藤井風、“卒業”する全ての人へ届けた「旅路」TV生パフォーマンスを観て

 藤井風が3月1日夜、『報道ステーション』(テレビ朝日系)に出演した。

藤井風「旅路」

 藤井風にとっては今回が初のテレビ生出演。もちろん生演奏も初であった。放送では「この春“卒業”する全ての人に」とのテーマで、以前通っていた岡山城東高校に彼が訪れている映像から始まった。VTRで彼は、新型コロナウイルスの影響で多くの催しが中止になっている学生たちに対して「想像もできんようなつらいこととか大変なことがいっぱいあると思うし、自分にしかわからんようなつらさが人それぞれあって、そのことにわしが何か言える立場じゃない」と、地元の岡山弁を交えながら話す。当初は卒業生に歌を贈りたいと考えていたというが、卒業式は縮小での開催となり実現しなかったのだとか。そして今回のスタジオでの生披露について「(卒業する人たちを)温かく包み込めたらいいなと思います」と意気込みを見せていた。

 披露したのは同局で放送中のドラマ『にじいろカルテ』の主題歌となっている「旅路」。ちょうど放送当日に配信が開始されたこの曲は、ゆったりとしたリズムと聴き手をやさしく包み込むようなサウンドが魅力の一曲だ。歌詞には〈この宇宙が 教室なら 隣同士 学びは続く〉といったような、達観した目線の中にもひたむきな姿勢が表れている。なかでも彼らしさを強く感じるのが〈目にしてきた 手に触れてきた 全てに意味はあるから〉の一節である。コロナ禍で彼自身のイベントも中止になるなど、活動の制限を余儀なくされた2020年度。そのような中でも彼はこの一年、しばしば「すべてに意味がある」と口にしていた。

 どんな辛いことも振り返ってみれば良い経験だった、というのはよく聞く話。しかし実際それを経験している瞬間はつらく厳しいものであり、なかなか意味を見出すのは難しい。多くの人々がそうした状況に晒されているであろう今、この曲のサビのラスト〈いつの間にかこの日さえも懐かしんで 全てを笑うだろう 全てを愛すだろう〉の持つ力は計り知れない。このフレーズを高らかに歌い上げる彼を見ていると、未来の自分が振り返って現在の自分にやさしく語りかけているような、どこか重苦しい気持ちも軽くなっていくのを感じる。ピアノの弾き語りによる素朴なアレンジも相まって、生のパフォーマンスでは曲の持つ温かさがより一層増していたように思う。