樋口楓が届けた、これまでの感謝とこれからの想い リアル会場にて臨んだワンマン公演

 そしてここから、ライブはバラード曲などを中心としたプライベートな雰囲気に。ORESAMAのぽんが作詞を手がけた「mìmì」、同じランティス所属のアニソンレジェンド・影山ヒロノブ提供の「For you」、PandaBoYがアレンジを担当した華やかなディスコ「現代社会、ヒロインは!」、黒板を模したスクリーンにチョークで書いた歌詞が浮かんでいくナナヲアカリ提供の「アブノーマルガール」といった、等身大の樋口楓像が垣間見える楽曲を中心に披露し、観客との距離がぐんぐん近くなっていく雰囲気のまま本編が終了。笑顔でステージを去りつつも、「分かってるね?」とアンコールの圧をかけて帰る姿に笑いが起こる。

 アンコールは、シャウトをしながらステージに飛び出して歌ったみきとP提供の「Q」を経て、MCでTVアニメ『100万の命の上に俺は立っている』の第2期OPテーマを担当することを発表。最後はお馴染みの衣装に一瞬で着替え、自身のメジャーデビューシングルであり、この曲以降も音楽活動をサポートしている光増ハジメ(FirstCall)が過去のファンメイド曲から様々な歌詞を詰め込んで制作した楽曲「MARBLE」を披露。「これから大変なこともあると思うけど、この瞬間を胸の中に刻み込んで、明日、未来、夢を自分のものにできるように、私と一緒に進み続けよう!」と観客を鼓舞してパフォーマンスを終えた。

 ステージ終了後はふたたびスクリーン上で映像がはじまり、「もうこんな時間?! 遅刻遅刻!」と言いながら部屋を出ていく樋口楓が描かれる。そして、その机には2020年の5月1日の手紙が残されている――ライブはここで終了となったのだが、この手紙はおそらく、前述の配信『20250501』で、17歳の樋口楓が22歳の樋口楓に送った手紙と同じもの。今の彼女が未来の自分に託した気持ちを想像させる雰囲気を残したまま公演を終えた。

 『AIM』(=照準を定める)というFPS用語を使ったアルバムタイトルには、楽曲ごとに彼女のリアルな想いが詰まっており、それをリスナーに届けるという気持ちが込められていた。そんなアルバムをリリースした今だからこその、これまでへの感謝とこれからへの想いが伝わってくるようなライブだった。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

関連記事