『l』インタビュー

大原櫻子が届けたかった“2020年を経たメッセージ” 初の自作曲への手応えも語る

 大原櫻子が5作目のオリジナルアルバム『l(エル)』を完成させた。

 リード曲「STARTLINE」(BOAT RACE 2021 TVCMイメージソング)、長屋晴子(緑黄色社会)が書き下ろした「透ケルトン」、一青窈作詞のシングル曲「#やっぱもっと」、AAAMYYYによる提供曲「Love Letter」、そして初めて彼女自身が単独で作詞作曲を手がけた「チューリップ」などを収めた本作。ジャンルを超えたサウンドメイク、表現力を増したボーカルなど、アーティストとしての独創性がさらに発揮された作品となった。

 活動の停滞を余儀なくされた2020年も「自分でやることを探して、能動的に動いてました」という大原。奔放なクリエイティブが花開いた本作について、彼女自身の言葉で語ってもらった。(森朋之)

大原櫻子 5th New Album「l(エル)」クロスフェード

「自分にできることや今までできなかったことを探していた」

ーーニューアルバム『l』、じっくり聴かせていただきました。幅広い作家陣の楽曲、大原さんの自作曲を含めて、これまで以上に多彩な歌が楽しめるアルバムだと思います。

大原櫻子(以下、大原):ありがとうございます。皆さんのおかげで、素敵なアルバムになったと思います。

ーー昨年リリースされた「#やっぱもっと」「透ケルトン」、今年2月に配信された「STARTLINE」なども収録されていますが、アルバムの制作はいつ頃スタートしたんですか?

大原:去年の夏くらいですね。もともと2020年は、舞台『ミス・サイゴン』も予定されていて、どこまで音楽活動ができるかわからなかったんです。でも、舞台がすべて中止になってしまい、夏のスケジュールも丸々空いてしまって。その前から「次のアルバムの準備はしていこう」という話もしていたので、どうなるかはわからないけど、とにかくアルバムは丁寧に作っていこうと。「Wake Up」(シングル『#やっぱもっと』収録)も、私からプロデューサーのSakaiさん(Ryosuke“Dr.R”Sakai)に「一緒に曲を作ってくれませんか?」と提案させてもらったんです。あと、自分で作詞や作曲をやってみたり。それがこのアルバムに入ってる「チューリップ」(作詞作曲)、「抱きしめる日まで」(作詞)で。

ーー舞台やライブはできなかったけど、その時間を使って制作を続けていたと。

大原:ありがたいことに、止まっていた感覚はなかったですね。自分に何ができるか考えたし、すごく能動的に動いていた1年でした。自分からプロデューサーの方に「作りましょう」と言ったのも初めてだったし、ただ待っているのではなくて、自分にできることや今までできなかったことを探していたというか。

ーー素晴らしい。アルバムのタイトル『l』にも、2020年に感じたことが反映されているとか。

大原:そうですね。アルバムのタイトルは、目に入った瞬間に一度で覚えられるものがいいなと思っていて。今回の『l』については、こういうご時世になって普通の生活(life)について考えたし、あとはライブ(live)のことだったり、誰しもが大事にしている愛(love)だったりについていろいろ考えて......今、“l(エル)”がすごく身近にあるなと思ったんです。小文字にしたのは、1本の線が「STARTLINE」の“LINE”にリンクすることや、人が真っ直ぐに立っている凛とした姿も重ねているからで。アルバムのジャケットも、凛とした表情が多いんですよ。

ーー確かに強い目線が印象的ですね。

大原:そうなんです。「STARTLINE」という楽曲も、前を見据えて、未来に向かってスタートを切る強い女性の気持ちを歌っていて。この曲がアルバム全体のイメージや、ジャケットのテーマにもつながってますね。

