デジタルシングル「もういい」インタビュー
Suspended 4th Washiyamaが語る、メッセンジャーへの自覚「共感というより、納得していただきたい」
Suspended 4thが、新曲「もういい」を1月20日に配信リリースした。2020年のコロナ禍、多くのアーティストが活動の変化を余儀なくされ、それぞれのスタンスで配信ライブや作品を発表していった。名古屋栄でストリートライブを中心に活動しているSuspended 4thも予定していたライブは次々と変更に。そんな中、Washiyamaは、DIYで「Streaming Musician Summit」を立ち上げ、リアルタイム配信などのアクションを続けてきた。
今回リリースされた「もういい」は、そのSuspended 4thのこれまでを総括するような一曲とWashiyamaは語った。歌に込められたメッセージ、表現者としての意識の変化についてWashiyamaに聞いた。(編集部)
怒ってない人の声には振り向かない
一一去年、コロナ禍とはいえ、バンドは定期的に動いていましたね。
Washiyama:そうですね。なかなか思うようにはならなかったっすけど。でも配信とかはけっこう力入れてました。
一一落ち込むようなことはなかった?
Washiyama:なかったし、「来月どうやって過ごそう? どうやってカネ稼ごうかな」ってことしか考えてなかったです。けっこう昔から非常時が好きで(笑)。台風の日に外に出るタイプのガキだったんで、そのテンションでしたね。追い込まれてケツ叩かれるほうが動けるなぁって。それこそ配信も俺の独断でやったんですね。メンバーはそこに付いてきてくれた感じ。
一一最初の配信は5月、廃工場が舞台でしたけど、それもWashiyamaさんがひとりで決めたんですか。
Washiyama:そうです。メンバーに日程と場所だけ伝えて、なんなら事務所の人とかには詳細も伝えてなくて、当日「今ここにいるんすけど、やっていいすか?」みたいな(笑)。ほんとは一回テストするつもりだったけど、「もうやっちゃえばいいんじゃね?」って。やっぱりパイオニアって強いじゃないですか。配信だろうが何だろうが一番最初にライブをやりたかったんで、そこに食らいついて、けっこう必死になってたかもしれない。
一一サスフォーはパイオニアでありたいですか。
Washiyama:パイオニアが一番楽だと思う。追うより追っかけてもらうほうが楽かなって、そういうマインドは自分の中にあります。
一一そのぶん、開拓していく苦労を負わなきゃいけない立場でもあるけど。
Washiyama:あー、でも別にそのための努力はしてないです。とりあえず周りがやってなさそうなことをやっていく、その感じで生きてたら、なんとなく名古屋のシーンでパイオニアっぽいことができてるなぁって。だからあんまり苦労はないっすね。考えるよりは直感的に動くというか、考えて回り道せず、できるだけ毎回の目標に近づける動きはしたいなと常に思ってます。
一一あと、配信が毎回無料なのは大胆だなと思いました。
Washiyama:あぁ。ストリートと一緒のイメージで。あの時期、メジャーな方々の配信ライブも参考にしたんですけど、設備とか機材も全然ウチとは違う、もう桁が違うようなものを使ってたりする。俺らがやってることはほぼ路上に近いんですね。配信もいつ途切れるかわかんない。発電機を使ってるけど、ガソリンが切れる可能性もありながらやってるわけで、あと音質でいったらそりゃライブハウスのほうがいいし。でもこの感じが路上っぽいと思ってた。路上って人を選ばないじゃないですか。道端を歩いてる人に見てもらえる。同じように無料のストリーミングにすることで、誰でもインターネットで見られる。先にチケット代を取っちゃうと自分たちの柵の中でしかないし、それは窮屈だなと思って。それで無料、路上っぽい、ってところにこだわってるんですね。
一一さらには、山で配信とか驚くような試みもあり。
Washiyama:や、もう途中からやり尽くしてきて。「次どこでやる?」「山じゃね?」みたいな(笑)。まぁどこでもできるよなって思うんですよ。そもそも工場でやった時も、回線がなくてもインターネットは引けるし、発電機があれば電気も出せるってわかったし。自分たちの集大成じゃないけど、どんな環境でもできるっていうのをお披露目したかったところもありますね。
一一ライブハウスでやれなくて止まってしまったバンドが多いから、自分たちの強みは実感できたんじゃないですか?
Washiyama:……どうなんですかね? もちろん見せ方として、足を止めないっていう意味でやってたんですけど、本来は足を止めなきゃいけない時期だったんで。正直ストリーミングって無理してる感じもあるんですよね。やっぱりコストもかかるし、投げ銭って言っても黒字がほとんど出ないようなやり方だから。そういう意味ではあんまり健全じゃないんですよ。
一一すべてオールライトとは言えなかった。
Washiyama:うん。やっぱりお客さんいないと寂しいですし。キメが上手く決まった時に歓声が沸かないっていうの、そこはしんどかったです。みんな言いますけど、コメントを見る瞬間が一番虚しい、もどかしいんですよね。実際の声が聞きたいなぁって。
一一そういう一年の経験が、今回のシングルに入っていったんですか。
Washiyama:そうですね。まさに「もういい」って感じですよ(笑)。総括できるようなものが書けたら、って自分でも思ってて。声にするのは大事だなって書いてから思いましたね。
一一パンチありますよね。「会えないけど寄り添おう」みたいな曲は去年たくさん聴いたけど、怒り、という形でぶつけてきた曲は初めてかもしれない。
Washiyama:ほんとっすか? けっこうみんな思ってることだと思うんですけどね。まさにおっしゃる通り、寄り添うような曲はたくさん耳にするけど、なんでこういう怒りを誰も露にしないんだろうって。その感じとかも全部ひっくるめたら「もういい」ってワードになりました。
一一躊躇しませんでした?
Washiyama:躊躇はしませんでしたねぇ。
一一(笑)。なんで寄り添う曲が多いのかって、怒ったところでどうしようもできない現実があるからですよね。
Washiyama:はいはい。でも、怒ってる人がいたらみんな振り向くじゃないですか。怒ってない人の声には振り向かない。興味持たれてぇと思ったし、その感情表現に怒りってめちゃくちゃ合っていて。「やっちゃえ!」って感じでした。