MAN WITH A MISSIONが『ONE WISH e.p.』に込めたバンドとリスナーをつなぐ“願い” 激動のコロナ時代を生きた証を聴いて

 MAN WITH A MISSION(以下、MWAM)の最新EP『ONE WISH e.p.』は、バンドとリスナーをつなぐ大切な“願い”が込められた作品集であると同時に、このコロナ禍だからこそ生まれた“記憶の記録”である……最初に通して聴いたとき、素直にそう感じた。

 昨年2月9日に結成10周年を迎えた彼らにとって、今年2月10日にリリースされるこのEPは激動の10周年イヤーから次のディケイドへと向けた新たな一歩と受け取ることができる。昨年7月15日に10年のキャリアを総括するベストアルバム『MAN WITH A “BEST” MISSION』をリリースしたMWAMは、同日夜にアルバム発売を記念したライブ&トーク番組『「MAN WITH A “BEST” MISSION」-Album Release Special Showcase-』を生配信。ここでのライブが、バンドにとって初の配信ライブとなった。この模様はMC含め、今回のEPにほぼ全編といっていいほどの形で収録されている。MWAMにとってこの日のパフォーマンスは、その後に続いていくライブ活動における大きな手応えになったのではないだろうか。そういった点においても、この日の模様を作品として残すことには非常に大きな意味があると筆者は感じている。

 8月24、25日にはZepp Tokyoでのワンマンライブ『MAN WITH A “REBOOT LIVE & STREAMING” MISSION』が、久しぶりの有観客公演として実現。本来ならこの時期は10周年プロジェクトの一環として野外ライブ企画やファンクラブツアーなどが行われる予定だったが、情勢に合わせたスタイルで新たな形を模索。この2公演の模様は8月29日、ダイジェスト版として有料配信も実施された。筆者もこの配信版を視聴したが、歓声を上げたり一緒に歌ったりできないオーディエンスを前に、必死に音楽とメッセージを届けようとするバンドの姿に胸を打たれたことをよく覚えている。

『MAN WITH A "REBOOT LIVE & STREAMING" MISSION』Special Digest Movie

 このライブの際には、2020年10月から12月にかけてデジタルシングルの3カ月連続リリースもアナウンスされた。それがこのEPにも収録された「Telescope」「evergreen」「All You Need」の3曲だ。どの曲も大きなタイアップが付いていることから、この期間にお茶の間やさまざまな場面でMWAMの楽曲を耳にした、なんてリスナーも少なくないはずだ。どの曲も聴けばすぐにMWAMの楽曲だとわかる特徴的なサウンドとキャッチーなメロディで構築されており、歌詞も聴き手の背中を強く押してくれるポジティブな内容の「Telescope」や「evergreen」、現金争奪バトルゲーム『A.I.M.$ -All you need Is Money-』の世界観が表現された「All You Need」と、こちらも彼ららしさに満ち溢れた仕上がりだ。昨年のベストアルバム発売時、Jean-Ken Johnny(Gt/Vo/Raps)にインタビューした際に歌詞やメッセージについて尋ねたところ、以下のように述べている(発言はすべて編集部で日本語に翻訳)。

自分が一番強く打ち出しているメッセージって結局、音楽であったり友人であったり何かしらに受けた影響に対する憧憬や「こうあってほしい」という思いだったりするので、変わりようがないんですよ。なぜなら、思い出だから。「その瞬間の感動というのは、ものすごく美しいものなんだよ」ということを、この10年間たくさん歌ってきたし、そのテーマって変わりようがない普遍なものですからね。
MAN WITH A MISSIONはなぜモンスターバンドに成り得たのか Jean-Ken Johnnyに聞く、10年の葛藤と不変の信念

 この姿勢は、本EPのタイトルトラック「ONE WISH」でも貫かれている。温かみのあるアコースティックサウンドやストリングスを軸にしながらも、味付けとしてスクラッチやサンプリング、エフェクト音を被せた同楽曲は、さまざまな“生きにくさ”を抱える、今を生きる者たちすべてに向けたMWAM流の応援歌であり、ライブ会場で一緒に汗を流して楽しさを再び分かち合えるまでの“約束の歌”でもある……筆者はそう解釈している。

 そういった意味では、「ONE WISH」という象徴的な1曲と、コロナ禍の最中に発表された3つの新曲、さらにはMWAMがライブ活動を再開させる上で重要な一夜になった『「MAN WITH A “BEST” MISSION」-Album Release Special Showcase-』からのライブ音源(と同日のMC)をひとまとめにした作品を10周年イヤー終了のタイミングに発表するのは、必然以外の何ものでもない。それがEPという形態を取りながらも、全12曲/57分強というフルアルバム並みのボリュームになっても、だ。

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