみなミュージシャンだと思います」(※2)と今後への期待を寄せる。
草野の言う通り、ビッケブランカの音楽はとにかく幅広い。Queenを彷彿とさせる「Slave of Love」、洪水のように音が鳴るダンサブルな「ファビュラス」、ドラマチックなピアノバラードの「まっしろ」。ゲーム仲間であり、お互いの才能を認め合った盟友・岡崎体育と組んだ「化かしHOUR NIGHT」はEDM調と、曲ごとに驚くほどがらりと表情が変わる。ジャンルにとらわれないビッケブランカの曲の多彩さは、アルバム1枚聴くだけでも十分に理解できるだろう。
今年1月、NHK Eテレの音楽番組『ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック』に出演したビッケブランカは、制作現場である自らのワンルームを公開。楽器、機材、DJブースを揃え、スタジオに仕立てたその部屋で、一日のほとんどを過ごしているという。
そこで昨年夏に制作されたのが、2020年7月にリリースした「Little Summer」だ。LAMP IN TERRENの松本大とオンラインで共同制作したものだが、この曲はミックス、マスタリングまでビッケブランカ自身が手がけている。
シンガーソングライターとしての枠に留まらず、エンジニアとしての技術も持つビッケブランカ。アレンジについても、「今、自分と同じようなレベルで納得のいくアレンジをしてくれる人はひとりしかいないんです。その人にアレンジを投げることはあっても、基本は自分でやっちゃうのがいいなって思うんですよね」(※3)と語っているように、音に対する並々ならぬこだわりがにじみ出ている。
このこだわりの強さも、一般のリスナーよりも音楽に対する解像度が高く、よりシビアな目線を持つ同業者が彼を高く評価するゆえんの一つなのだろう。