映画『ザ・プロム』は“ミュージカル=ダサい”の概念を打ち壊す作品に 楽曲がくれる明日を生きるパワー

『ザ・プロム』打ち壊す“ミュージカル=ダサい”概念

 もちろん、アカデミー主演女優賞を2回獲ったメリル・ストリープも負けてはいない。ディーディーが高校の体育館で生徒やPTAに披露する「Changing Lives」や、校長を陥落する時に歌う「The Lady's Improving」ではスターとしての貫禄をこれでもかと見せつける。今回、ダンスシーンが登場人物の中で1番多かったと語るメリルはダンスダブル(吹替え)を一切使わず、すべて自分で踊り切ったそう。ここで彼女の年齢に言及するのは避けるが、最高のほめ言葉=“化け物”と評さずにはいられない素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれた。

 本作の見せ場のひとつがクライマックスのプロムシーン。登場人物全員がそれぞれの想いを100%出し切って歌い踊る「It's Time to Dance」では、ミュージカル映画のおいしいとこどりともいえる華やかでポジティブ、キラッキラの世界がこれでもか! と展開。音楽の持つパワーと作品のメッセージとが化学反応を起こし、非常にエモーショナルな場面になっている。もう「ミュージカル=ダサい」なんて言わせない!

 そして舞台版の『ザ・プロム』は2021年、地球ゴージャスのプロデュースにより日本でも上演が決定。エマとアリッサのカップルを葵わかなと三吉彩花が演じ、ディーディー役は大黒摩季、草刈民代、保坂知寿の3人が日替わりで務める。日本版脚本・訳詞・演出を担い、バリー役として舞台にも立つ岸谷五朗は、ブロードウェイでの公演を見て、自らの演出で上演したいと熱望したそう。

 「ありのままの自分でいるためには声を上げることが必要」と、画面の向こうから私たちに訴えかけてくる本作。そのメッセージに加え、キャッチーでノリノリ、時に胸にきゅんと刺さるキラキラした楽曲にも明日を生きるパワーをもらえること間違いなしである。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■配信・公開情報
Netflix映画『ザ・プロム』
一部劇場にて公開中
Netflixにて独占配信中
監督:ライアン・マーフィー
出演:メリル・ストリープ、ニコール・キッドマン、ジェームズ・コーデン、キーガン=マイケル・キー、アンドリュー・ラネルズ、ケリー・ワシントン、アリアナ・デボース、ジョー・エレン・ペルマン

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