現実逃避したい人へ贈る、コナン・グレイの至高のポップス 新曲「Overdrive」レビュー

コナン・グレイ新曲「Overdrive」レビュー

 コナン・グレイの成功を決定付ける楽曲となった『Kid Krow』収録の「Heather」を筆頭に、自らが経験してきたパーソナルな出来事をはじめ、その時に感じていた不安や葛藤といった感情をリアルなままに描き切ってきた。そして、その内容に深く共感した若いリスナーを中心に、コナンは絶大な支持を集め、いつしか現代を悩みながら生きるZ世代のアイコンとして語られるようになった。一方で、楽曲を作る時点ではまだ孤独を感じおり、インターネット上で交わされるファンの楽曲への反応を通して、自分が何かしら目的を果たしているという感情を抱くようになっていった(※3)。

Conan Gray - Heather (Live on The Late Late Show with James Corden)

 もし、パンデミックが起こらなければ、今頃コナンは『Kid Krow』のツアーで多忙を極めていたかもしれない。だが、その代わりに彼は自宅でじっくりとファンと向き合い、長期間に渡って自分と向き合う時間を過ごすことができた。だからこそ、自らの役目をより強く自覚し、「多くの人々にメッセージを届けたい」という外側への意識が強くなっていったのかもしれない。

 無謀なほどにポジティブなエネルギーで溢れた「Overdrive」は、現代を生きる上で必要な最高のファンタジーであると同時に、自らの役目を自覚した一人のポップアーティストによる、野心に満ちた宣言でもあるのだ。

(※3)https://www.billboard.com/articles/columns/pop/9530275/conan-gray-interview-overdrive-new-music

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
Twitter : @neu_mura

コナン・グレイ
「Overdrive」

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