ーーなるほど。ジャンルを超えたクリエイターが参加したことで、音楽性の幅がさらに広がっているのも印象的でした。

大原:前作の『Passion』もバラエティ豊かだったんですけど、今回はテイストが違っていて。『Passion』は打ち込みの曲が多めで、海外で活躍されているトラックメイカーの方とのコラボなどもあったんですけど、今回は生音が増えてるんです。参加してくださったミュージシャンの皆さんもオリジナリティを持った方が多くて、生身の音を奏でてくれていて。そこは前作との違いだと思いますし、もともと私の楽曲は生音が多かったんですよ。原点に戻ったというか、「そういう曲をファンの皆さんも待っているんじゃないか」という話もあったので。

ーーファンの皆さんの期待にも応えたい、と。

大原:そこが主軸ですね。もちろん自分がやりたいこともあるので、バランスが大事なのかなと。そのことにも改めて気づきました。

「かけ離れてるかもと思ったけど、挑戦したい気持ちが強かった」

ーーでは、収録曲について聞かせてください。まずは「STARTLINE」。ポジティブなパワーに溢れた楽曲ですが、何よりも声の強さが印象的でした。

大原:ありがとうございます。「STARTLINE」は丸谷マナブさんが作曲してくれた曲で。「I am I」からずっとお世話になっていて、この2年くらい私にとって一番身近なプロデューサーさんの一人なんですが、いつも私の声の長所を活かしたメロディラインを作ってくださるんですよね。作詞のいしわたり淳治さんにも何度も書いてもらってるんですけど、今回も「やっぱりすごいな」と思いました。一度読むと頭から離れないし、親しみのあるフレーズなのに、ありきたりな言葉ではなくて。今の時代に沿った歌詞だし、しかもこの先ずっと歌っていける曲だなって思います。自分で作詞を手がけたからこそ、いしわたりさんのすごさを改めて実感したのかもしれないですね。

大原櫻子 - STARTLINE (Official Music Video)

ーーネオソウルのテイストが感じられる「Love Letter」も素晴らしいですね。作詞がAAAMYYYさん、作曲がShin SakiuraさんとAAAMYYYさんで。

大原:AAAMYYYさんの楽曲を聴かせてもらったときに、「すごくカッコいい。けど、私とはかけ離れてるかも」と思ったんです。でも、挑戦してみたい気持ちのほうが強くて、お願いしました。「Love Letter」のデモはAAAMYYYさんが仮歌を入れてくださってたんですけど、それがとても素敵で。すごくAAAMYYYさんらしい曲だったし、「私が歌ったらどうなるんだろう?」って不安だったんですよ。こんなに色気のある曲を歌うのも初めてだったし。レコーディングでも、何度もShinさんに「大丈夫ですか?」って確認してたんですけど、「めっちゃいい。新鮮やな」と言ってくださって。また新しい表現ができたなと思うし、アルバムのなかでもベスト3に入るくらい好きな曲になりました。

ーー〈息もできないくらい/あなたを想ってるから〉もそうですけど、ロマンティックなフレーズがたっぷり込められていて。

大原:すごく可愛らしいなと思いました。私は恋愛ソングだと解釈してたんですが、AAAMYYYさんが飼ってらっしゃる猫ちゃんに向けた曲っぽいという話を聞きまして。そう思って聴くと、ただのラブソングじゃないのかもと思ったり(笑)。近しい年齢の女性にこんな才能を持った方がいらっしゃることが、すごく嬉しいですね。

ーーそして一青窈さん書き下ろしによる「#やっぱもっと」は、20歳の頃の恋愛を思い出すラブリーな楽曲。

大原:前作『Passion』のときに書いていただいた「電話出て」とは全然違うテイストのライブソングだなって。キラッとした感じも増してるし、同じ方が書いたとは思えないです(笑)。一青窈さんは、私のプライべートなエピソードをしっかり聞いてから曲を作ってくださるんです。なるべく私自身に近い感情で仕上げてもらってるし、「電話出て」も「#やっぱもっと」もすごく身近な曲になりました。今回のAlbum Versionはストリングスが追加されて、さらに豪華になって世界観も広がってますね。

大原櫻子 - #やっぱもっと​ (Official Music Video)

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