Mega Shinnosuke、“切なくて無敵な個性”が爆発した『1Night Online Party』 遊び心満載の仕掛けも楽しめる一夜に
まるでZ世代の青春映画を凝縮して見せられたようだ。オンラインライブがとり得る可能性を詰め込んだ、Mega Shinnosukeならではの50分。正直、こんなパーティがあったら混ざりたいなどと思いつつ、実は巧妙に作り込まれた“架空のパーティ”だということが、Mega Shinnosukeのアーティストとしてのスタンスを速攻で理解させた。大きく3つのブロックに曲調と演出を振り分け、あえてジャンル感を明快にしたのは、そうすることで映像の質感も変化させられるからだろう。これがリアルライブなら、そこまで各曲のバックグランドにあるカルチャーやファッション性などを視覚的に伝えられないだろうから。思い切ったなぁと感じつつ、ライブが進んでいくにつれて、どうせなら表現媒体の特徴を生かし切って面白いものにしようという、彼やチームの思惑にまんまと乗ってしまった。
カウンターでステーキとワインを嗜もうとして、不意に時計に目をやり、大急ぎで階段を走り降りるというオープニングの演出からして、もうただのライブ配信じゃないことがわかる。WWW Xであろうフロアにはソーシャル・ディスタンスを保つためのマス目が貼られたままだ。そこは妙に“今”を感じる。メガシンを追い続けるカメラワークも、メンバーを捉えるカメラも数が多く、チルな曲調の「Japan」のテンポが速く感じられる。サポートメンバーを含む5人が向き合う陣形のフロアライブで、メガシンは自由にステップを踏む。シームレスに人気曲「桃源郷とタクシー」へ。すべての楽器をラインで録ってミックスしているのだろう、ボーカルも楽器の音もナイスバランスだ。それでいて、もうパーマネントなバンドなんじゃないかという息の合い方が見ていて楽しい。そして1曲だけかと思った歌詞の字幕はどうやら全てにつくようだ。加えて画面にエフェクト処理を施しており、グラフィカルな要素でも彼のちょっとジャンクでポップな趣向が伝わる。
雑踏のSEからフェードインした「Midnight Routine」は音源よりグッとギターバンドらしさが際立つ。ネオアコとシンセポップが混ざったようで、メガシンのジェンダーレスな柔らかい声質、Bメロの癖になる展開、少年ならではの無敵感も耳を引く。ガラッと変わってスモーキーなムードのキック&スネアから「blue men.」へ。ラップとメロディを縫い目なく乗りこなすスキルもあるが、やはりリリックのオリジナリティが冴え渡っている。〈灯を失う街に明かりを/ともすように人は笑うよ〉というラインは普遍的なものではあるけれど、この瞬間にも各々のモニターやスマホでこの歌を共有していると思うと、あくまでも街の主役は人だ、と思う。ライブハウスも映画館もカフェもクラブもそうだ。
曲の良さに感銘を受けてると、いきなりスタッフがメガシンの手を引き「ビンテージゲームをやろう!」と連れて行く。テニスのゲームが伏線になって、次の曲は「Sports」。ここからは90’sのインディーギターポップとandymoriが合体したかのような架空のボーイズライフが走り出す。オルガンが入ることで甘酸っぱさが増幅する「電車」、早口のボーカルとパワーコードで押しまくる「憂鬱なラブソング」では、途中で仕込みと分かっていてもちょっと驚く、ZZ Topばりの白人男性が乱入。なかなかその場を立ち去らない男性と、青春を爆裂させる怒涛の演奏と表情を見せるメンバーが交互に映し出され、ますます映画っぽさが際立つ。一体どこまで濃い演出を入れるつもりなのか......。