森内寛樹、往年ヒットソングのカバーで際立つ“甘さ” MY FIRST STORY Hiroとは異なるボーカル表現

 MY FIRST STORYのボーカルであるHiroこと森内寛樹は、昨今ソロ活動も精力的に行っている。2021年1月にはメジャーソロデビューアルバムとなる『SIng;est』をリリースすることが決定している。アルバムタイトルの『Sing;est』は歌手という意味の単語「Singer」に最上級の意味を持つ「est」を付けたものであり、森内寛樹の歌手としての凄まじさがそのまま表現されている。選曲も幅広い。YOASOBIの「夜に駆ける」やヨルシカ「ただ君に晴れ」のような近年のヒットソングから、椎名林檎「ギブス」や一青窈「ハナミズキ」のように、森内寛樹からすれば学生時代にリリースされた不朽の名曲まで網羅されている。ここで注目ポイントがある。このアルバムのラインナップをみてお気づきになった方もいるかもしれないが、このアルバムのほとんどの楽曲が女性の歌なのである。しかも、噂によるとこれらの楽曲を原曲キーで歌いこなしてしまっているのだとか。もともと森内寛樹はハイトーンなボーカルがウリのひとつであるが、女性キーをさらっと歌いこなしてしまう辺りにも、“Sing;est”である由縁を垣間見ることができる。

森内寛樹『Sing;est』
森内寛樹『Sing;est』

 話は少し変わるが、森内寛樹は当然ながらMY FIRST STORYのHiroとしての一面も持っている。『SIng;est』に収録している楽曲はいわゆるポップと分類される楽曲が多いが、MY FIRST STORYをポップと分類する人はあまりいないだろう。つまり、MY FIRST STORYと森内寛樹の作品はカラーとして大きく異なることが想定される。また、MY FIRST STORYはいわゆるメジャーレーベルには行かず、インディーズレーベルでキャリアを積んでいるバンドであり、今作をもっていきなりメジャーデビューを果たす森内寛樹のソロ活動とは、そういう点でも対比することができる。本人的な意識はともかく、見え方としてはMY FIRST STORYのHiroと森内寛樹では違いがあるように思うし、それはボーカル的な部分でも言えるように思うのだ。

 今年、MY FIRST STORYは約2年ぶりとなる『V』というアルバムをリリースした。エレクトロポップな楽曲やラウド色の強いヘビーなロックナンバーなど、多様な音楽ジャンルをアウトプットしているアルバムなのだが、作品全体の印象としてはMY FIRST STORYの特徴である“テクニカルなゴリゴリさ”が強く印象に残る。バンドとしてのアグレッシブさ、美しくも攻撃的なアンサンブルなど、MY FIRST STORYらしくリスナーを魅了する作品となっている。故、サウンド全体としては重たいものが多い。そうなると、ボーカルとしてはそのサウンドの中できっちり存在感を示す歌い方にする必要がある。バンドの音にボーカルが埋もれないようにする必要があるわけだ。そのための方法論は幾つかあるのだろうが、筆者の印象としては、MY FIRST STORY時のHiroのボーカルは意図的に「がなり」の要素を入れているように感じる。そのままミックスボイスを吐き出すのではなく、声を外に飛ばす前に意図的に声を震わせている感じがするのだ。それによりボーカルにエッジをかけて鋭さを持たせている。少しややこしい言い方をしてしまったが、簡単に言えば、ラウドロックにボーカルを寄せている、と捉えてもらえたらと思う。

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