ZARD 坂井泉水が残した永遠の輝き デビュー30周年、リスナーを支え続ける国民的歌手の功績

 2021年2月10日、ZARDがデビュー30周年を迎える。早いものだ。ヒットチャートに「揺れる想い」が、「永遠」が、「Get U’re Dream」がランクインしていた日々を、昨日のことのように思い出すのに。あのころを生きた皆が歳を重ね、年々早まる月日の流れにのまれても、ZARDはずっと変わらない場所にいる。それが安心感でもあり、少し寂しくもある。とはいえ、永遠に輝き続ける宝物をすでに見つけている自分は、やはり幸せ者だ。

 1991年2月10日『Good-bye My Loneliness』でデビューしたZARD。現在までに45枚のシングルと21枚のアルバムをリリースした、平成を代表するアーティストだ。ボーカリストの坂井泉水(本稿では泉水さん、と呼ばせてほしい)は作詞家としても活躍し、他アーティストへの歌詞提供も含め、数々の名フレーズを生み出した。

 2007年5月27日、泉水さんが旅立ったあとも、ZARDの楽曲は現在進行形で愛され続けている。まさに“永遠のスタンダードナンバー”だ。それを証明するように、ZARD公式YouTubeチャンネルに期間限定でアップされている歌唱映像には、泉水さんへと手紙を綴るように、多くのファンから日々コメントが寄せられている。

ZARD『負けないで』

 1993年1月27日、ZARDの6thシングル『負けないで』がリリースされた。誰もが知る名曲がこの世に放たれた、記念すべき日だ。2021年1月27日、ファンが「負けないで」にまつわる思い出や、ZARDへの愛をTwitterに投稿。ZARD公式Twitterに登場した「#負けないで記念日」を辿ってみると、いかに多くの人がこの曲に励まされ、支えられているのかを実感した。

 「負けないで」――なんと優しい言葉だろう。寄り添うように背中を押し、願いを込める言葉。こんな時代だ。ポキリと折れて、へこたれそうになることばかりだ。ときには自分で自分を追い詰めてしまうこともある。だからこそ、決して「頑張れ」とは言わないこの曲に、筆者自身、何度も支えられてきた。

〈負けないで もう少し 最後まで走り抜けて〉

 サビのフレーズがあまりに印象的で、応援歌として歌われることが多い楽曲だが、夢を選び、離れてしまう相手への想いを描いた恋の歌とも言われている。エールを受け取る歌であると同時に、送る歌でもある。

 筆者にも思い出がある。就職をきっかけに、想い人との未来が分かれた。飛行機に乗って行ってしまう、まさにそのとき胸を占めたのは、寂しさではなく「夢を追いかけて」という願い。「負けないで」という感情だった。

〈パステルカラーの季節に恋した あの日のように輝いてる あなたでいてね〉〈どんなに離れてても 心はそばにいるわ〉

 「負けないで」に描かれている“あなた”は、何が起きたって、どうにかなるサとおどけてみせる、強く朗らかな人。そんなところも似ていた。引き留めるよりも「負けないで」と背中を押す、心はそばにいる。そんな愛の形もあると、このとき初めて知った。

 リリースからゆうに10年以上は経っていたが、何度も受け取ってきた曲を、送る側になって初めて、知らなかった感情に出会った。聴こえ方がまるで変わった。これが、ZARDの楽曲、泉水さんが描く歌詞の魅力だ。年齢を重ね、経験を重ねるごとに、泉水さんの紡いだ歌詞は、何度でも新鮮に響く。何度でも、出逢い直すことができる。

 ちなみにこのあと「君に逢いたくなったら…」が筆者の心を励ますことになるのだが……自分語りはこれまでとしておく。筆者同様、それぞれにZARDとの想い出があるはずだから。

 泉水さんの、どこか少年性のある、不思議な“響き”と“ぬくもり”のある声。誠実に、言葉を届けることを意識した歌唱。ZARDの楽曲が“メッセージ”として心に響くのは、泉水さんの優しさが歌詞と歌声に乗って、まっすぐ届くからだろう。